第112話 修学旅行で地獄のトリプルケツサンドイッチ

『皆様、おはようございます。本日は〇〇航空のご利用いただき誠にありがとうございます。この飛行機は、那覇行き、1008便でございます。本日のフライトは2時間20分を予定しております。座席につかれましたら、シートベルトをお締めください。また、ベルト着用のサインが消えるまでは化粧室のご利用はお控えください』


 飛行機のアナウンスが流れる。

 待望の修学旅行となり、皆で飛行機に乗り込んだところだ。


 ポーン、ポーン!

『当機は間もなく離陸いたします。なおフライト中は、気流の変化により機体が揺れる可能性もございます。ご注意ください』


 フォオォォォォォォーン――

 ゴゴゴゴゴゴゴォォォォ――


 飛行機が滑走路を走り離陸体制に入る。


「ほ、ホントに飛ぶのか……」

 悠がビビり気味で呟く。


「何よ、あんた怖いの?」

「こ、怖くねーし」


 貴美にツッコまれて強がってしまう。


「へへっ、明石ってば初めてなのかよ」

 真理亜に、意味深な感じで童貞はじめてとか言われてしまう。


「どどど、ドーテーじゃないし」


 くぅ……

 もう童貞じゃないのに、やっぱり童貞っぽく見えるのか。

 なんてこった。


「あっれぇ、あたしは飛行機が初めてか聞いたんだけど」

「くっ……ど、ドーテーじゃないのに(ぼそっ)」

「何か言ったか?」

「いや何も……」


 家で姉にエチエチされているのに、やっぱり初心うぶな印象は抜けていなかった。


「まあ、気にすんなって。あたしも初めてだし。あっ、エッチの方は明石さえよければ、いつでもさせてやるけどな」


「ちょっと、真理亜! 風紀を乱さない!」


 もうエッチしたいのを隠さない感じの真理亜に、ピリピリした貴美が怒り出す。

 美味しそうなドーテー感を出し、ドSフレンズの餌食になりそうな悠が悪いのだ。



 グオォォォォォォ――シュバッ、フォォォォォォ――――

 白い機体が浮かび上がり、ぐんぐん地面を離れ空を進んで行く。


「と、飛んだ……」

「ほらぁ、悠、怖いのなら私が手を握ってあげるわよ」

「いやいや、いいって、何か怖いから」

「なんですって!」


 いつものように貴美に絡まれる。

 悠の雰囲気が更に貴美を興奮させてしまう。

 まさにドSホイホイだ。


 悠は百合華の座っている方向をチラ見する。


 ううっ……

 お姉ちゃん、めっちゃ睨んでる。

 誤解なのに、イチャイチャしてないのに。



 エッチしてから更にドロデレっぽくなった百合華は、自分だけの悠が他の女にベタベタ触られているのに我慢ならない。

 もう本当に監禁して一生可愛がりたいとさえ思ってしまうほどに。

 今日もアウト姉だ。


 もぉぉぉぉ~っ!

 ユウ君!

 何で若い子とイチャイチャしてるの!

 後でキッツいオシオキして躾けないと!

 そうだ、ユウ君の上に乗って反省するまで……

 後は、ユウ君の好きなお尻で……


 相変わらず百合華がアブノーマルなことを考えている。

 騎乗スキルをマスターした百合華は、ファンタジーの竜騎兵ドラグーンのように胸部装甲おっぱいアーマーで重武装し、滑腔式歩兵銃マスケット騎兵用小銃カービンを持ち、敵に突撃する無双の女騎士のような凛々しさだ。


 もちろん夜も、悠に騎乗して無双状態なのは言うまでもない。




 何人もの女子が悠をオシオキしたくてウズウズする中、飛行機は沖縄へと到着した。

 窓から見える雲の切れ間に綺麗な海が見えテンションが上がる。


 ポーン、ポーン!

「皆様、着陸態勢に入りました。シートベルトをお確かめください――」


 楽しみな修学旅行と、夜のオシオキへの期待を乗せたまま、飛行機は滑走路に着陸した。


 ――――――――




「来たぜ沖縄! 俺はやるぜ!」

 竹川のテンションが高い。


「おい、竹川。何をやるんだ?」

 悠が冷静に聞いてみた。

 だいたい予想はつくが。


「明石、分かりきってるだろ。修学旅行といえば、女子も開放的になる。そして修学旅行マジックに掛かった二人は恋に落ち……うううっ、今年こそ俺は彼女をつくる!」


 去年のクリパでも失敗した竹川は、今年最大のイベント修学旅行で彼女をゲットと意気込んでいるようだ。


「お、おう……頑張れよ」

「何だよ。テンション低いな」

「いや、だって中将さんたちが怖いし」

「ドSフレンズに調教されるなんて最高だろ。羨ましいぜっ!」

「うう……眩暈が」


 竹川……

 すっかりドMになっちまって……

 今年に入ってから何があったんだ……


関谷せきや、おまえも一緒にやろうぜ」

 ターゲットを関谷に変えて、竹川が話しかけた。


 関谷――

 あまり目立たない真面目な印象の男子だ。

 悠や竹川とは好きな漫画やラノベの話をたまにする関係だった。

 今回の修学旅行で同じ班になる。


「いや、ボクはやめておくよ。三次元はクソゲーだしな。やはり女は二次元だ」

 若くして既に達観したような発言をする関谷。


「ぐっ、こいつ賢者だな……いや、将来魔法使いか」

「お、おまえだって同じだろ」


「なんだろ……この陽キャと対極にいる感じ、落ち着くぜ」

 二人のやり取りを見た悠が呟いた。


「ちょっと、キミたち! ぼやっとしてないで整列して! 早くバスに乗らないと置いて行くわよ!」


 百合華先生の声が響く。

 飛行機の中で、離れた席から悠が女子とイチャつくのを見せられてご立腹気味だ。

 ちょっと怖い女教師バージョンになっている。


「は、はい、すみません」

「すぐ行きます」

「はい、お姉……先生」


 まるでアニメの超セクシーな女教師そのものな百合華に注意され、三人の男子が震えあがってしまう。


 突き出た巨乳とストレッチ素材のパンツスタイルの脚が超破壊力でたまらない。

 いつもはタイトスカートのスーツなのだが、今日は修学旅行ということもあってか、動きやすいパンツスタイルだった。体のラインが出まくっていて、プリッと上がった尻がセクシー過ぎる。



「ふぅ、相変わらず深淵の魔王だな」

 そう言う竹川も相変わらずだ。


「おい、俺の姉をエロい目で見るな!」


「ううっ……明石先生……最高にエロい」

 関谷が呟く。


「おい、三次元はクソゲーじゃなかったのかよ?」

「だから俺の姉をエロい目で見るな!」


 さっきと言っていることが違って、関谷が二人にツッコまれる。


「い、いや、明石先生は別というか……」


 完璧な二次オタまでも虜にする恐ろしい女。

 それが悠の姉だ。



 バスは観光地を周る。

 最初から分かっていたことなのだが、悠が同級生女子と楽しそうにしているのを、引率の教師として見守っているだけなのが、どんどん百合華の欲求不満を増幅させてしまう。

 悠とイチャイチャしたくてたまらないのだ。


 ――――――――




 ホテルに到着し、夕食を食べ終わると、班ごとに決められた入浴時間となった。

 百合華の説明を受け、それぞれが入浴の準備を始める。


「時間が限られているから、遅れると次の班の人達が遅くなるから気をつけるように」

「「はーい」」



 悠が風呂に入ろうとホテルの廊下を歩いていた。

 竹川達が先に行ったので、一人で大浴場入り口まできて男湯の暖簾のれんを見つめる。


「あれ? さっき前を通った時と男女逆だったような気がするけど? 気のせいかな」


 気にはなるが、そのまま入って行く。



 ドタドタドタ――

 悠が入ったその時……

 数人の生徒がふざけながら走って来て暖簾のれんを付け替える。


「やっべ、ふざけて男女入れ替えて戻してなかったわ。これで問題なし」

「おまえヤベぇって。バレたらどうすんだよ。ってか、誰か間違えて入ってないよな?」


 そのまま何事も無かったかのように去って行く。



 そして、何も知らない悠の方は――――

「え、ええ…………」


 大浴場に入ると、目の前に裸の貴美と真理亜と葵がいた。

 健康的でしなやかな体の貴美、出るとこが出たセクシーな真理亜、スレンダーで綺麗な印象の葵。

 クラスの人気女子三人の裸を同時に見てしまう。


 固まってしまった悠と女子は、呆然としたままお互いの大事なところを凝視してしまう。


 ああ……

 中将さん……いつも怖いのに、裸になると可愛く見えるのが不思議だ。

 夕霧さん……制服のままでも分かるけど、やっぱりエロい体だな。

 六条さん……スレンダーで胸が薄いところが、一部のマニアに大人気間違いなしだ。


 完全に混乱している悠は、三人の女子の体をガン見して分析してしまう。


「……えっと、いつまで見てんのよ! 悠!」

「う、うっわ、明石って意外と大胆だな」

「きゃ、きゃあぁ……あ、明石君の変態」


「う、う、うっわああああっ! ごめん! わざとじゃないんだ!」


 パニックになる悠。


「ちょっと、前隠しなさいよ!」

「明石って、意外とすげぇな」

「やだぁ! 見せないでよ!」


「確かに男子風呂だったはずなのに」


 慌てて悠が出て行こうとするが、更衣室の方から女子の声がする。

 時間帯で何班か同時に入浴するので、他の班の女子が入って来てしまったようだ。


「ああ……終わった」

 最悪だ……

 俺の人生終了なのか……

 明日の新聞に『修学旅行で男子生徒エチエチ行為。女子風呂を覗く』とか見出しに出てしまうのか……


「早く、こっちに来なさい!」

「えっ?」


 人生終了かと絶望したその時、貴美が悠の手を引っ張って奥の方に連れて行く。


「えっ、あの……?」

「早く来なさい。隠れるわよ」


 悠を角になっている部分の湯舟に入れると、自分の体を寄せて見えないようにした。


「真理亜、葵、一緒にお願い」

「お、おう」

「もうっ、何で私まで」


 三人の尻が悠の眼前に迫り、顔にケツが当たってしまう。

 緊急事態なのに学園のアイドル達のトリプル尻に挟まれて、ぎゅうぎゅうと尻サンドイッチで大興奮だ。

 人生において、女子三人にケツを顔に押し付けられる事態などありえないだろう。


「わっぷ、な、何で?」


「あんたが堂々と痴漢するわけないでしょ。どうせ間違えたんでしょ」

「へへっ、しゃーねぇな。助けてやんよ。後で埋め合わせしろよ」

「全く、明石君のエッチで変態!」


 何だかんだ言いながらも三人共助けてくれるようだ。


 ガラガラガラ――

 ゾロゾロと女子達が大浴場に入ってきた。


「あれ? 貴美なにやってるの?」


 グループの中に歩美がいて話しかけてくる。

 三人で隅に集まり体を寄せ合ってる姿を疑問に思っているようだ。


「何でもないわよ。アユ、先に髪でも洗ったら?」

「うん、そうだね」


 数人の女子がシャワーの方に向かう中、後から入って来た沙彩が何かに気付いたのか近寄ってくる。


「サーヤ、どうしたの?」

「…………?」


 三人の美少女に尻を顔に押し付けられ色々と絶体絶命な悠。

 皆にバレたら事案発生、ケツで限界突破しても事案発生、ドSフレンズの餌食になっても事案発生の、もはや逃げ場の無い引くも進むも地獄のシゴカレマスター間違いなし。


 果たして悠の運命は――――

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