第111話 姉ちゃんと秘密の個別授業

「ユウ君、早くっ!」

「ちょっと待って」

「もぉ待てないよぉ~」

「ダメっ、ダメだって!」


 ぐりんっぐりんっぐりんっ――

 百合華の大きく柔らかい二つの膨らみが激しく動く。


「あああぁんっ……もう限界かも」

「お、お姉ちゃん……俺の方が限界だよ」


 ぐりんっぐりんっぐりんっ――


「あんっ、あああああっ……」

「ぐっ、うううっ……」


 夏休みも終わり新学期が始まる。

 待望の修学旅行も近づく仲秋の候。

 まだまだ残暑が続き蒸し暑い夜に、悠の部屋ではラブラブの姉弟が激しく密着し、熱い吐息でぐりんぐりんしていた。


 外の気温よりも熱々な、二人の吐息とお下品な音が響き、途轍もないエロティックな雰囲気を醸し出してしまう。


「と、解けた! 全問終了」

「やったね、ユウ君!」


 悠が問題集を百合華に差し出す。


「たぶん大丈夫だと思うけど」


 ペラペラペラ――――

「うん、これなら中間試験も問題無いかな」


 百合華が回答をチェックする。

 オシオキ式スパルタ勉強法により、悠の試験勉強は捗っていた。


 知らない人が声だけ聞いたら誤解してしまいそうなのだが、二人は如何わしいことをしていたわけではない。

 試験勉強をしていただけなのだ。

 いや、エチエチなのには変わりはないのだが。


「じゃあユウ君、次の問題集ね」

「ええっ……まだやるのコレ?」

「ふふふぅ~ん、やめて良いんだぁ~」

「うっ、や、やめないで……」

「もぉ~ユウ君ってば可愛いんだからぁ」


 テーブルの前に座り問題集を解く悠の後ろから、百合華が抱きつき巨乳を押し当てる。

 そのまま両手を前に回してギュッと抱きしめていた。


 問題を解き進めれば巨乳がぐりんぐりんと背中に押し当てられ、解けなければ離されてしまう。

 大好きな姉のパイ圧を感じたければドンドン問題を解くしかないのである。

 そして、全問終了すると、百合華の綺麗な指が下へ降りてくるご褒美付きだ。


 リビドーと直結させる事で恐るべき学習向上効果を発揮する。

 百合華先生のエチエチ学習法だった。

 学会に発表したら受賞間違いなしだろう。


 と、そんなアホな説明はどうでも良いのだが、今日も今日とて二人はラブラブだった。


「はああぁ……ユウ君……ぺろぺろ」

「うううっ、これ生殺し状態なんだけど……」


 後ろから百合華に首筋をペロペロされ、どうにもたまらない感じになってしまう悠だった。

 そんなこんなで明石家の夜は更けてゆく。


 ――――――――




 中間試験の結果は、当然のように軽くクリアしていた。

 百合華先生のエッチな個別授業を受ければ誰でも成績アップ間違いなしだ。

 ただ、この秘密の個別授業は悠しか受けることができないのだが。



 テストの結果で一喜一憂する生徒に向かって、担任の百合華が声をかける。


「はい、では赤点の人は追試を受けるように。そして、来週は修学旅行ですから、直前で風邪をひいたりしないよう気をつけて生活してください。以上です」


 帰りのホームルームを終え百合華が教室を出て行く。

 一斉に生徒達がテスト結果で盛り上がる。


「あああ~あ! 赤点が……」

 真理亜が天を仰ぐ。


「ふふっ、追試頑張りなさいよ」

 貴美が笑顔で慰める。

 ちょっと楽しそうだ。


「悠、あんたは相変わらず調子いいのね。やっぱり身内が教師だと勉強見てもらえて良いわね」

「まあ、そこは助かってるよ」


 貴美にツッコまれてドキリとする。

 勉強は見てもらっているのだが、エッチしまくっていると知られたらマズい。


 今や自宅は百合華との自主規制プロレスごっこによるマーキングで、エッチしてない場所は無いくらいだから。

 ドスケベ姉により玄関でも廊下でも浴室でもベランダでも、至る所でエッチなプロレスごっこで大変なのだ。


 俺、こんなに幸せで大丈夫なのかな……?

 あまり浮かれていると足元をすくわれそうで怖いぜ。

 というか、やっぱりお姉ちゃんが性欲強すぎる……


 二人でラブラブ旅行に行った時のことを思い出す。

 百合華がドスケベ過ぎて、結婚する人は夜が大変なのだ。

 いや、一日十回とか言っているくらいだから、本気を出されたら夜といわず朝も昼も大変かもしれない。



「ちょっと、悠! なに神妙そうな顔してんのよ」


 姉とのエッチを想像して腰の辺りがゾクゾク震えていた悠に、貴美が目を輝かせて話しかけた。


「い、いや、何でもないって」

「ふふっ、修学旅行が楽しみね」


 相変わらずギラギラした瞳で見つめられる。

 ドMな男からしたら超ご褒美なのだが、長い付き合いの悠でもちょっと怖いのだ。


「あんた最近ちょっと生意気だから、修学旅行の夜にキツく躾けちゃいたいのよね」


 そう、この強気な印象の娘。

 貴美はドSだった。

 前に悠が怖そうな姉からキツいオシオキや躾けを受けていると聞いた時から、自分の内に秘めたドロドロとした欲望が芽生えてしまっていたのだ。

 毎夜、鎌首をもたげるように沸き上がる感情に、激しく身を焦がしながら押さえ込むように。


 ※もう知ってます。


「こ、怖っ! 中将さん怖すぎる!」

「ふふっ……沖縄の夜は楽しくなりそうね」

「助けて、誰かぁぁ~っ!」


 同じ班になった竹川に助けを求めるが、彼もドMマジックに掛けられたのか、何かを想像して頷くだけだった。


「くっ、竹川までおかしくなっちまった……」

「うん……魔王もドS将軍も良いな!」


「おい、竹川! 誰がドS将軍よ?」

 自分のことをイジられたと感じた貴美にすごまれる。


 ゾクゾクゾク!

「やっぱりクセになるぜ」


「ダメだ……こいつ手遅れだ」


 癒しのソフィアちゃん推しだった男が、魔王やドSフレンズの魅力にやられ、道を踏み外しそうな今日この頃だった。


 因みに修学旅行の行先は沖縄で、班決めは悠と竹川と関谷という男、女子は貴美と真理亜と葵だった。

 去年の林間学校では、一部の班がハーレムになってしまい問題となり、修学旅行では男女比にルールが作られたのだ。


 歩美や沙彩が班に入ろうとした時、葵がガチ泣きしそうになり譲る事となる。

 ちょっと面倒くさいが、何だか憎めない葵だった。



「修学旅行の前に補習だよ。もし追試が不合格だったらどうなんだよ?」

 真理亜は追試で頭がいっぱいのようだ。


「そりゃ、お留守番じゃない?」

「そんなん納得できるか!」


 貴美の冗談で更に熱くなる。


「え、えっと……もし宜しければ……私が勉強を教えて差し上げても……私の家で……チラッ、チラッ」

 葵がさり気なく言っているようでバレバレな感じで真理亜を誘う。


「えっ、良いの? 助かるぜぇ~」

「ええ、もちろん大歓迎です」


 真理亜に抱きつかれて百合展開っぽく頬を染める葵。

 葵が嬉しそうで何よりだ。


 ――――――――




 悠が帰宅しようとしたところに百合華が声をかけた。

 ちょうど上履きから靴に履き替えたところだ。


「明石君、今日は先生の仕事が早く上がったから一緒に帰るわよ」

「えっ、でも……」

「買い物があるから付き合って欲しいの」

「うん、分かった」


 いつもは別々に帰っているのだが、今日は仲良く一緒に帰ることになった。

 学園を出て街のスーパーへと向かう。



「えへへっ、ユウ君と一緒にお買い物~嬉しいなっ」

 スーパーに入る頃には女教師から姉の顔になっていた。


「こうして一緒にお買い物していると新婚さんみたいだね」

「お姉ちゃん、あんまりはしゃぐと誰かに見られたら困るよ」

「う、うん、そだねっ」


 そんな会話をしながらも、やっぱり新婚さんみたいな気分になってしまう二人。

 自然に腕を組んで恋人のようになってしまう。

 まるで制服デートのような、同級生の百合華ちゃんプレイのような、禁断で背徳的な気持ちが昂ったまま。


「う~ん、今夜はお肉にしようかお魚にしようか? それともお姉ちゃんを食べる?」

「いやいやいや、何だよその三択は」


 オヤクソクな新婚ジョークをかましながら買い物をする二人。

 幸せに包まれ何も問題は無いように思えた。


 パシャ!


 その音は、もちろん二人には届かない。

 後に大きな嵐となって押し寄せることになるのだが。

 まだ、二人は何も知らず幸せな新婚さんプレイのような生活を続けている。




 買い物を終え家路を急ぐ二人。


 ガチャ!

 玄関のドアを閉めると、一気に悠の彼女兼嫁へと変貌した百合華が強烈なキスをお見舞いする。


「ちゅっ、んんっ、んうふん~んユウ君、ちゅぱっ、ふぁいしゅき~大好き

「んんんっ、は、激しっ、ぷはっ」



 キスをして抱き合ったまま移動する。

 キッチンで冷蔵庫に食材を入れながらも、イチャイチャは止まらない。


「沖縄楽しみだね」

「もぉ、ユウ君はまた女子とイチャイチャするんでしょ」

「し、しないから」

「ふ~んだっ、後でオシオキするから」

「毎日してるくせに……」


 何かにつけてオシオキしたがる困った姉だ。


「卒業したら、また二人で行けば良いじゃん」

「良いね! ユウ君と一緒に旅行したい」

「色々行きたいね」

「ユウ君と一緒なら何処でも楽しみぃ~」



 後に訪れる嵐も知らずイチャイチャな二人。

 しかし誰もが誤解していた。

 恋愛とは、嵐や障害が多いほど燃え上がるのだと。


 禁断の関係であるからこそ、嵐や障害が多いからこそ、人は燃えるような愛に突き進むのだ。

 全てを乗り越えぶち破り、絶対に幸せになる為に。

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