第118話 嵐の到来……そして悠は覚醒する!
日曜の夜。
修学旅行から帰ってからというもの、凄い勢いで姉に迫られ、ずっと濃厚イチャイチャしっぱなしだった。
日程が帰宅から土日を挟むので十分休息できるはずなのに、明石家といえば姉の猛攻で旅行より疲れる始末だ。
日曜夜くらいは、ゆっくりしたいところなのだが。
悠はリビングのソファーに座り、テレビを観ながら沖縄土産のお菓子を食べていた。
サクサクッ――
「この紅イモのお菓子が美味い」
ムシャムシャ――
「こっちのサーターアンダギーもなかなか」
テーブルの上にお菓子を並べて食べ比べている。
飲み物は、さんぴん茶だ。
帰ってからも沖縄気分を満喫していた。
とたとたとた――――
「ユウ君」
さっそく姉の襲来である。
悠いるところ百合華が現るのだ。
「美味しそうだね。お姉ちゃんにも食べさせてよぉ」
悠の腕に抱きつき口を開ける可愛い姉。
傍から見ると、毎日超ウザ絡みしているように見えるかもしれないが、悠としてはもっとたくさん絡んで欲しいくらい溺愛しているのだ。
「お姉ちゃんは、どのお菓子にする?」
「う~んとねっ、私は、ユウ君のぉ~ち、ちん……」
姉が禁止ワードを喋りそうな気がして、つい手で口を塞いでしまう。
「んんん~~~~」
「お姉ちゃん、それは言っちゃダメ。色々と怒られそうだから」
お土産コーナーで自分でネタにしていたのも忘れて、姉の問題発言には厳しい悠だ。
「んっ、ぷはぁ! もぉ~ちんすこうって言おうとしたんだよぉ」
「ホントかな?」
「でもでもぉ、ユウ君の〇〇〇も欲し――んんん~~」
やっぱり問題発言なので口を塞ぐ。
「もうもう、ユウ君のイジワル」
ポカポカされてしまう。
「ぷっ、ぷはっ、ふふっ」
「何で笑うのぉ~」
子供みたいにプク顔してポカポカとか、超セクシーな姉がやると可愛いやらおバカっぽいやらで笑ってしまう。
「早くぅ、イジワルしてないで食べさせて」
「分かった分かった」
悠が手でつまんで口に入れようとすると、百合華が駄々をこねた。
「口移しが良い~、ユウ君のちん……口移しで食べさせてぇ~」
微妙にアウトっぽいけどセーフななのに、やっぱりアウトな感じの発言をする。
「お姉ちゃん口移し好きだね」
「これから食事は全て口移しで食べさせるコト!」
「それは無理でしょ」
何だかんだ文句を言いながらも、姉のおねだりには逆らえず、口にお菓子をくわえて姉の方に向ける。
「んっ」
「ん~ん……」
百合華がお菓子の先端をくわえ、ポリポリと食べ進む。
目と目で見つめ合ったまま少しずつ食べて行き、最後はくちびるを奪うまでがルールだ。
「ぺろっ、ちゅ――」
赤い舌を出してくちびるを舐める姉がセクシー過ぎる。
もう、全ての動作がセクシーなくらいだ。
「はい、次はユウ君に食べさせてあげるね」
百合華が、お菓子を一つ口にくわえると、キス顔で突き出してくる。
「んん、ん~ん」
「何だろう、この可愛い生き物……」
ちょっとだけおバカな感じで迫る姉を見ていると、ウズウズとイタズラ心が湧いてくる。
お菓子をくわえた口を突き出しているのに、巨乳も一緒に突き出していて、もうイタズラしてくださいと言っているようなものだ。
お姉ちゃんのキス顔が可愛すぎる……
あと、おっぱいが凄い……
ちょっと触っちゃおうかな?
ぴとっ!
「パイタッチ」
変な掛け声と共に、悠が百合華の胸にタッチした。
「んんぅ~ん!」
菓子を口にしているので文句を言えず身をよじるばかりだ。
もみもみもみ――
「んふぅ~ん、んん~~」
「面白い。くすぐっちゃえ」
こちょこちょこちょこちょこちょ――
調子に乗って腋や脇腹をくすぐり攻撃だ。
菓子を落とすまいと我慢したまま、ジタバタして悠の攻撃を耐え続ける百合華が面白い。
「ドスケベ百合華にオシオキだぜ」
「んんん~~~~ぱくっ、ポリポリ……ごくっ……も、もぉ~ユウ君のバカぁ~っ!」
口にくわえた菓子を自分で食べてから文句を言う。
「昨日は朝まで姉刑を受けたのに、まだ反省してないのかしら?」
姉刑最高刑である八大無間姉地獄とやらを執行された。
実際のところ、ひたすら姉のエッチな攻めを受け続けるという素晴らしくも恐ろしい刑罰なのだが。
「ふっ、姉が怖くてエチエチできるか!」
「ふ~ん、ユウ君、生意気言うようになったわね」
「もう力じゃ負けないぜ」
「じゃ、試してみる?」
ぎゅうぅぅぅぅ~っ!
百合華が上に乗り押さえ込まれる。
「あ、あれ? 押し返せない……」
「誰が力じゃ負けないだって?」
「え、ええ?」
「姉に逆らったのだから、覚悟はできてるわよね?」
「うわぁぁぁぁ~」
単純に腕力では悠の方が強いはずなのに、百合華に押さえ込まれただけで動けない。
巨乳のパイ圧や柔らかなカラダ、姉の良い匂いや本能をくすぐるフェロモンなど、様々な要因で悠の力が発揮できないのだ。
これでは姉に一生勝てないだろう。
「ほらほらぁ、生意気ユウ君にはオシオキだよぉ~」
「うわぁぁぁ~もう気持ち良過ぎてダメだぁ~」
ぎゅうぎゅうと抱きしめられ首筋にキスされる。
それだけで体の力が抜けてしまう。
「生意気言ってた口はこれかな? 二度と姉に盾突かないように塞いじゃえ」
うっとりとした顔でキスをする。
「あむっ、んっ、ちゅっ…………」
あああ……
お姉ちゃん、大好き過ぎる……
今日も今日とてラブラブな一日。
こんな幸せが、ずっと続けば良いのに――
悠は心の底からそう願った。
――――――――
月曜日になり悠も百合華も新しい日常が始まる。
光陰矢の如しというように、月日の流れは早く儚く、二度と戻ってこない大切なものなのだと人は言う。
悠と百合華の過ごした大切な日々は、二人の絆や想いを強く結びつけていた。
そして、その二人の絆が試される時が迫っていた。
ガラガラ――
「おはようございます」
百合華が出勤し職員室に入る。
修学旅行以来だ。
いつもと同じ風景、いつもと同じ日常――
しかし、今日は少し違っていた。
「あの、明石先生……」
教頭の山田が話しかけてくる。
「はい、何か?」
「ちょっと来て頂きたいのですが……」
「はい……」
神妙な顔で話しかける山田に、
奥の応接室に通されソファーに座るように促された。
「あの、それで何か御用でしょうか?」
「じ、実は……大変申し上げにくいのですが……」
何か要領を得ない山田教頭。
懐から写真のようなものを取り出しテーブルに乗せる。
「えっ! こ、これは……」
百合華が声を上げ目を見開く。
スマホで撮った写真をプリントアウトしたものだろうか。
一部分を切り取り拡大したのか画像はぼやけているが、そこに写っているのは百合華本人である。
「ええ、ごほん、これはですな、ある生徒から提出されまして……その生徒は、スーパーの中でふざけて写真を撮り合っていたようなのですが、偶然背後に明石先生らしき人物が写っておりまして」
その写真には、スーパーの中で百合華が男子生徒と恋人のように腕を組んでいる姿が写っていた。
「問題なのはですね、この腕を組んでいる男性が本校の制服を着ているということでして。角度的に男子生徒の顔までは分からないのですが、本校の教師である明石先生が、教え子の男子生徒と淫行しているのではないかとの指摘を受けましてな」
写真の男子生徒は悠に間違いなかった。
一緒に食材を買いに行った時に、ふざけて抱きついた時のものだ。
どうみても恋人との行為のように、男の腕に抱きつき胸を押し当てているようにしか見えない。
不幸中の幸いなのは、男子生徒が背を向けていて顔が分からないことだろう。
「明石先生、これはご本人で間違いないですね」
「は、はい……」
山田が「はぁあ……」っと溜め息をつく。
「明石先生は教育熱心で指導力も高く生徒にも慕われており、私としましても大変高く評価しておるのですよ。しかし、特定の男子生徒と不適切な関係になっているなど、教育委員会や世間に知られたら大問題なのですぞ。昨今の教員の事件も頻発しておるこのご時世に」
百合華が頭を下げる。
「はい……それは重々承知しております」
「この男子生徒は一体誰なのですかな?」
「それは言えません。生徒の将来もありますから」
「しかし、それでは」
どうしよう……
私の軽率な行動でユウ君を……
私はどうなってもいい、ユウ君を、ユウ君だけは守らないと。
「この度は私の軽率な行動で、生徒や学園にご迷惑をお掛けして申し訳ございません。この生徒とはそのような関係ではなく、ふざけて抱きついただけなのです。生徒に迷惑を掛けるわけにはいきません。私が全て責任を取りますので、生徒には影響が出ないようお願いします」
「で、ですが……」
「失礼します」
応接室を出る百合華。
その顔を覚悟を決めたようだった。
そう、これは私の罪。
あの日、ユウ君と出会った時から。
私は、どうしてもユウ君を私のものにしたかった。
誰にも渡したくなかったの。
本当なら、ユウ君は同級生と付き合ったり、普通に恋愛していたのかもしれない。
でも、私は……
家族になる人を……
弟になるはずの人を……
禁断の関係だと分かりきっていたはずなのに……
それでも諦められない。
大好きだから!
誰よりも、大好きなんだから!
でも、ユウ君だけは守る。
例え私が悪い教師の烙印を押されたとしても。
ユウ君だけは守らなきゃ!
――――――――
その日、学園での百合華がいつもと違う事に悠は気付いた。
誰もが分からないよう完璧に取り繕っていても、悠だけにしか分からない些細な違いがあるのだ。
帰りのホームルームが終わって職員室に戻る百合華に話しかける。
「先生」
「明石君、今日は職員会議があるから遅くなるの。先にご飯食べていてね」
それだけ言うと、百合華は廊下を歩いて行く。
何かを隠しているような、そんな不安が拭えず、ただ姉の背中を見送ってしまう。
その日は夜遅くまで、百合華は家に帰ってこなかった――――
――――――――
数日後、悠は姉の部屋に忍び込んでいた。
去年の夏休みに、姉が仕事の時に忍び込んで以来だ。
百合華が入浴中に決行した。
お姉ちゃん……
絶対におかしい。
最近、口数も減ったし、何かを隠しているような。
お姉ちゃんが困っているのなら、俺が助けないと。
絶対に助けるんだ。
ガサゴソ――
机周りを探索する。
引き出しを開けた時、それを見つけてしまった。
「退職届…………」
白い封筒に入ったそれを手に取る。
ドクンドクンドクンドクン――
心臓が早鐘を打つように鳴り続ける。
壊れてしまうのではないかと思うくらいに。
な、何故……
そんなバカな……
ま、待て! 落ち着いて考えろ!
完璧美人のお姉ちゃんが仕事でヘマをするわけがない。
何か、他の問題があるはずだ。
もしかして……俺との関係が?
そうだ、それしか考えられない。
俺が何も
お姉ちゃんが俺を庇っているから?
考えろ!
考えるんだ!
何とかしてお姉ちゃんを助けないと。
お姉ちゃんに罪を負わせたりなんてさせない!
俺は、お姉ちゃんを幸せにすると誓ったんだ!
絶対に! 絶対に幸せにすると!
大好きな百合華を救う為に動き出す悠。
例え、どんな手を使ってでも。
百合華を救うのは自分なのだと。
今、悠は神聖リリウム王国
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