第127話 人前でこっそりイチャイチャする発明品
百合華も仕事納めとなり、本格的に冬休み到来。外は冬型の気圧配置で冷え込んでいるのに、家の中はラブ臭がムンムンと立ち込めるイチャイチャワールドだ。
こんな状態で親の帰宅を迎えられるのか、
クリスマスイブも本当に日付が変わるまでキスし続けて、口づけを交わしたままメリークリスマスだ。当然、ケーキは『あーん』で食べさせ合って、お風呂も一緒に入って洗いっ子。
そして、寝るのは『お姉ちゃんと強制密着刑EX!』だ。よく伸びる大きめの長袖インナーの中に二人同時に入って、腕も脚も体も完全に一体化するほどピッチリ密着する。何かの苦行なのか世界記録に挑戦なのか、そのまま朝までキスし続けるという、常識では考えられない愛の暮らしだ。
ラブラブカップル世界大会があったら優勝間違いなしだろう。
そして現在――――
二人はコタツの中で抱き合ったままキスをしていた。
「お姉ちゃん、ホントにキス好きだね」
「私が好きなのはユウ君だよぉ、んっ、ちゅっ……」
百合華の腕が悠の背中に回り、ギュギュっと強く抱きしめながらキスを続ける。脚を絡ませて色々刺激するのも忘れない。
「ちゅ~っぱっ!」
百合華のくちびるが、悠の胸元へ吸い付く。
「ちょっと、お姉ちゃん! 明日は親が帰って来るのに、キスマークなんかつけないでよ」
「んん~っ、どうしよっかっなぁ~ちゅっ、ちゅぅ~っ!」
「あああ! ダメって言ったのに」
やめてと言えば更に攻める困った姉だ。もう、この暴走姉を止める術が無い。このままでは、明日は家族会議でエロ姉の問題を話し合うことになりそうだ。
「最近のユウ君は生意気だから、ちゃんと躾け直さないとね」
自称130戦130勝で常勝不敗なのに、最近は悠に負けているのが納得いかないらしい。
先日は完全に屈服してしまい、悠の命令通りに色々と恥ずかしいことをしてしまった。もう姉の威厳どころではなく、思い出しただけで羞恥心でおかしくなりそうなくらいだ。
その後は散々オシオキしまくっているのに、あの時の弟に屈服させられた強烈な記憶が、カラダの奥の深い部分をウズウズと疼かせてたまらない。もう、いっそこのまま本当に弟の奴隷になってしまいたいくらいに。
「あれは、お姉ちゃんが勝手に奴隷になっちゃったから……てっきり専属メイドなのかと思ったら、『淫らな百合華にオシオキしてください』とか言い出して……」
「い、い、い、言ってないから! 気のせいだから!」
「う~ん、確かに言った気が……自分でお尻を高く上げて『もっとぶって』とか……」
「だだだ、ダメぇぇぇぇ~っ!」
「終わった後も、『ご奉仕します』とか言ってあれを……」
「ああああぁ~ん! もう許してぇぇぇぇ~!」
姉が羞恥心の限界で壊れた。
普段は女王然とした気丈で気高いイメージなのに、悠に攻められると途端に絶対服従して命令通り恥ずかしいことをしてしまう。悠になら何でも恥ずかしいところを見せてしまいそうな自分が怖くて、普段は弟を絶対服従させようとしていたのかもしれない。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
百合華を抱き上げる。
「大丈夫じゃない。ユウ君がイジワルなんだもん。昔は小さくて可愛かったのに。今は姉を奴隷にして恥ずかしいコトさせようとしてるんだぁ……」
「してないから。そんなんじゃないから。てか、今は可愛くないんだ……」
「今も可愛いけどぉ~ユウ君は、全部可愛いし大好きだよ」
ぎゅ~っ!
悠の首に腕を回し抱きつく。
このまま何度目かのプロレスごっこに突入しそうになったその時、突然立ち上がった悠が宣言する。
「よし、何処かに出掛けよう! このまま家でエチエチしているとダメ人間になりそうだ」
「えええぇ~っ、コタツの中でイチャイチャしてようよぉ」
手足をジタバタさせて駄々をこねる百合華。
「年末の食材も足りないし、トイレットペーパーも少なかった気がする。よし、買い物に行こう」
若いのに悠が所帯じみた事を言っている。
「もっとエッチしたぃ~」
「お姉ちゃんの趣味が、エッチな妄想とエッチなコスプレとエッチなイケナイコトのような気がして、このままだと更にポンコツ姉になってしまうかも」
「ちょっと、ユウ君! 問題発言!」
ちょっと言い過ぎな気もするが、このままだとずっとコタツでエチエチしまくり寝正月ならぬ寝冬休み確定なので、少し出掛けて気晴らしも重要だとなる。
そして、こんな雰囲気の二人が帰宅した親と対面したら、速攻で関係がバレてしまいそうなのだ。
玄関を出ようとした悠に、百合華がエコバッグのような買い物袋を手渡す。
「はい、ユウ君。これ持って」
「何このバッグは?」
「この穴に手を入れると、中でこっそり手がつなげる魔法のバッグなんだよ。これなら前みたいにパパラッチされても、『ただの買い物ですが何か?』って誤魔化せるよね。外からは二人で買い物袋を持っているだけに見えるけど、中では手をつないでイチャイチャできる画期的な発明品なの。特許取ろうかな?」
「………………」
「ユウ君、何で黙ってるの?」
「うっ、最近お姉ちゃんが心配になってきた」
これをチクタク時計の音しかしない深夜に、一人部屋で作っている姉を思い浮かべてしまう。
「ちょっとぉ~ユウ君、変な心配しないでよぉ」
文句を言いながらも、仲良くバッグの穴に手を入れて握り合いながらお出かけする二人。何処に居ても何時いかなる時でも、くっついていたいラブラブな関係なのだ。
家を出て角を曲がると、近所のおばさんに声をかけられた。
「あら、明石さん。二人でお買い物?」
「そうなんです、年末の食材や買いだめしておきたい物もありまして」
さっきまでのポンコツぶりは何処へやら、完全に外用になった姉が凛々しく気高い完璧美人になって答える。
「あら、そうなんですの。年末年始は大変よねぇ。あ、悠君も大きくなったわね」
「は、はい……」
お、お姉ちゃん……
相変わらず凄い変わり様だ。
俺が見ても余りの美しさと気高さに惚れ惚れするぜ。
さっきまで駄々こねてたり変態発言していた姉と同一人物だと思えないぜ。
ちろちろちろっ――
「っ…………!」
百合華特製バッグの中で、姉の指が手のひらをコチョコチョとくすぐる。不意を突かれ、悠の体がビクッと震えた。
「年末年始は家事や親戚関係など忙しいですよね」
「そうなのよ。うちは子供も多いし」
エッチなイタズラをしながら、百合華は平然として近所のおばさんと会話している。歴戦の女騎士のような胆力だ。
おおお、お姉ちゃん!
人前ではヤメテぇぇぇぇ~
バレちゃうからぁぁーっ!
バレてはいけないと思えば思うほど快感が増してしまう。フェザータッチでコチョコチョチロチロとくすぐられ、悠の羞恥ゲージが限界近くになってしまう。
「はあはあはあ……ひ、人前ではやめてよ」
「ふふっ、恥ずかしがるユウ君ってば可愛い」
やっとおばさんとの井戸端会議も終わり開放される。だが、ここぞとばかりに家で陥落させられた仕返しと攻め立てる姉なのだ。このまま人前で羞恥調教しようとする気満々である。
「やっぱり、とんでもないドスケベ百合華だぜ」
「ユウくぅ~ん、あんまり私を怒らせない方が良いよぉ。本当ならユウ君のズボンに細工して、ポケットから手を突っ込んであそこを――」
「うわぁぁぁぁーっ! アウトだからダメ!」
更に恐ろしい計画を立てている姉に戦慄する。お外でイケナイコトしてはポリスメン案件だ。
最近は姉に勝っているからと調子に乗っていると、とんでもないオシオキをされそうで恐ろしくなってしまう。
「ふふんっ、これに懲りたら姉を敬って従うこと!」
ドヤ顔で威張る百合華を見て、先日のお尻ペンペンで屈服した奴隷姉とのギャップにドキドキしてしまう。
お姉ちゃん……
それ、素でやってんのかな?
ギャップが凄過ぎて、余計にエッチだよ。
まさに気高くプライドの高い女騎士が『くっころ展開』みたいで興奮しちゃうんだけど。
外ではこんな感じなのに、どうせまた勝手に陥落して弟に絶対服従してしまいそうではある。悠を溺愛し過ぎていて、ちょっと攻められただけでクリティカルに感じてしまうのだから仕方がない。
そのまま買い物に行き、ずっとイチャイチャしたまま街を歩く。二人共、常に相手に触れていたほど大好きなのだから。
帰り道もバッグの中で恋人つなぎしたり、お互いの指をスリスリしあったりしながら愛を確かめ合うようにしていた。
ガチャ!
帰宅し玄関のドアを閉める。
当然のように抱き合ってキスの嵐だ。
「んちゅっ、んっ……れろっ、ちゅぱっ……」
「んんっ……お、お姉ちゃん、先に食材をしまおうよ」
玄関を上がった廊下で激しく貪るようなキスをされる。外に出掛けたら、更に姉のムラムラが昂ってしまったようだ。
「だってぇ、外でずっと手だけイチャイチャしてたら、もっともっとエッチな気分になっちゃったんだもん」
「ううう……逆効果かよ」
悠の目論見は脆くも外れ、更に姉を興奮させる結果になっただけだった。もはや、とことん百合華を甘やかして満足させるしかないようだ。
当然この後、滅茶苦茶
――――――――
そして翌日――
北海道から両親が帰宅した。
「ただいま」
「二人とも元気だった?」
両親がリビングのソファーに座ると、悠と百合華も対面のソファーに一緒に座った。当然のようにピッタリ寄り添いながら。
「このチョコクッキー美味しいんだよね」
「はい、ユウ君」
「あむっ、うん、美味しい」
「ふふっ」
もう自然にラブラブ感が出てしまっている。以前は完璧に隠し通していた百合華だが、悠と本格的に付き合ってからというもの、完全に愛に溺れまくり体の芯まで刻み込まれ、溢れ出るラブ臭を消すことなど不可能なようだ。
それでも外では鋼の意志で隠していたが、家の中では自然に
「…………」
「…………」
幹也と絵美子が暫し固まる。
「やっぱり、あなたたちって、ちょっと変わったわよね?」
絵美子の冷静な言葉がリビングに響く。
「「ギクッ!」」
もはや隠し通すのは不可能だ。
遂に家族会議の時間が来てしまった。
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