第152話 時を経ても変わらない想い
パシャ! パシャ!
スタジオ内にシャッター音が響く。
ウエディングドレス姿の百合華と慣れないタキシード姿の悠がポーズを決める。前撮りで写真撮影に来ていた。
「うおぉおっ! 百合華、何て美しいんだ」
「百合華、とっても綺麗よ」
幹也と絵美子の歓声が上がる。
当初は洋装のみの予定だったのだが、当日になって
まるでコスプレ撮影会のようだ。
続いて煌びやかなプリンセスドレスを着た百合華が登場する。この世のものとは思えないような美しさで、その場にいる全員が息をのむ。もはや
「百合華は何を着ても似合うなぁ」
「そうね、本当に綺麗」
本人よりも両親が盛り上がっている。
「解せぬ……どうしてこうなった?」
公爵子息に転生したのかと勘違いされそうな衣装を着た悠が呟く。
実は、写真撮影をすると親に伝えたところ、一生の記念になるからと大盛り上がりになった両親が付いて来てしまった。そして、次から次へとオプションを追加をしてしまい、現在の状況なのである。
もちろん予算も大幅アップになってしまうのだが、支払いは全て両親が出すからと、衣装もロケーションも増やしてしまったというわけだ。
「両親が百合華ちゃんばかり褒めて、俺には何のコメントも無しかよ……」
「ふふっ、ユウ君の貴族みたいな姿も可愛いよ」
若干ほったらかし気味になっている悠の呟きに、百合華が両親の代わりに褒めてくれた。あまりの美しさで神聖リリウム王国が革命されてしまいそうだが。
もう、パンがなければケーキを――のフレーズで、『箸がなければ口移しで食べれば良いじゃない』とか言い出しそうだ。
「ふぅ、褒めてくれるのは百合華ちゃんだけだぜ」
とかく結婚式といえば新婦がメインになるものなので仕方がない。まあ、お金を出してもらえたのだから良しとすべきだろう。
「ユウ君、姉弟で結婚するメリットだよね」
「えっ、何が?」
「ほらぁ、姉弟だと結納金も結納返しも要らないでしょ。その辺のお金が一切かからないから、親も色々出してくれてるんだと思うよ」
「な、なるほど……」
近年は簡略化されてきたとはいえ、結婚には色々とお金がかかるものである。その点、姉弟で結婚すれば金銭面でも利点が多いのだ。まさに、お姉ちゃん最高。お姉ちゃん万歳。
「はい、こっち向いてください」
パシャ! パシャ!
カメラマンがシャッターを切る。
本当のお姫様のように美しい百合華に見惚れてしまう。こんなに可愛い人をお嫁さんにできたのだと、幸せを実感する悠だった。
「ううっ、ドレス姿の百合華ちゃんが、めっちゃ可愛い……」
「もぉ、ユウ君ってば褒め過ぎだよぉ」
見つめ合う二人の顔が近付いて行く。
「んっ……ちゅっ」
そのままキスをしてしまう。
パシャ! パシャ! パシャ!
カメラマンが一心不乱にシャッターを切っている。
その場にいる誰もが百合華の魅力とフェロモンで
――――――――
そして、結婚式前日となった二人は、何故か裸の百合華にマッサージをしていた。
「お姉ちゃん……これって?」
「ユウ君、ブライダルエステだよ」
ブライダルエステ!
世の女性たちは、結婚式前にエステに通い肌を整えたりダイエットしたりと、式当日に備える人が多いようである。
だが、見た目だけは完璧美人の百合華にエステが必要かと言われれば、全く微塵もこれっぽっちも必要ないだろう。
そう、ただ単にイチャイチャしたいだけである。
「ほらぁ、カラダの隅々までオイルマッサージで綺麗にするのっ!」
すっぽんぽんでマットの上に寝転ぶ百合華が、少し潤んだ熱い瞳を向けて言う。
「そ、そうだよね。式当日は最高に綺麗なお姉ちゃんでいて欲しいから、頑張ってマッサージするよ」
何の疑問ももたず、悠がその気になる。
百合華は、悠の無意識にエッチな手つきのマッサージを期待してドッキドキだ。
ぐへへぇ~
ユウ君ってば、相変わらず素直だよね。
そういうところは子供の頃から変わらないんだからぁ。
私の夫なのに、毎回初めて感じたイケナイコトみたいに興奮しちゃう。
早くぅ~
もうカラダがウズウズしちゃって待ちきれないよぉ。
悠はといえば、裸で寝転ぶ嫁が魅惑的過ぎて、やっぱりドッキドキだ。
くぅぅ~っ……
お姉ちゃんがエロ過ぎるよ……
真面目にマッサージしなきゃなのに。
こればかりは何年経っても慣れないぜ。
俺の嫁なのに、毎回初めて見るエッチ画像より何倍も興奮してしまう。
ダメだぁ~
もう色々とウズウズしちゃって我慢できないぜ。
やっぱり、似た者姉弟で似た者夫婦だった。考えていることもそっくりだ。
ぴとっ――
白くきめ細やかな百合華の玉の肌にオイルを垂らし手を添える。まるで吸い付くような滑らかな感触だ。
「んあっ……」
ビクッ!
手で触れた瞬間、百合華のカラダが震え微かに声が漏れた。
「だ、大丈夫?」
「んっ、うん」
ぬりぬり――くちゅくちゅ――
オイルを全身に伸ばすようにマッサージをする。
「ああ……んんっ……」
悠の手が隅々まで滑り込み、百合華は至福の心地良さの中にいた。
あああ……
やっぱりユウ君のマッサージ良いなぁ……
昔はアウトになっちゃうからって、こっそり声を我慢して感じてたけど……
今は結婚してるからセーフだよね。
※セーフです。
「ああああぁん♡」
「ちょっと、お姉ちゃん。声は我慢してよ」
セーフだが、今でも声は我慢させられるのは同じだった。ご近所迷惑だから仕方がない。
その迷惑を被っている美月だが、実は隣室で聞き耳を立てていた。
悠たちの部屋は二階角部屋になっており、隣は美月だけなのだ。しかも床には防音素材が使われているようで、騒音被害を受けるのは必然的に美月だけになる。
最初こそハレンチ極まりない
気を使って我慢している百合華の声が、余計に
「はああ……っ、良いなぁ、毎日ラブラブで……てか、うち何やってんだろ……自己嫌悪」
壁から離れた美月が落ち込んだ。
元々、奔放な性格で恋多き乙女だったのだが、学内で
欲求不満が溜まっているところに、こんなラブラブカプルがお隣さんではたまらないだろう。
「はあああっ! もうなんなん」
今日も今日とて、周囲をエッチな気分にしてしまう二人だった。
再びラブラブな二人といえば――
「ふふっ、懐かしいね。ユウ君と出会ったばかりの頃も、こうしてマッサージしてもらったよね」
「ちょっ、こんなエッチなのじゃないよ。服着てたでしょ」
「ええぇ、ユウ君ってば、興奮して真っ赤な顔してあそこも……」
「わーわーわー!」
百合華が余計なことを喋りそうになり、悠が必死に止める。それは禁句だ。
「ふふっ、初めて会った時だって、私のおっぱい見てたでしょ?」
「うっわぁ、勘弁してぇ……」
初めて百合華に会った時、悠は一瞬で心を奪われた。
夢に思い描いていたような理想のお姉ちゃん。確かに超可愛い顔も、丸く突き出た巨乳も惹かれたが、その太陽のような笑顔と、優しく癒される包容力と、ちょっとイタズラな性格も、何より大好きなのだ。
一目見たその時から、悠は一生を懸けて百合華を守る騎士になろうと、幼いながら心に決めたのだから。
「ほらほらぁ、今なら見放題だよぉ~」
百合華が仰向けになって胸を突き出す。そういうところは昔から何も変わっていない。
「うっ、凄い魅力的だ……見ているだけで目が
「そういえば昔……ユウ君って、私の水着姿を見て気絶しちゃったっけ……」
お風呂で洗いっ子した時だ。
初めて悠が『大好き』と告白したあの夜。告白した昂りと、百合華の水着姿の際どさと、抱きつかれた興奮とで倒れてしまった。
「そ、そうだよ……お姉ちゃんが魅力的過ぎるから。大好きなんだ。お姉ちゃんしか見てないんだよ。お姉ちゃん以外なんて考えられないから。お姉ちゃんが大好きだから! 大好きだよ!」
「あふぁあぁぁ♡♡♡」
大好きの一言で百合華が陥落した。
百合華は、悠に『大好き』と言われるのが何より好きだった。大好きの一言で全てを許してしまいそうになる。カラダの奥底から泉の如く幸せ
キュン♡ キュン♡ キュン♡
「あ、あああ……ゆ、ユウ……くん」
もみもみもみもみもみもみ――
真っ赤になった悠が、恥ずかしさを誤魔化すように一生懸命マッサージをする。
ズキュン♡ ズキュン♡ ズキュン♡
「はあわわわわぁ~っ! もう許してぇ、だめぇぇ~っ、おかしくなっちゃうから♡ 私もユウ君が大好き! 他の人なんて考えられない! ユウ君だけなの! もう絶対に離れないから! 大好き! ユウ君! 大好きなのぉ~っ!」
マッサージ用のアロマオイルが付いているのも気にせず抱き合う二人。完全にテンションマックス状態だ。結婚式前日だというのに、激しいプロレスごっこに突入してしまいそうな雰囲気である。
もはや誰も止められない。
また美月から苦情が入ってしまいそうだが、結婚式前夜という事で大目に見て欲しいところだ。
そして、お隣の美月だが――――
熱烈な告白の一部始終を聞いてしまい、悶々としたカラダを抱えたままふて寝した。
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