エピローグ
第154話 お姉ちゃんは、義姉で先生で彼女で嫁で超デレデレ!
明石家のリビングが、女子バレー日本代表の試合で盛り上がっている。テレビの画面では、決勝の日本対アメリカの試合が遂にマッチポイントを迎えていた。
中継の実況アナが声を枯らしながら、白熱する試合を伝えている。代表メンバーのエースは松風美雪。悠に片想い中の先輩だ。
『フルセットの最終ラウンド、どちらも一歩も引かずジュースにもつれ込んでおります。日本、6対14から驚異の追い上げ。14対14です。ああっ、松風選手が決めた! 日本、遂にマッチポイントです!』
食い入るように見ている悠が、声を上げた。
「松風先輩凄い! あと1点だ!」
テレビに映った美雪が、強靭な足腰から繰り出される強烈なジャンプをする。そのまま右腕を大きく振りかぶった。
『バシッ! ズドンッ!』
『うおおっ、決まった! 松風美雪の弾丸スパイク! 日本優勝です。48年ぶり、日本に五輪金メダルをもたらしました!』
「「「おおおーっ!」」」
リビングにいる全員が歓声を上げた。
「松風先輩……本当に金メダルを取っちゃった」
「あの子、やっぱり凄いのね。学園に在籍中から、只者じゃないと思っていたけど……」
悠と百合華が並んでソファーに座り、仲良く一緒にテレビを観ていた。ただ、前と少し違うのは、二人の間に小さな女の子がいることだ。
「きんめぇだるぅ~」
女の子が手足をバタバタさせて声を出した。
「おっ、
「ふふっ、可愛いわね」
悠と百合華の子だ。
結婚式の後、二人は新婚旅行でハワイに行った。両親と同じハネムーンだ。帰国してすぐ百合華の妊娠が判明する。挙式前からエチエチしまくっていたのだから当然だろう。
せっかくアパートで二人暮らしを始めたばかりなのに、出産や育児で何かと便利だからと実家に戻ってしまったのだ。まだ悠が学生なのだから、もう少しくらいは良いだろう。
何故か隣室の美月が悲しんで、『何を楽しみに生活すれば』と変なことを言っていた。あれほど安眠妨害とご立腹だったのに、無ければ無いで寂しいらしい。
再び苦労が多くなった父の幹也だが、孫が生まれた途端に態度は一変し、『いつまでも居て良いぞ』などと言い出す始末。娘のイチャイチャを見せられるより、孫の顔を見る方が勝ったようだ。
「ほぉら、お爺ちゃんだぞぉ~」
幹也が緩んだ顔で紫に話しかける。お爺ちゃんと呼ぶには若い気もするが、既にお爺ちゃん気分で孫にデレデレだ。
まあ、祖父母とは、だいたい孫に甘いものだが。
テレビでは試合後のエースのインタビューが始まった。
『松風選手、優勝おめでとうございます』
『ありがとうございます』
『金メダルを取った感想を一言お願いします』
試合後の汗で輝く美雪が、まさにアニメの女戦士の如く堂々している。
『選手、スタッフ、一丸となって皆で勝ち取ったメダルです。そして、応援してくれた国民の皆様、みんなの声援が力になって優勝することができました』
『この勝利を一番最初に、誰に伝えたいですか?』
『ボクは……悠君に伝えたい! 宣言通り金メダルを取ったぞ!』
突然、美雪が悠の名前を出す。
何だか放送事故っぽい展開だ。
「ちょ、待て! なんで俺の名が……」
「ユウ君……どういうこと?」
明石家のリビングに緊張が走った。
テレビでは、明石家の修羅場など知りもしないリポーターが美雪にインタビューを続けている。
『悠君とは?』
『ボクの片想いの人です。その人は一昨年に結婚をしてしまいました。だが、ボクはくじけない! 失恋をバネにトレーニングし、何倍も成長し勝利を掴んだんだ。悠君、ボクはやったぞ! 今でも大好きだ! がははっ!』
美雪の熱烈な愛の告白を全世界に生中継したところで、横に居る百合華の威圧感が急上昇する。
「ユウ君、もう分かってると思うけど、オシオキタイムだよっ!」
「ふっ、覚悟はできてるぜ。伊達に十年以上エロ姉のオシオキを受け続けた訳じゃねーぜ。来るなら来てみろ!」
「じゃ、今ここでしよっ!」
「は?」
信じられないセリフが聞こえて悠が耳を疑う。
「ちょ待て、この家族団らんのリビングには親がいるんだぞ」
「ほらぁ、お父さんは紫に夢中で気付いてないよ」
百合華の言葉で幹也の方を向くと、いつの間にか孫を高い高いして遊んでいる。
「ほぉら、紫は可愛いな~高い高い~」
「ねっ、こっそり合体しちゃえば気付かれないって」
「えっと…………」
悠が母親の絵美子の方を向くと、急に立ち上がって何かを始めようとする。
「あっ、そうだわ。お掃除しようと思ってたのよ」
最初こそ息子と義娘の激しく変態的なエロスを見せつけられ、
「いやいやいや、ダメに決まってるでしょ! 紫がいるのに。娘に変な性癖が付いたらどうするの? お姉ちゃんみたいなド変態女子になっちゃうよ!」
「ええぇ~っ、ケチぃ」
百合華が
元から超絶美人の百合華だが、出産してもその美しさは微塵も失われず、それどころか更に妖艶さが加わっていた。
相変わらず超美形の顔と完璧なプロポーション、一ミリも崩れる気配もない重力に逆らうように突き出た巨乳と、くびれたウエストからプリッと上がった尻。完璧なラインを描く美脚も健在だ。
一目で虜にされそうな魅惑的な雰囲気に、人妻属性の妖艶な色気も追加され、ますます攻撃力を上げてしまった。
こんな最強の嫁に『しよっ』などと言われたら、絶対に我慢などできるはずがないだろう。
「じいじぃ~」
「ほら、紫、ジイジと一緒に遊ぼうなぁ」
二人の雰囲気を察したのか、幹也が紫を連れてリビングを出て行く。孫娘を百合華のようなドスケベ娘にするわけにはいかないと思っているのだろう。何かと気苦労が多い幹也なのだ。
「ほら、二人っきりになったよ」
「これが
百合華が艶っぽい表情をする。完全にスイッチが入ってしまったようだ。もう止まれないオシオキタイムの始まりだ。
「ほらほらぁ、次は男の子が欲しいから頼んだぞっ」
「ううっ、頑張ります……」
「昔から一姫二太郎って言うでしょ。子供も姉弟が一番なんだよ」
※
「ふふっ、ユウ君は変わらないね」
「お姉ちゃん?」
「それそれ、結婚して子供もできたのに、またお姉ちゃんって言ってくれるし」
外では『百合華ちゃん』と呼んでいるが、家の中ではいまだに『お姉ちゃん』なのだ。好き好き大好きお姉ちゃんなのだから仕方がない。
「ユウ君と結婚できて良かった」
「俺も、お姉ちゃんと結婚できて良かったよ」
「まあ、反対されても駆け落ちしてたけどね」
「えええ……」
この最強の姉なら、本当にやりそうだと思った。
「お姉ちゃんって、見た目は可愛いのに、性格はけっこう豪快だよね」
「もぉ、性格も可愛いでしょ?」
「へっ?」
「あああぁ~っ! 今、素で驚いたでしょ?」
性格は、たまに悪魔嫁だ。
むしろ、天使だったり悪魔だったりで、アメとムチで躾けられ、ドロドロに溺愛してしまっているのだが。
「と、とにかく、ユウ君を放っておくと、他の女に連れ去られそうで心配なのっ。私がガッチリと捕まえておかないとねっ!」
テレビで放送した美雪のインタビューが、百合華のヤキモチに火をつけてしまったようだ。とにかくのこデレデレ嫁ときたら、独占欲が強くて嫉妬深くてたまらない。
もう、悠が女性と話しているだけで、プリプリとプク顔になって怒り出すくらいだ。ご近所さんにも、『仲が良いですね。ぷーくすくす』などと少し吹き出しながら言われてしまう。
「ほら、抱っこしてあげるから。機嫌直して」
むにっ!
百合華のプリプリした尻を掴んで膝の上に乗せる。
「あんっ♡ お尻掴んじゃダメぇ」
「あれ? お尻が大きくなったような気がする?」
「おおお、大きくないからっ!」
悠が百合華のムッチリとした尻を撫でまわす。
「そうかな? 心なしかムチムチしているような?」
「ふ、太ってないからっ! もおおおっ! お尻フェチのユウ君には、お尻でオシオキ!」
立ち上がった百合華が、悠の顔を掴んで自分の尻に近付ける。
「やめろぉ~ケツが近い!」
「ほらほらぁ、踏んじゃうよぉ~」
結婚しても変態カップルだ。こんな変なプレイは、とても親には見せられない。
「むぎゅぅぅぅぅ~っ……」
美しくスベスベでムチッとした百合華の尻に敷かれて悠は気付く。嫁の尻は少しも太っていなかった。今も昔も世界最高に美しく完璧な尻なのだ。
お尻は色々な事を教えてくれる――――
「どう? 反省した?」
「反省してま~す」
「全然反省してないんだからぁ。でも、そうやって、いつもいっぱいオシオキされようとするんだよね。ユウ君って」
バレバレだ。
「もぉ、ふふっ……あははっ」
「はははっ」
踏んでいる腰を上げて、再び抱き合ってギュッと抱きしめ合う。
「このままプロレスごっこしちゃおっか?」
「ううっ、親が近くにいるのに……」
「ふふっ、いっぱい、ユウ君の恥ずかしい声聞かせちゃおっかなぁ~」
「やっぱり、俺の嫁が変態過ぎる!」
いつものようにイチャイチャを始める二人。もう普通の日常風景のようだ。これが二人の普通なのかもしれない。
こうして二人のラブラブな日常は過ぎて行く。
――――――――
あの日、あの時、まるで奇跡のような運命の出会いを果たした二人。それは、義理の姉弟になった二人の物語。
人は、世の中には信じられるものも無く、変わらない想いなど無いと言うだろう。誰もが先を急ぐ無情な世界。生存競争を勝ち抜く為に、悲しみや涙は見過ごされてしまう。
だけど信じたい。
寂しさを越え幸せを掴んだ二人を。
例え世界に信じられるものがなかったとしても。例え世界に変わらぬものがなかったとしても。この二人の愛だけは、永遠に変わらないと。
――――――――――――――――
ここまで読んでくださり、心から感謝申し上げます。
私が姉キャラを大好きということで、義理のお姉ちゃんとラブラブになる物語を書きたいと思い始めた物語です。
多くの方から応援をいただき、本当に嬉しく感謝でいっぱいです。ありがとうございました。
まだまだイチャイチャでラブラブな話を書きたい気もしますが、悠と百合華の物語はここで完結となります。
きっと、この先も仲良くラブラブでいてくれるはずです。
まだ未熟なので至らぬ点もあったかと思いますが、ここまで読んでくれた皆様にお礼申し上げます。
また次回作でお会いしましょう。
みなもと十華
最後に、もし面白かったとか楽しかったとか思ってもらえたら、ブクマや評価をして頂けると大変嬉しいです。☆☆☆のところを押すと評価が入ります。三個でも一個でも喜びます。
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