第133話 姉を甘々に甘やかすことでオシオキ回避する悠

 親の年末年始休暇が終了し、北海道へと戻る日が来た。正月中に渡って子の激しいラブシーンを見せつけられ、幹也も絵美子もお腹いっぱい食傷気味だ。

 特に、娘のエチエチラブシーンを見せつけられた幹也のダメージが大きい。娘の成長を喜ぶと共に、生々しい場面を見せられ、娘が何処か遠くに行ってしまった気分なのだ。


「それじゃあ百合華、後は頼んだぞ」

「お父さん、こっちは任せて。ユウ君をガンガン鍛えておくから」


 ブッフォォォォッ!

 何を鍛えるんだ? 何を!


「百合華……程々にお願いね」

「お母さん、ユウ君のことは大丈夫ですよ。若くて体力もあるし、こう見えて意外とあっちも逞しいですから」


 うっわぁぁぁぁ……

 もうやめてぇ~

 恥ずかし過ぎる……


 悠の羞恥心を知ってか知らずか、百合華が意味深な発言連発で桃色の雰囲気を作り出してしまう。


「ガンガン……鍛えてるのか……」

「逞しい……そう、若いって良いわね」


 もう何て答えていいのか分からず、ただ茫然としているだけの両親だ。


「じゃあ、行ってきます」

「体には気をつけるのよ」

「「行ってらっしゃい」」


 バタン――




 二人が出発してのを見送り、再び愛の巣スイートホームは二人だけのパラダイスとなる。もう邪魔する者は誰もおらず、二十四時間エチエチ生活が始まるのだ。まあ、両親が居ても敢えて見せつけて、悠を羞恥心で追い込む悪い姉なのだが。


「ねえ、ユウ君、なにしよっか?」

 さっそく百合華が抱きついてくる。


 もう邪魔する者も何の障害も存在せず、順風満帆じゅんぷうまんぱんな二人の門出が待っているだけに思えた。


「お姉ちゃん、ちょっと来て!」

「え、えっ?」


 いつものように百合華が強引に迫ろうとしていたところ、逆に悠が強引に手を引っ張って百合華を連れて行く。


「あれ? どうしたのユウ君……もしかして怒っちゃった?」

 いつもと違う悠の反応に、不安になる百合華。ちょっとやり過ぎてしまったのかと。


 リビングに入ると、悠は百合華をギュッと強く抱きしめた。


「えっ、ユウ君……」

「お姉ちゃん……」


 ギュッギュッと抱きしめられ、百合華の脳から幸せホルモンのセロトニンやオキシトシンが分泌され、カラダ中が幸福感でいっぱいになる。百合華は、悠とくっついている時が一番幸せなのだ。


「お姉ちゃん、ごめん……」

「えっ?」


「俺がフラフラしていたから、お姉ちゃんを不安にさせてたんだよね。俺は、お姉ちゃんが大好きだし、お姉ちゃんしか見ていないから安心して」


「ユウ君……」


 悠は、自分が他の子のプレゼントしたマフラーを着けていたり、同級生女子と仲良くしているから、百合華を嫉妬させたり不安にさせているのだと反省した。これからはなるべく嫉妬させる行動は控えようとか、安心させる為に優しく接したいと考えたのだ。


 百合華が寂しがり屋だったり愛に飢えているのは、確かに親や環境のせいもあった。しかし、百合華は元から嫉妬深いし、何より人一倍エロかった。何かにつけてエッチなオシオキしたがるのは、単に百合華がエッチなだけだ。


 しかし今、悠の行動によって百合華の心は、大切に想われている幸福感と、自分が性欲全開で悠を見ていた罪悪感でいっぱいになってしまった。


 ユウ君、そんな純粋な目で……

 なんてピュアなんだろ……

 ああ、エッチなことばかり考えてる自分が恥ずかしい……



「ほら、もう親も帰ったから、うんと甘えて良いよ」


 悠がソファーに座り、膝の上に百合華を乗せて抱っこする。完全に姉を甘やかすモードだ。


 なでなでなで――

 抱っこしながら姉の頭を撫でる。


「ふへぇ、今日のユウ君はサービス満点だね」

「大好きなお姉ちゃんの為なら何でもするよ」


 きゅん♡きゅん♡

「ゆ、ユウ君! そ、そんなに私を喜ばせてどうすんのぉ! もぉ~おかしくなっちゃいそうだよぉ」


「ちゅっ……おかしくなっちゃって良いよ」

 おでこにキスをして甘やかす。


「はうぅ~っ♡」

 だ、ダメだよぉ~

 そんなに優しくされたら、もっともっとユウ君に溺れちゃう……

 もっともっとカラダがユウ君を欲しがっちゃう……

 砂漠に命の水を染み込ませるように、私のカラダにユウ君でいっぱいにしてぇぇぇぇ~っ!


 悠が考えていたより効果が絶大で、百合華の安心感が増すと同時に、悠に対する溺愛具合が上限突破して、銀河系をも飛び出しそうなくらい大好きになってしまった。

 姉を想う大好きな気持ちが、予期せず姉の強烈なオシオキを防ぐカタチになる。元旦に何度も堕とされた仕返しにキッツい反撃をしようとしていたのに、悠に大事にされて幸せ過ぎて忘れているようだ。


 もう、この姉は手遅れだ。弟が大好き過ぎておかしくなってしまったのでは。いや、元からちょっとおかしいのだが。



 窓の外が薄暗くなる。

 あれからずっと何時間も甘やかされ続けた。カラダ中をナデナデされ、甘く優しいキスをされ。キスも、くちびるだけだはなく、カラダ中至る所にキスされまくる。もはやキスをしていないところが無いくらいに。


「んんっ、あああっ……♡」

「ちゅっ……ぺろっ」

「ユウ君……もうっ、限界……」

「まだまだ、朝までだよ」

「ひえぇぇ~ん、もうダメぇ~っ!」


 甘やかしているようで、ちょっぴりオシオキのような感じだ。長時間ドロドロとじれったく攻められて、百合華が完全にとろとろに蕩けている。


「ユウ君、ちょっとトイレに……」

「俺も一緒に行くよ。お姉ちゃんにご奉仕するね」

「うん……って、うんじゃないよぉ~っ!」

「え?」

「それは恥ずかしいからダメぇ~」



 ジャァァァァ――

 トイレで便器に座り、水を流しながら百合華が呟く。


「あ、危なかったぁ……危うくOKしちゃうとこだったじゃない! ユウ君の甘やかしスキル恐るべし!」


 普段からハレンチな姿ばかり見せていたり、マニアックなプレイをしたがる百合華だが、最後の砦としてコレだけは見せるのは禁止していた。

 前に手錠の鍵を無くした時に醜態を晒してしまい、その時の羞恥心が身を焦がすほどウズウズとカラダの奥をさいなんで治まらない。

 むしろ、強く命令されたら喜んで見せてしまいそうな自分が怖いくらいだ。


「ああああ~ん、どぉしよぉぉ~っ、今度またユウ君に迫られたら断れる自信がないよぉ~ホント、ユウ君ってば怖い弟だよ」


 勝手に百合華の妄想が膨らみ、ますます危険なドスケベ姉になっていた。



 ガチャ――

 リビングに戻ると、再び悠の甘々なご奉仕が始まる。もうエンドレス甘々ストーリーだ。


「ふぁああ……もうダメかも……」

「お姉ちゃん、任せて」


 ちょっと違った方向に頑張っている悠に身を任せ、百合華の甘々生活は続いた。


 ――――――――




 チュン、チュン、チュン――

 本当に朝までキッチリ躾けられてしまった。

 お風呂も一緒に入って隅々までキレイキレイされ、ベッドでは何故か例の玩具の手錠をされ、動けないままキスやペロペロでずっと甘やかされた。これはさすがに淫魔女王サキュバスロードの百合華でもたまらない。


「うぐっ……はぁ……ユウ君……お姉ちゃんは今日から仕事……だからぁあ~ん……」


 そう、冬休みの学生とは違い、百合華には仕事始めがあった。正月明けは授業は無いが仕事なのだ。


「あっ、そうか仕事始めか。でも、大丈夫。お姉ちゃんを満足させるからね」


「じゃなくてぇ~もうだめぇぇぇぇ~っ! お姉ちゃんホントにダメになっちゃうぅ~っ♡」


 今日も明石家は平和だった。


 ――――――――




 百合華が少し遅めに職員室へ到着した。


「おはようございます」

「新年、あけましておめでとうございます」

 さっそく、百合華女王に心酔する同僚の男性教師達が近寄ってきた。


「あ、あけましておめでとうございます……」


 もわぁぁぁぁ~っ――

 百合華の入室と共に、室内に強烈なフェロモンが充満する。普段から可視化できそうなくらい凄いフェロモンなのだが、今日は一段と凄まじいエロス量だ。

 それもそのはず、一日中甘々な攻めを受け続けて、完全にスイッチを入れられたままご出勤なのだ。しかも、散々エチエチに甘やかされて、最後までやってもらえないオシオキ付きだ。


 少し乱れた髪と、遅刻ギリギリでシャワーも浴びれず服も崩れている。逆にそれが色気を増大させてしまい、更に百合華の魅力を引き立たせてしまっていた。



 すれ違った男性教師達が一斉に前屈みになる。百合華を見つめながらコソコソを噂話に花を咲かせる。


「くっ、今日はいつにも増して魅力的ですね……」

「ああ……女王の後ろ姿が魅力的過ぎる……」

「いや、後ろもエロいですが、前も最高です」

「いやいや、女王はどの角度から見ても最高ですよ」


 すれ違ったはずの百合華が振り向いて引き返してきた。


「あの、さっきから聞こえてますけど。女性を性的な目で見てばかりいるのはどうなのですか?」


 百合華が『ビシッ!』と音が出そうに正論を述べる。ここに悠がいたら、『いつも性的な事ばかり考えてるお姉ちゃんが何言ってるの!』とツッコみそうだが。


「あ、あの、すみません……」

「反省してます……」

「ぐっ、女王の靴を舐めます」


 まさかの展開に、ますます前屈みになる同僚達。


「まだふざけてます? そういうのは思っていても口に出したらダメなご時世なんですよ」


 ズンッと胸を張る百合華。ぷるんっと巨乳が揺れ、濃厚なフェロモンと共に、男達の本能を刺激しまくり、もはや土下座して靴を舐めたいほど虜になってしまう。


「ほんとすみません……」

「うぅ、堪忍してください」

「もう限界なんで……」


「だから、何で前屈みなんですか。ちゃんと立ってください」


 ちゃんと立ちたいのは山々だが、他のところが立っているので立てないのだ。百合華の女王然とした冷徹なセリフが突き刺さり、更に同僚達を追い込んでしまう。ちょっぴり可哀想だ。


 悠の前ではデレデレなのに、相変わらず他の男には厳しい氷の女王だった。



 ガチャ――

「おけましておめでとうございます。末摘先生」

 百合華が席に着き、隣の花子に挨拶する。


「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします師匠!」

 こちらも相変わらず弟子入りしそうな花子だ。


「師匠、良いですね! グッドっ!」

 何か花子のオネショタレーダーが感知したのか、親指を立ててサムズアップした。


「末摘先生、何ですかそれ?」

「むふふぅ~やっぱり弟って良いですよね。悠君いいなぁ……」

「あげませんよ!」

「ね、狙ってません、狙ってませんから」


 義理の姉弟で激しいオシオキの攻防により、ますます色気を増した百合華。男の視線を集めまくり、本能を刺激して止まない。

 こんな最強の女性を彼女にしてしまった悠の、結婚に向けての激しくエチエチな道のりが始まるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る