第113話 同級生女子にオシオキされる南の島の夜

 間違えて女子風呂に入って大ピンチの悠。このままではポリスメンにタイホされ、明日の新聞の記事になってしまいそうだ。

 絶体絶命の中、何故か悠は同級生女子たちのケツに挟まれていた。



 何かを感じ取り貴美達に近付く沙彩。

 三人が身を寄せ合っている後ろに何か隠しているのを感じ取ってしまう。


「…………えっと?」

 不思議そうな顔で沙彩が見つめている。


 貴美と真理亜と葵が、悠を隠そうとして尻をギュウギュウと押し付けてくる。

 後ろの壁との間に挟まれて、まるで三連同時騎乗スキルのようだ。


 た、頼む……

 気付かないでくれ……

 と、いうか俺って……

 何で同級生女子たちのケツで顔踏まれてるんだ……


 非常事態でお互い分かっていないみたいだが、冷静に考えて三つの尻が顔に乗った状態というのは異常だ。


「えっと、サーヤ……」

「…………うん」


 昔から友人で何か通じるものがあったのか、沙彩は頷くと皆のいるシャワーの方に歩いて行く。


「皆、このシャンプーって沖縄限定ので、植物性ヒアルロン酸を使っていて髪がサラサラになるんだって」

 沙彩が大浴場に置いてあるシャンプーを指差して話しかける。


「ええ~っ、そうなの? 使ってみよっ」

「これ、沖縄限定なんだ?」

「私も私も」


 皆が一斉にシャンプーを使い始める。


「たっぷり泡立てて、髪と頭皮をじっくりマッサージするようにね」


 全員が泡泡になったところで、沙彩が貴美たちの方を振り向き目で合図する。


「今よ!」

 貴美の声で三人で悠を隠すように囲んで更衣室まで移動した。



 ガラガラガラ――


「た、助かった……」

「まだよ! 早く服を着て出なさいよ!」

「う、うん」


 貴美にせかされて急いで服を着ようとするが、春近は緊張でモタモタしてしまう。


「早く着ろって言ってんでしょ!」

「明石、おまえけっこう逞しいな……」

「お、大っき……ヤダぁ、見せないで!」


 モタモタしているスッポンポンの悠を、三人の女子がガン見してしまう。

 着替えを手伝おうとしてシャツを頭からかぶせる貴美だが、首に引っ掛かって目隠ししている内に下半身はがら空きだ。


 貴美は顔を赤くしてチラチラ見てしまい、真理亜は近くでじっくりガン見して、葵は手で顔を隠した指の隙間からジロジロ見てしまう。


「てか、あそこ隠しなさいよ! バカぁ!」


 パチィーン!

「痛ぁぁっ!」


 何か色々テンパってしまった貴美の平手が飛んだ。

 クリーンヒットだ。


「中将さん、何で叩くの」

「いいから、早く服着なさい!」


「おい、貴美……おまえ、けっこー大胆だな」

「た、貴美さんが、明石君の……」


 真理亜と葵が、ちょっと引き気味だ。



 ドタバタしながら服を着せて女子風呂から悠を叩き出す女子三人。


「うっわっ」


「あんたは早く男子風呂に行きなさい!」

「もう覗くなよ」

「明石君のエッチ変態ド変態!」


 怖い女子にボロカス言われているようだが、実際は助けてくれたのだから優しいところがあるようだ。



「はぁ……疲れた」

 貴美達が浴室に戻ると、沙彩が近付いてきた。


「何やってるの? 面白そう」

「面白くないわよ。大変だったんだから」

「後で聞かせてよね」

「うん、内緒にしてよね。でも助かったわ」



 一方、無事男子風呂に辿り着いた悠はといえば――


「はあ、はあ、た、助かった……」


「お、おい、明石……おまえ、何みなぎってんだよ」

 色々と元気いっぱいな悠に、竹川が話しかける。


「竹川……地獄の最下層コキュートスで、悪魔の獄卒少女達に尻で踏まれながら、あそこを叩かれる無間地獄といった感じだぜ……」


「何だそれ、最高のご褒美じゃねーか」

 最近Mに目覚めた竹川に羨ましがられてしまった。


 ――――――――




 今日の日程も終了し、後は寝るだけで部屋でまったりしている悠のところに、悪魔の獄卒少女達ドSフレンズが訪れる。


「悠、ちょっと部屋まで来なさい!」

 ニコニコした笑顔が怖い貴美が命令する。

 拒否はできない。


「分かってるよな。あたしらに借りがあるんだからよ」

 真理亜も楽しそうにニヤニヤしている。


「ド変態の明石君にはキツい御仕置きで反省してもらいます」

 美少女なだけに葵の怒った顔が凄い迫力だ。


「で、ですよね……やっぱりシゴかれる運命ですよね……」

 悠は『この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ』という言葉を思い出した。



「ぐっ、何で明石ばかり……俺も女子に連行されたいぜ」

「くそっ、二次元にしか興味ないボクが……この胸の高鳴りは何なのだ!」


 羨ましくて壊れ気味な竹川と関谷を残し、怖い女子に両脇をガッチリ掴まれたまま女子部屋に連行されてしまう。



 ガシャ!

 無情な音を立て女子部屋の扉が閉まる。

 中には更に二人のドS少女が待ち構え、五人の獄卒少女に完全包囲されてしまった。


「明石君、聞いたよ。女子風呂に突撃したんだって?」

 歩美が嬉しそうに聞いてくる。


「ふふっ、私達に調教されたくてオイタしちゃったんでしょ?」

 ゾクゾクする笑みを浮かべた沙彩が、遂に本領発揮しそうだ。


「ち、違うんだ! わざとじゃないから。本当に間違えただけで」


「わざとじゃないのは知ってるわよ。あんたは真面目なのが取り柄なんだから。それに、女子風呂に忍び込むような度胸無いでしょ」

 右腕を掴んでいる貴美が言った。


「じゃ、じゃあ……」


「そんなのはどっちでも良いわよ。それより、あんた私の裸見たでしょ」

「ギクッ!」

「裸を見たんだから極刑確定かな?」

「り、理不尽だぁ~」


「明石、諦めろって。あたしらは、おまえにエロいことしたいだけなんだからさ」

 完全にエッチな顔になった真理亜が告げる。


「真理亜さん! エロいことじゃないです! 悪い明石君に折檻せっかんです!」

 何だか葵までヤル気満々だ。

 姉のエッチなオシオキと違って、葵の御仕置きや折檻はリアルに痛いイメージで怖すぎる。


「ほらっ、そこに寝なさい!」


 ゴロンッ!

 貴美に押されてベッドの上に転がされる。


「ぼ、暴力やエッチは反対で!」

「エッチなことしたあんたには拒否権は無いわね」


 ギラギラとした嗜虐心溢れる瞳を輝かせて、今日も貴美は満面の笑顔だ。


「どうするの? いちゃう?」

 沙彩がエロ全開で悠を裸にしようとしている。

 普段は大人しそうな顔しているのに、実は一番エロいのかもしれない。


「い、いや、さすがにそれは……可哀想でしょ」

 貴美が引き気味で答える。

 普段は怖そうなのに、意外と根は優しい気がした。


「おっし、みんなで踏んじゃおうぜ」


 ドスンっ!

 真理亜が悠の上に乗っかった。

 お尻の圧と暖かさが伝わって、ムラムラと変な気持ちになってしまう。


「いいね!」

「あ、私も乗るぅ~」

「いいですね」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


「た、たたた、助けてぇ~っ!」


 ドス、ドス、ドスン、ドスンっ!

 次々に美少女たちの騎乗スキルを受け、まさかの五連同時騎乗スキル炸裂だ。


 ベッドに大の字に寝かせられ、腹の上に真理亜、右腕の上に沙彩、左腕の上に貴美、右足の上に歩美、左足の上に葵が乗り、全員のケツ圧をカラダ全体に受けてしまう。

 全員露出の多い部屋着や浴衣を着ていて、直に女子特有の柔らかな感触と良い匂いが容赦なく押し寄せ、オシオキどころか完全にご褒美だ。


「ちょっと待て! これ動けないから!」


「ふふっ、良い眺めね。私達に踏まれて反省なさい」

 上から貴美が見下ろす。


「ほれほれぇ、嬉しいだろ?」


 ぐりぐりぐりぐり――

 真理亜が腰を前後に揺すって尻を押し付ける。


「ぐわぁ……」


 マズい……

 お姉ちゃん以外の女で限界突破するわけにはいなかい!

 耐えろ! 耐えるんだ!

 そうだ、素数を数えれば!

 …………し、しまった、出てこない!


「ねぇ、足で踏んであげようか?」

 沙彩がとんでもないことを言い出す。


「えいっ」


 ぴとっ――

 可愛い声を出したかと思えば、片足を上げてそのまま悠の顔の上に置いた。


「どうかな?」

「んんんっ…………」


 まさかの行動に、貴美が少しピクピクしながら注意する。


「サーヤ、さすがにそれはヒドくない?」

「えっ、そうかな? 男子って、こうされると喜ぶんでしょ」

「それ、ドコ情報?」

「ネットで……」


 悠の顔に足が乗ったまま二人が会話するシュールな光景だ。


「えっと……サーヤがいつも何のサイト見てるかだいたい理解したわ」

 人の趣味なので尊重したいが、沙彩の彼氏になる男は大変そうだと貴美は思った。


「……ぷはっ! ってか、いつまで足乗せてんの!」

「あっ、ごめん」


 素直に足をどけてくれた。

 容赦ないようでいて、意外と頼めば聞いてくれそうだ。


「こうして男の人を尻に敷いていると、何だかドキドキしてきますね」

 葵がアブノーマルな道に進みそうなことを言っている。


「ちょっと! 六条さんに変な知識を植え付けないでっ! 何でも徹底的にやりそうで怖いんだから」


 悠が抜け出そうとジタバタする。

 女王様になった時、一番エグい攻めをしそうなのは葵な気がする。

 普段はお嬢様のように可憐な見た目なのに、非常に面倒くさくてしつこい性格な気がするのだ。


「明石君、して欲しいコトがあったら言ってよ。何でもしちゃうよ」

 歩美が積極的になっている。

 一対一では恥ずかしくてできないことでも、皆と一緒ならエッチなこともしてしまいそうだ。


「待て待て! もう帰るから!」


 マズい!

 非情にマズい!

 そろそろ教師が見回りに来そうな気がする。

 こんなのお姉ちゃんに見られたら本当に磔獄門はりつけごくもんにされそうだ……


 他の女と話しているだけで凄いヤキモチを焼く嫉妬深い百合華なのだ。

 五人の女子とエッチに密着しているシーンを目撃されたら、本当にブチギレて何をされるか分からない。


「良いじゃない。もう少しだけ、ゆっくりしていきなさいよ」

 ちょっと興奮して妖しい表情の貴美にギュギュっと尻で押さえられる。



 そして、悠の心配は現実の脅威になりつつあった。

 修学旅行の夜の定番イベントである、異性の部屋に行って騒ぐ生徒を指導する為に、百合華が部屋のチェックに回っていた。


 ツカッ、ツカッ、ツカッ――

 少し厳しめな表情の女教師百合華が廊下を歩く。

 小娘の女王風の遊びと違って、本物の風格を持つ魔王の如き女王然とした女性だ。

 不純異性交遊な生徒には、支配者級悪魔アークデーモンの威圧感で厳しい指導が待っている。


「全く……末摘先生の言った通りに、生徒がなかなか寝てくれないのよね。修学旅行でテンション上がってるのは分かるけど」

 百合華が呟く。


 悠とイチャイチャできずに欲求不満が溜まる百合華。

 近付く姉も知らず女子達にオシオキされるシゴカレマスター悠。

 またしても悠に絶体絶命な危機が迫っていた。

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