僕の彼女は、異世界トラベラー

砂漠の使徒

第1話 突然告白、なかなかチャレンジャー

「田中君!」

「私、異世界行くね!」


 満面の笑みで、彼女はそう告げる。


「ちょ、ちょ、ちょ!!!」

「待て待て待て待て!!」


 そんなことされたら、どえらいことになる!!


「えい!!」


「うわーーー!!!」


――――――――――――――――――――


 時は遡って、五分前。

 僕は、彼女に話しかけられたんだ。


「田中君!」


 正直彼女が誰かはわからなかった。

 てか、さっき入学式が終わったばかりだ。

 わかるわけない。


「私、あなたのことが好きなの!!」


「……は?」


 高校デビュー初日で、青春のクライマックスを迎えてしまった。


「ねぇ、ダメ?」


「えっと……その……」


 こういうのって、まず友達からとか……。


「ねぇ、なんで答えてくれないの!」


「いや、今考えてる……」


 突然のことに、頭が回らない。

 えーと、仮に付き合うとしてだ。

 顔は……いいんじゃないか?

 かわいい。

 性格は……知らないな。

 初対面だし。

 あー、少し強引かな?

 この告白の仕方を見るに。

 でも、まあ、許容範囲。

 てことは、とりあえず……。


「いい……かな?」


「ホント!?」


「いや、待って……!」


 こんなに簡単に決めていいの!?


「ねぇ、明日でいい?」


 即決は無理だ……。

 家に帰って、ご飯食べて、風呂入って、ポテチ食べながら考えたい。


「……」


 すると、女の子は口を閉じた。

 目のキラキラも消え失せる。

 そして、カバンに片手を突っ込んでゴソゴソ。


「な、なにしてるの……?」


「田中君!」

「私、異世界行くね!」


 彼女がカバンから出した右手に持っていたのは、カッターナイフだ。

 その刃をカチカチカチー……。


 って、まさか!!!


「ちょ、ちょ、ちょ!!!」

「待て待て待て待て!!」


 早まるな!!!

 これがメンヘラってやつか!?

 ふられたショックでってやつ!?

 まだふってはないけど!!!


「えい!!」


 彼女は躊躇なくそれを、左手に突き刺そうと振り下ろす。


「うわーーー!!!」


 僕はヤケクソで……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る