第2話 開幕包帯、二人はインジャラー

「今年の新入生は、元気がいいのね〜」


「いてて……」


 ここは保健室。

 なぜそんな場所にって?

 ケガをしたからだ!!!


――――――――――――――――――――


「うわーーー!!!」


 無我夢中で彼女に突っ込んだ僕。

 なぜって?

 さすがに目の前で人が傷つくのは見たくない。

 止めなきゃと思ったから。


「きゃっ!」


 彼女に触れたと思うや、悲鳴が聞こえる。

 そして、地面に強く叩きつけられた。


「うぅ……」


 僕の視界は真っ赤に染まっている。

 その鮮やかな色はまさしく。


「私の勝負パンツだよ」


 そう、血だ。

 誰の身体にも流れているそれ。


「この日のために、買ったんだよぉ……」


 この日のために……。


「パンツ!?」


 やっと僕の脳みそが追いついた。

 今、パンツって言わなかったか!?


「あっ……!」


 顔を上げる。

 そこには、頬を紅く染めた彼女がいた。

 それはまるで桃のような淡いピンクで、どこか艶やか。


「じゃなくて!!!」


 どうしてこうなった!

 普通スカートの中に頭を突っ込むなんてことあるか!?

 ラブコメじゃあるまいし!


「ラブコメだよ」


「え?」


「これは私とあなたのラ・ブ・コ・メ!」


 グイグイ顔を寄せてくる。


「さあ、私と一緒に……痛い!」


 一瞬顔を歪めた。


「大丈夫?」


「うん、これくらいなんてことない!」

「私達の愛の前では!」


「……」


 いろいろ突っ込みどころはあるが。


「保健室……行こう?」


 僕も少しケガしたし。


――――――――――――――――――――


「私はいいです!」


 僕の治療が終わると、彼女は宣言した。


「そんなこと言わないの」

「ケガしてるじゃない」


 すり傷だけど、そのままなのは……。


「ちゃんと手当てした方がいいよ?」


「……田中君がそういうなら」


 僕の説得のおかげ……かはわからはいが、彼女はやっと手を差し出した。

 保健室の先生は、消毒をしながら話しだす。


「あなた達、カップルなの?」


「え!?」


 いきなりそんなことを聞かれて、びっくりする。


「な、なんでそう思うんですか!?」


「二人仲良くケガするなんて、運命に結ばれた恋人みたいじゃない」


「運命……!」


 彼女の真紅の瞳がきらめいた。

 思えば、ここにも赤色が。


「といっても、二人共まだ新入生なのよね?」


「はい!」


「はい……」


「これからに期待ね」


 これから……。

 これからといえば。

 告白の返事。

 どうしよう。


「田中君!」


「うわ、な、なに!?」


 そんなに大声で呼ばないで。

 隣りにいるんだから。


「一緒に帰らない?」


 一緒に……。


「まあ、それくらいなら」


 いいんじゃないかな。


「わーーーい!!」

「さ、早く行こう!!」


「わっ、ちょっと……!」


 僕は右手を掴まれ、引きずられていく。

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