筋肉女子と氷
「ふん! ふう……」
わたしは近所の公園で、腕立て伏せに興じていた。
しかし、暑すぎる。
四〇度を超えているではないか。
噴水に入って、子どもたちがはしゃぐくらいだ。
「マユ、オーバーワーク気味じゃない?」
「いや、これくらいしないとシノのボディに勝てそうになくて」
ぜえぜえと、わたしは息を整えようとした。
だが、熱を帯びたい気がノドに入り込む。
「ゲホゲホ!」
「でもさ、身体を壊したら元も子もないよ」
シノの言うとおりだ。
汗がダラダラ。ウェアに張り付いて気持ち悪い。
「ノドが乾いてから水分補給しても、遅いっていうからさ。ほれ」
「ひゃん!」
氷というか、凍ったジュースをシノが押し付けてきた。
「マユ、そんなんでも反応するんだ。ちょん」
「あひゃああん!」
脇の下に凍ったペットボトルを当てられて、わたしは変な声が出てしまう。
「でもさ、マジで氷は当てておいたほうがいいって。日陰に行こ」
わたしはシノに連れられて、木陰へと向かった。
「えっとね、血管が通っているところを冷やすといいって。首筋と」
シノがわたしの首に、凍ったジュースを当てる。
「あひんっ」
「脇の下と」
凍った麦茶を、わたしの脇に挟む。
「んっ」
「次に、内ももと」
「くううっ」
内ももに、凍ったスポドリがあてがわれる。
噴水に入っていた男の子が、ずっとわたしのことを見ていた。
お母さんらしき人に手を引かれても、しゃがんだ状態のまま出てこなくなる。
興奮させてしまったか? 筋肉女子に変な性癖を持ってしまったかもしれない。
「どう? いいカンジになってきたんじゃない?」
「だいぶ、身体が冷えてきた」
「あとはこれ」
シノが、わたしにポテチを差し出す。
「えっ、ダイエット中なのに!」
「熱中症になったほうが、症状が重いよ。はい」
よく冷えたスポドリと、ポテチを交互に食べる。
しばらくすると、本当に体調がよくなってきた。
ガチで、熱中症一歩手前だったようだ。
「スポドリで栄養を、ポテチで塩分を補給すれば、熱中症対策になると思うよ」
「ありがと。でも罪悪感が」
「屋内でも痩せられるじゃん」
その後は帰宅して、家でストレッチ動画を見ながらトレーニングをした。
エセマッチョのわたしには、こっちの方が性に合っているかも。
「まだポテチ余ってるね。食べる?」
シノが袋を差し出してくるが、受け取らない。
「いらないっ。そうやってまた太らせて、またトレーニング中にちょっかいをかけられたらたまらん」
「いつも食べてるのは、マユの方だけどね」
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