第5話
まぁ、そんなこんなで時間は進み昼休みにやった。
「おーい、匠ー紫穏ー!昼食べよーぜ!」
「「おっけ、今行く!」」
隣のクラスから隼哉がやってきた。急がなくては…
俺が弁当を持って駆け寄ると、横をある女子生徒が通った。
いや、そりゃ学校なんだし、教室の入口だったから、女子生徒が通るのは自然なことである。
けど、その女子生徒には思わず目を奪われた。
なぜなら彼女が「桃咲 桜空」であったから。
彼女の事を一言で表すなら、クールビューティな学校のマドンナ。え?一言じゃないって?それは彼女が一言で表せないほどに美人だということだ。
切れ長なのにきつく感じない目。色素の薄い肌、髪、目。桜空(サラ)という名からも連想されるサラサラのロングヘア。桜色の唇。どこを見てもいつ見ても崩れることの無い顔立ち。
スタイルもよくスラッと伸びる足は白く長い。
男子から見ても女子から見ても理想としか言えない容姿をしていた。
それに加えて、学年トップの成績を誇り、運動神経抜群。本当にこんな完璧な人間がいるんだということを証明するかのような人だ。
とにかく俺が言いたいことは彼女が完璧だということ。
そんな彼女は隣のクラスのはず。誰かに用事でもあるのだろうか。
少し見とれて彼女を眺めていると、んん?幻覚だろうか。彼女は俺の机の前で止まった。
そして、机の中になにかの紙を入れた。
「え、あれ佐々野の机じゃね?」
「なんで佐々野なんだ?」
俺が聞きてぇよ!とクラスメイトにつっこむ。
「紫穏!行こうぜ!」
どうやら、匠と隼哉はもう進んでいたらしく、桃咲さんには気づいてないようだ。
いつも通り裏庭で2人と食事を済ませると、匠は部活の呼び出しがあったらしく慌ててそっちに向かった。
匠は運動できるタイプのオタクでバスケ部のエースだ。1度試合を見た事があるが、素人の俺でもわかるくらい上手かった。
隼哉も次の授業の予習が終わってないらしく、今日はここで解散となった。
俺はふと桃咲さんのことを思い出し、1人で教室に戻ることが少し怖かった。
いや、でも1人で裏庭にいるのもあれなので、教室に戻ることにした。
案の定俺の机は男子に囲まれていた。
いや、怖ぇよ。俺ミンチにでもあうのかな?とか考えていると…
「おい、佐々野ぉ。さっさと紙出せやぁ」
と、うちのクラスのイキリ陽キャ中野 智が煽ってきた。いや、怖ぇよ。普通に。
俺が震えながら紙を取り出すと、丁寧に封筒に入っていた。しかも、丁寧な字で「佐々野くんへ」と書かれている。
恐る恐る封筒を開けると、これまた丁寧な字で「あなたに伝えたいことがあります。放課後裏庭に来てください。」と書いてあった。
…なんだこのラブレターというか、告白の呼び出しみたいな手紙は。
だが、ひとつ言いきれることがある。それは桃咲さんから告白されることは絶対にないということ。
なぜなら、俺は彼女に認知されているかもわからなかったのだ。それくらい交流がない。
それに、俺は自分で言うのも悲しいが、モテそうな要素がひとつもない。
たまに周りからは「顔は悪くない」と言われるが、お世辞だと分かっているし、第1こんなガチオタ好きになるやつなんかそうそういない。
それに、桃咲さんがとんだ物好きだとしても、勘違いとかだろう。
だから、これがラブレターという期待はなくむしろ…
「一体俺は何されるんだ…」
という恐怖心みたいなのがあった。
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