第138話 甘くとろけるエブリデイ

 クルマが家に着く頃には、辺りは真っ暗になってしまった。海の見えるホテルでエチエチな時間を過ごし、更に百合華が延長までした為に帰宅が遅くなってしまったのだ。


 ブロロロロッ――

 バタン、バタン!

 クルマを降りて家に入る。


「はうぅ~ん、ユウ君、抱っこぉ~」

 玄関に入るなり百合華が、ぐでっとして甘えまくる。


「姉ちゃん、延長なんかするから……」

「だってぇ、すっごく良かったんだもん」


 ホテルで熱く目眩めくるめ背徳インモラルなご休憩したところ、百合華の感情が昂り過ぎておかしなテンションになってしまう。海で永遠を誓う告白を受けて、いつもより更にきゅんきゅんしまくったからだろう。


 当然のように暴走姉になり、何度も求めて時間延長になった運びだ。


「ううっ、お姉ちゃん激し過ぎ……このまま結婚して大丈夫なのだろうか?」

 やっぱり将来が心配になってしまう。


「もう血の盟約に従い婚約は結ばれました。婚約破棄はできませぇ~ん」

 百合華まで中二病っぽくなってしまった。カップルは似てくるのかもしれない。


「お姉ちゃんがオタクっぽくなって嬉しいような恥ずかしいような……それって、俺の漫画をこっそり読んでるからだよね?」


 そう、百合華は度々悠の部屋に忍び込んで、エッチな漫画を読み漁っているのだ。


「ユウ君のコレクションは良いよね。エッチなの多くて」


 実は悠のコレクションは姉萌え系が多くて、百合華の好みにバッチリ合っていた。姉と弟が恋に落ちてラブラブエッチという展開は大好物だ。


「あああ、俺の性癖がバレバレに……」

「ユウ君、もうバレちゃってるんだよ。ユウ君の好きなオシオキとか、フェチとか」


 百合華の目が妖しく光る。

 先刻も、実際にお尻で踏まれたり脚で挟まれたりしていた。ただ、百合華の弱点がお尻なので諸刃の剣なのだが。


「ほらほら、ちゃんと歩いて」

「やだぁ、抱っこぉ~」


 百合華の胸が、むぎゅぅ~っと押し付けられる。あれだけラブラブな時間を過ごしたのに、またドキドキしてきてしまう。百合華とのエチエチには賢者タイムが存在しないのか、際限なく求め合ってしまいそうで怖いところだ。


 とりあえずソファーに寝かせて服を脱がせる。姉の服やタイツを脱がせるのは悠の役割だ。いつも仕事帰りの姉にご奉仕させられていたら、いつの間にか脱がせるのが日課になっていた。


「ほら、お風呂行くよ」

「はーい、ユウ君洗ってぇ」

「世話が焼けるお姉ちゃんだな」


 文句を言いながらも嬉しそうな悠。姉のスベスベの肌に触れられるだけでもご褒美だった。綺麗な髪を洗ったり、エチエチなカラダを洗ったりなど、全身全霊でやりたいくらいだ。


 ――――――――




 今日一日が終わりベッドに入る。もちろん二人一緒に。


 添い寝の回数は以前より格段に多くなっていた。結婚していないのに、新婚さんそのものだ。いや、付き合う以前から新婚さんのようなので、ずっと新婚気分が続いているのかもしれない。


「ほら、お姉ちゃん」

 悠が腕を伸ばして、百合華を抱き寄せる。


「えへへっ、幸せ……」

 百合華が悠の腕枕でカラダを密着させた。


「今日はもうプロレスごっこ自主規制無しだからね」

「えええぇ~っ!」

 百合華がイタズラっぽい笑顔で声を上げた。


「あんなにやったのに……」

「だってぇ、一日十回だよっ」

「あれ冗談じゃなかったの?」

「もちろん本気だよぉ」


 ええええ……

 本気で一日十回だったのか?

 お寝ちゃん、凄い精力だぜ……


「やり過ぎ禁止!」

「ええぇ~っ、ユウ君とずっと繋がっていたいのに」

「体が持たないって……」

「ううっ、ユウ君に負担をかけちゃうのは悪いと思ってるけどぉ」


 胸の中でモジモジする姉が可愛い。


「お姉ちゃん、俺は何処にも行かないよ。他の子を好きになったりしないから安心して」


「ユウ君……」


「誓ったでしょ。俺はずっと一緒にいるって。お姉ちゃんが愛想尽かさない限り、俺は永遠にお姉ちゃんと一緒にいるつもりだよ」


「愛想尽かしたりしないよ。私も、ずっと、ずぅ~っと、ユウ君と一緒だよ。もしユウ君が困った事になったり、世界が敵になったとしても、私はずっとユウ君の味方だから」


 ベッドの中で見つめ合う二人。


「お姉ちゃん……」

「ユウ君……」

「んちゅっ……んっ」


 くちびるとくちびるを合わせる。

 エッチは禁止したはずなのに、ちょっぴり気分が昂ってしまった。


「でもでもぉ、ちょっとだけエッチしたいな」

「聞き分けのない悪い子の百合華にはオシオキかな?」


 ペチン!

「ひゃん!」

 悠の手が、百合華のプリッとした尻に命中した。


「ちょっとぉ~何でお尻叩くのぉ!」

「外ではオシオキできなかったし、ホテルでは凄い攻められたからお返し」


 ペチン、ペチン、ペチン!

「ほら、オシオキしてあげるから大人しく寝て」

「余計に寝れないよぉ~」


 ペチン、ペチン、ペチン、ペチン、ペチン、ペチン、ペチン、ペチン、ペチン――

「ほら、ペロペロもしてあげるから」


 変なタイミングで悠の反撃が始まった。お尻ペンペンしながら、耳や首筋をペロペロする。


「だめだめぇ~っ、そんなのされたら我慢できないよぉ~」

「ほら、腋もペロペロしてあげるから」

 ペロペロペロ――

「ああああぁ~ん♡」


 百合華の弱点は把握済みだ。

 悠が百合華の弱点を集中攻撃する。そしてそれは固有スキルにより全てクリティカル攻撃となるのだ。昂っている百合華には、こんなの凄過ぎてたまらない。


「ほら百合華、おあずけ」

「ユウ君のバカぁ~鬼畜すぎるぅ~っ!」


 普段は優しいのに、エチエチタイムの時だけたまに鬼畜になる悠。百合華が長年躾けてきた成果なのか、はたまた躾けられたことによる反撃なのか?


 今日も今日とて、ますます百合華のムラムラが高まり、悠に対するデレも執着も昂らせてしまう。こんなの頻繁にくらっていたら、大好きな想いとエッチな気分でおかしくなってしまいそうなほどに。


 そして悠は気付いていない。

 悠の無意識な特効攻撃が百合華にドストライクしまくり、それが更なるオシオキの相乗効果となって返って来ることに。どんどん百合華をエッチ姉にしてしまっていることに。


「はああぁん♡♡♡ もう、お姉ちゃん気持ち良過ぎてしんじゃうぅ~っ!」

「えっ? もっともっと?」

「許してぇぇぇぇ~っ♡♡♡!」


 何度も陥落して完全に屈服されてしまった百合華がぐったりする。ピクピクする百合華を抱きしめて、永遠に終わらない気もするオシオキ添い寝は続く。



 もう当たり前のようになった日常。大好きな姉と想いが通じ合い、永遠を誓った愛。


 以前は、あの手この手で攻め込む姉に、禁断の関係を耐えようとする弟。しかし今は、悠が覚悟を決め百合華を守ると決めたのだ。


 親も説得し、周囲の目も乗り越えようと決めた。告白された同級生女子にも、丁寧にお断りを入れた。まだ少しシゴかれそうな気もするが。


 悠は抱いている百合華をギュッとする。


 お姉ちゃん……

 きっと大丈夫だ。

 俺は、お姉ちゃんを幸せにする。

 二人で幸せになるんだ。

 寂しさは消えなくても……

 俺が癒してあげる。

 ずっと側にいて、お姉ちゃんを守るから。


 ――――――――




 そんな、愛に溢れ優しく激しい日々は流れ、受験シーズンがやってきた。


 引き続き担任を続けている百合華先生に、悠は生徒指導室に呼ばれている。壁が厚く少しだけ防音になっている部屋に二人っきりだ。


「明石君の成績だと問題無いわね。後は試験当日に風邪をひいたりしないように体調管理に気をつけのよ」


「はい。体調管理は問題無いです。お姉……先生が寝かせてくれれば」


「…………」

「…………」

 悠の発言で一瞬だけ静寂が訪れた。


「ゆ、ユウ君! ごめんね! お姉ちゃん我慢するから風邪ひかないでね」

 百合華が必死になって弁明しようとする。自分がエッチ過ぎて弟が受験失敗したら大問題だ。


「先生、学園内では立場を弁えてください」

「さ、先に言ったのはユウ君……明石君なのにぃ」


 密室に二人とはいえ、学園内では控えなくてはならない。


「先生、うちの姉がエッチ過ぎて寝かせてくれないんです。何とかしてください」

「もうやめてぇ~ホントごめんなさい」


 睡眠時間は重要だ。健康においても、学業などのパフォーマンスにおいても、睡眠不足により記憶力や集中力に影響が出るのだ。エッチのやり過ぎ注意である。


「じゃ、そういうわけで、次の人を呼んでくるよ」

 面談が終わり次の生徒と代ろうとする。


 ぎゅっ!

「ユウ君、もう卒業も近いし……禁断の校舎内エッチとか……どうかな?」

 いけない百合華先生だった。


「ううっ、お姉ちゃんが今まで事案発生でクビにならなかったのが奇跡かも……」


「じょ、冗談ですから。私が、そんなハレンチなこと学園内でするわけないでしょ」

 ちょっとだけ百合華が普段の凛々しさを取り戻して言う。全く説得力が無いのだが。


「淫乱先生には、帰ったらオシオキします」

「ゆゆゆ、ユウ君! そんなに興奮させないでぇ~っ」


 オシオキだけは止められない二人。

 何年経ってもお互いに変なオシオキを考えてはイチャイチャし合う熱々ぶりだ。世界広しといえど、こんなにラブラブなカップルは悠達だけだろう。


「もうっ、冗談はそれくらいにしてよね」

「ふふっ、じゃあ行くね」

「ユウ君……受験頑張ってね。今まで勉強頑張ったんだから、気負わずにやればきっと大丈夫だよ。」

「うん」


 ――――――――




 そして、試験当日がやってきた。

 遂に姉に保護されるべき少年ではなく、一人の男として好きな女を守れる大人としての一歩を踏み出そうとしていた。愛する百合華との未来に向けて歩き出すように。


 残酷で優しい運命の神に翻弄される一日が始まろうとしていた。


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