第137話 運命の人
車の中で向かい合ったまま肩を揉んだりキスをする二人。完全にラブラブモードに突入してしまった。
「うんっ、ユウ君……癒される」
「でも、前から揉むってどうなの?」
「恋人同士は前から肩もみするって決まってるんだよ。んちゅ!」
ぽよんっ、ぽよんっ――
「あ、あの、当たってるんだけど」
「当ててるんだよぉ……じゃなかった、不可抗力だよぉ……ちゅっ、ちゅっ!」
若干怪しい気もするが、不可抗力らしい。
「んんっ、むちゅ、ちゅっ……」
「あの……外に人がいるから」
すぐ横を人が通って行く。見られるのではないかと落ち着かない。
「見えないから大丈夫だよぉ」
「ちょっと見えてるし。こんな公衆の面前でハレンチなのはダメ!」
「えええぇ~っ、隣の車もやってるのにぃ~」
「はあ?」
悠が横を見ると、何故か隣の車が揺れていた。
「あああっ、この世界は乱れている!」
自分も風紀を乱している内の一人なのを忘れて、悠がこの国の行く末を嘆く。お外でエッチなのはいけないのだ。
「もうおしまい。やっぱり外ではダメだよ」
「ええぇ~ユウ君のイジワルぅ」
「だって、このままだと、お姉ちゃん最後までしそうだし」
「ギクッ!」
「やっぱり…………」
百合華のエッチな魂胆はお見通しだ。
「ふえぇ~ん、せっかくユウ君とイチャイチャできると思ったのに……」
「エッチなのは禁止だけど、お姉ちゃんには日頃お世話になってるし、俺の為にドライブデートまでしてくれてるから、感謝の気持ちでエッチなの以外なら何でもしてあげるから。ほらっ」
悠が百合華を抱き寄せる。
「えっ、あんっ」
「今日は思い切り甘えて良いよ。お姉ちゃん」
シートをリクライニングにして、ゆったりと座ったまま百合華を抱き寄せる。
「えっ、良いの?」
「エッチなのはダメだよ」
「分かったよぉ」
手を握り合ったまま、百合華が頭を悠の肩に乗せる。
「ふへへぇ、これは良いものですなぁ」
とろんっとなった百合華が変なセリフを言う。
「オッサンみたいだぞ」
「もぉ~っ、オッサンじゃないもん」
「ふふっ、お姉ちゃんはどんな時も可愛いよ」
「えへへっ、にゃあぁ~ん」
ネコになったようにカラダを寄せる百合華。ネコミミを付けたら完璧なもふもふキャラに成れそうだ。
「ユウ君……こうして二人でお出かけして、ゆっくりするのも良いものだね」
「うん、そうだね」
百合華がギュッと悠に抱きつき胸で甘えまくる。
「ユウ君、ギュッてして」
「うん」
ぎゅっぎゅぅぅ~っ――
「んああっ……」
百合華は、悠に抱きしめられるのが大好きだ。少し強くギュッとされると、愛されているという実感と、大好きな悠に求められている感覚で、胸がきゅんきゅんしまくりカラダの奥がウズウズじてたまらない。
あああっ……
ヤバい……
ユウ君……それいいっ……
たまんないっ……
大好き過ぎるよぉ、ユウ君……
気持ち良くて、体が溶けちゃいそう……
きゅんっ♡きゅんっ♡
「ユウ君……」
百合華が悠の胸に顔を埋めたまま呟く。熱い吐息が首筋にかかりドキッとする。
「どうしたの?」
「キス……したいな」
「えっと……キスだけなら」
「いいのっ!」
ぱあっと明るい顔になる百合華。
「キスだけだよ。外でエッチなのはダメだからね」
「分かってるって。えへへぇ~」
嬉しそうな顔を寄せてくる。くちびるとくちびるが近付き、少しだけ軽く触れあう。
「んっ……」
「んぁ……」
軽く触れ合っただけなのに、体に甘い電気が流れるように快感が走る。
「ちゅっ、んちゅ……んっ」
目を開けたままの百合華が、至近距離で悠を見つめながらキスを続ける。それは、一瞬も大好きな悠を見逃さないと言うかのように。
「んあっ、んんっ、ちゅっ、むちゅっ……」
ふと目を開けた悠が、百合華とゼロ距離で見つめ合う。美しい百合華の瞳が、まるで『愛している』と語り掛けるように揺れる。
長いまつ毛、美しく大きな目、まるで銀河のように綺麗な瞳、シミひとつ無いスベスベな肌、完璧な美人でありながら何処となく可愛い印象の顔。
全てが愛おしい。
百合華に見つめられながら悠はキスされる。まるで悪魔的魅了にかかり
お姉ちゃんの瞳が綺麗だ……
吸い込まれそう……
そんな綺麗な瞳で見つめられたら……
「むちゅ……れろっ、ちゅぷっ、ちゅっ……」
「んんん~~~~っ」
自分でエッチ禁止とか言ったのに、お姉ちゃんのキスが凄過ぎて滅茶苦茶エッチしたくなっちゃう!
悠も我慢の限界だ。
「ぷはっ、あ、あの、お姉ちゃん……」
「なにかな、ユウ君?」
「ちょっと、外歩かない?」
「ダメぇ~っ……ちゅっ」
許してもらえなかった。
ガッチリと捕まえられて、ゼロ距離で見つめられながら、激しく求愛するようにくちびるを吸われる。
「んっ、うあっ、そ、それ以上は……」
「ちゅっ、あれあれぇ? ユウ君、エッチ禁止じゃなかったの?
「それは……」
最近は勝っていると余裕をかましていたら、やっぱり攻めに徹した百合華は恐ろしく強い。
マズい……
このままでは済し崩し的にエッチに持ち込まれそうだ。何とかせねば……お外でハレンチだけは防がねば……
悠が百合華の腰回りを掴む。
「えいっ!」
ぎゅうぅぅ~っ!
「ああああぁん!」
敏感な腰回りを掴まれた百合華が、急にビクビクしてよわよわになってしまう。昔から特に腰回りをマッサージされると弱いのだ。
「あんっ、ユウ君、そこダメぇ、くすぐったいからぁ。くあぁ……ダメだって言ってるのにぃ~」
「ほら、せっかく来たんだから、外を歩いてみようよ?」
もみもみもみもみ――
「あああ……分かったからぁ、行く行く、行くから許してぇぇ~っ!」
外に行くという意味だが、百合華が言うとエッチに聞こえる。
「今のセリフ良いね! もう一回言って」
「調子にのるなぁ~っ♡」
クルマの中のバトルは一旦終了し、海の見える遊歩道を二人で手をつないで歩くことになる。
「うわぁ、良い景色だね」
気持ちの良い潮風を受けて百合華が声を上げる。
「でしょ、やっぱり出てよかった。お姉ちゃんったらエッチにばかり興味があるエッチ女子なんだから」
「誰がエッチ女子よっ!」
百合華がプリプリする。
当然、少し怒ったプク顔が可愛い。
「ほらっ、お姉ちゃん、足元が危ないよ」
グイッ! むにゅ!
「あんっ」
遊歩道に段差があり、悠が百合華を抱き寄せる。偶然に手が胸に触れてしまった。
「もぉ~ユウ君のエッチ」
「ち、違うから。足元が危ないと思って」
「そんなこと言って、ホントは触りたいんでしょ?」
「それは……」
「や~い、ユウ君のエッチ男子!」
さっきの仕返しとばかりにエッチ呼ばわりだ。
「ほら、危ないって言ってるのに」
グイッグイッ!
今度は腰に手を回して抱き寄せる。
「ああぁん、もぉ! そこ触っちゃダメって言ってるのに」
「お尻ペンペンしないだけ良いと思ってよ」
普通に散歩しようと思っていたのに、途中からイチャイチャが始まってしまう。やっぱりこの二人はイチャイチャ禁止は無理なのだ。
「ユウ君のエッチ。本当はいやらしいコトしたいくせに。つんつん――」
ジト目になって指でカラダをつんつんされる。
「いやらしいのはお姉ちゃんでしょ。つんつん――」
悠も負けじと姉のカラダをつんつんする。主に横乳の部分だ。
「ほらぁ、やっぱりエッチだ」
「エッチなのはお姉ちゃん」
「ユウ君だもん」
「お姉ちゃん」
「つんつんつんつん――」
「つんつんつんつん――」
そこに突然小さな子供が駆け寄る。
「ねえ、ママぁ。このお姉ちゃんたち何やってるのぉ?」
「見ちゃいけません!」
子供が二人を指差すが、親が連れて行ってしまう。
「…………」
「…………」
ひゅぅぅぅぅ~っ――
「ほら、ユウ君がエッチなことするから」
「いや、それはお互い様だったような?」
完全にバカップル認定されてしまった。本人たちは盛り上がっているが、傍から見ると超恥ずかしいものだ。
「ほら、人前だとマズいから、あっちに行こっ」
百合華に手を引かれ、駐車場から陰になっている方へと回る。
「ほら、ここなら大丈夫」
何が大丈夫なのか分からないが、人がいない場所に出て二人でビニールシートを広げて座った。
ザザァーザザァー
波の音を聞きながら並んで座っていると、ロマンティックな雰囲気になり自然と寄り添い合ってしまう。
「修学旅行の夜みたい」
悠が呟く。
「だよね」
徐々に顔が近付く二人。
「ユウ君……」
「ダメだよ……外だから」
「チョットだけちょうだい」
「う……ちょっとだけなら」
「ちゅっ…………」
結局キスをしてしまった。
キスだけなのに、カラダ中に快感と幸福感が満ち溢れるような感覚になる。世の中に、こんなキスが存在してたのかと驚くくらいに。
「ユウ君……あの時、お父さんの再婚相手の子供がユウ君で良かった。もし、ユウ君じゃなかったら、私はこんな幸せにはなれなかったんだと思う。ユウ君だったから、私は幸せになれたの」
「俺もだよ。お母さんの再婚相手の娘がお姉ちゃんだったから、俺はこんなに幸せになれたんだ。もし、出会ったのがお姉ちゃんじゃなかったら、俺は今とは全く違う人生だったと思う」
「じゃあ、これはきっと運命だね。私とユウ君は、何百万分の……何億分の……凄い確率で出会った運命の相手なんだよ」
「俺も思う。俺とお姉ちゃんは、出会った時からこうなるのが決まっていたんだ。あの日、初めて会った時から……きっと結ばれる運命だったんだよ」
「嬉しい……ユウ君……ずっと一緒にいようね。私から離れないでね」
「絶対離さない。俺とお姉ちゃん……百合華ちゃんは、ずっと一緒だから。ずっとずっと大好きだから」
二人の影が重なり、深く深く求め合うような口づけを交わす。まるで運命の契約を交わすかのように。
――――――――
クルマに乗り駐車場を出ると、来た道を帰り始める。日が傾き夕日に照らされた海がオレンジ色に染まる。
火照ったカラダを抱えるようにして、二人は無言でドライブを続ける。ふと、海の見えるホテルの前を通りかかった時、車が進路を曲げ駐車場へと滑り込んだ。
ブロロロロ――――
「え、えっ、ええっ?」
「えっと……ユウ君……家まで我慢できないかも」
「ええっ! やっぱり」
図らずも花子先生の言った通り、海の見えるホテルで熱く
これも
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