第5話 なぜか彼女と、ブレックファースト
「おはよう……」
僕は寝室から出て、リビングに。
「おはよう! お兄ちゃん!」
妹の元気な声が聞こえる。
「おはよう! 田中君!!」
再び聞こえる元気な声。
「……ん?」
聞き慣れない声。
寝ぼけ眼をこすりながら、テーブルを見ると……。
「不破さん!?!?」
一気に目が覚める。
「ど、どうしてここに!?」
「新聞取りに行ったら、玄関で待ってるのを見かけてね」
ま、待ってたの!?
「せっかく来てくれたのに、立ちっぱなしで待たせるのも申し訳ないと思って、入れてあげたのよ」
「そ、そうなんだ……」
まあ、立ちっぱなしが疲れるから中に入れてあげるのはわかるんだけどさ。
「どうして待っててくれたの?」
「私、田中君と一緒に登校したかったの!」
やっぱりこの子は、不破さんは僕のことが好きみたいだ。
誘ってくれる友達がいるのは、嬉しいけど……。
「あの、不破さん……」
僕は、素直な思いを伝えようとする。
「僕……」
チーン!
トースターが鳴る。
「さ、二人とも早く朝ごはん食べなさい!」
お母さんは、二人分の食パンを並べる。
「あれ、愛菜は?」
「私はさっき食べたー」
そうなんだ。
僕の妹は、僕よりしっかりしてる。
「不破さんは?」
「田中君を待ってたよ!」
「あぁ……ありがとう」
なにもかも僕思いな彼女の笑顔が、刺さる。
「美味しいね!」
「……うん」
――――――――――――――――――――
「どうしたの、田中君?」
通学路。
朝の爽やかな空気が漂う。
しかし、僕の気持ちはモヤモヤしている。
「僕、不破さんの思いに答えられるかわからないよ」
さっき言い損ねたことを、今度こそ。
「え?」
「不破さんは僕のことを思ってくれるけど、僕は……まだ……」
「……」
「ごめん!!」
この空気に耐えきれず、走り出す。
後ろから呼び止める声がしたが、そのまま駆け抜けた。
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