第108話 誰もが憧れ恋焦がれる百合華先生は悠のもの?

 放課後の体育倉庫に閉じ込められてしまう二人。

 教師と生徒、しかも姉と弟、こんな場所に一晩いて、あらぬ誤解を招いてしまったら不味い。

 まさにオヤクソク展開のような状況だ。



「ちょっと、お姉ちゃん! 冗談はやめてよ」


 ガタガタガタ!

 悠が扉を開けようとするが、全く動かない。


「本当に開かない……」

「鍵は私が持ってるのに、何で閉まっちゃったんだろ?」


 鍵を見つめる百合華。

 外から誤って施錠されたとは考え難い。


「そうだ、電話で助けを……って、しまった! スマホは教室のカバンの中だった。お姉ちゃん、スマホは?」


「私も職員室に……」


 二人共スマホがなくて途方に暮れる。


「どどど、どうしよう! こんな場所に閉じ込められたら、お姉ちゃんが色々限界に」

 自分のことより姉のことを心配する悠。


「私が限界ってなによぉ」

「また大っきなウ〇〇が――ぐわっ、痛い、痛いって」


 百合華が悠の下半身に抱きついてギュウギュウと絞め込む。

 あそこが絞められて大変だ。


「ユウ君! いつまでそのネタ続けるの? お姉ちゃん、本気で怒っちゃうよ。あと大っきくないから!」


「ギブギブ! もう言わないから」


 緊急事態なのにイチャイチャして、時間と共にどんどん日が暮れてくる。

 のんびり冗談でふざけている暇は無いのだ。


「ねえ、ユウ君……」

「えっ?」

「する…………?」

「しないから!」


 悠に抱きついたまま、色っぽい顔になった百合華がおねだりする。

 ちょっとスイッチが入っているようで危険極まりない。


「だってぇ~この状況って、いつも家でやってる『同級生ごっこ』だよね。こういうのやってみたかったかも」


「お姉ちゃん! いつもは頭良いのに、何でたまにおバカのなるの」


「バカじゃないもん。エッチなだけだもん」

 エッチなのは認めてしまう百合華。


「ううっ、エッチな姉が発情する前に脱出せねば」

「ひどぃよぉ~」


 ガタガタガタ、ガタガタガタ!

 少し動くようなのだが、何かが引っ掛かっているようで扉は開かない。



「何か……この部屋って暑いね」


 百合華がスーツを脱ぐ。

 白いブラウスが汗で肌にピッタリ張り付いて、下着の柄がスケスケだ。

 ムチッと膨らんだ胸の形がクッキリと分かってしまう。


 悠の視線が百合華の胸から離れない。


 待て待て待て待て!

 すっごい見えてるんだけど……

 エロ過ぎる!

 くそっ、姉が発情するとか言っておきながら、俺が発情しそうだぜ……


 チラッ!


 うっわっ……

 やっぱり凄いエロい。

 汗でジトっと肌に張り付いたシャツと、スケスケの下着の柄と、カラダのラインがクッキリ出た感じの、全てのコラボが最高過ぎる!


 こ、こ、これが魅惑の汗濡れエロスか!

 全国の汗濡れフェチの皆!

 今日から俺は汗濡れフェチになります!


 百合華のせいで、悠に新たなフェチが増えてしまった。

 これまで散々義理の弟に属性付与してしまった百合華だが、まだまだ新たな属性を追加させてしまう罪な女である。


 な、悩ましい……

 姉がエロ過ぎて悩ましい……

 あの白くて綺麗な首筋を伝う汗をペロペロしたい。



 悠がジロジロとガン見してしまい、百合華も視線を感じてしまう。


 ユウ君……

 見てる……

 すっごい見てる……

 やだ、汗でブラが透けちゃってる。

 恥ずかしい……

 いつもは家で下着姿で歩いているのに……

 汗でビチャビチャだと思うと凄く恥ずかしい……


 チラッ!


 ああっん……

 やっぱり見られてる。

 ユウ君とくっつきたいけど、汗臭いとか思われたらどうしよう……



「お姉ちゃん、大丈夫?」

 悠が百合華に近付く。


「う、うん、だ、ダイジョブだよ」

 緊張で若干カタコトになって答える百合華。


 ぴとっ――


 完全に百合華のフェロモンで悩殺された悠が、百合華の肩を抱く。

 汗で濡れた事で百合華のフェロモンが更に強くなり、悠が催淫されてしまったようだ。


「ゆ、ユウ君……えっ、ええっ」


 ゆゆゆゆゆ、ユウ君……

 何でくっついてるの……

 ダメぇ~

 臭い嗅がれちゃう!


 いつも仕事帰りに蒸れたタイツの臭いを嗅がせている百合華なのに、今日に限っては恥ずかしさでおかしくなりそうだ。

 汗でビチョビチョという効果により、普段より数段羞恥心が増幅されてしまうのかもしれない。


「ユウ君……ダメっ、汗が凄いから」

「お姉ちゃん、良い匂いだよ」

「あんっ、嗅いじゃダメぇぇ~」


 首筋や胸元に顔を寄せて『くんかくんか』してしまう悠。

 大好きな姉の匂いは、どんな香水よりも良い香りだ。


 百合華の腕を上げて、腋にも顔を近づける。


「そ、そこはダメぇぇぇぇ~」

 カラダがビクビクと震えて、くんかくんかだけで百合華が陥落させられそうになってしまう。


 ペロッ――

 首筋に流れる汗の一滴を舐めとる。


「んんっ、んあああっ……」

「お姉ちゃん、美味しい」

「ダメダメぇ~」


 ペロッ――

 ペロッ――

 ペロッ――

 つつぅ~っ、ペロペロペロ――


 興奮すればするほど汗が出てしまい、流れる汗を悠が必死に舐めとってしまう。


「ダメぇ~汚いからぁ」

「お姉ちゃんの体に汚いところなんかないよ」


 またしても悠の攻撃で堕とされまくり、学園内の体育倉庫という禁断の場所で不覚にも陥落寸前の百合華。

 無敵の女王が崩壊し、完全に悠のエッチ奴隷になって絶対服従しそうになってしまう。


 その時、突然校内放送が入り、二人の禁忌的アブノーマルプレイが中断された。


『明石先生、明石先生、至急職員室までお越しください』


「んんんんんん~~~~っ」

 ビクッビクッビクッ――


「あれ? 放送が入ったよ」

 夢中でペロペロしていた悠が我に返る。


 姉が陥落寸前なのも、悠に絶対服従したくなっていたのにも気付かず、悠は周囲を見回し脱出の方法を考えた。


「あっ、あそこから出られれば?」


 見上げると、壁の高い位置に小窓があった。

 そこから外に出られそうだ。


「お姉ちゃん、ちょっと待っててね。あそこから出て、外から開けてみるよ」


 そう言うと、倉庫内の机を窓の下に移動させる。

 上によじ登って窓を開けると簡単に脱出は成功した。



 ガラガラガラガラ――――


「良かった。開いたよ」

 外から悠が扉を開けた。


「竹ぼうきの柄の部分が扉のレールの上に落ちてたよ。たぶん、立て掛けてあった柄が扉を閉めた時に倒れて、つっかえ棒みたいになって開かなくなってたのかも?」


 悠が説明するが、百合華は虚ろな目をしたまま呆けている。


「お姉ちゃん……?」


 徐々に目の焦点が合うような感じになり、急に復活して怒り出す。

「ユウ君! もぉ、何なの! また負けちゃったぁ~姉の威厳がボロボロだよぉ~」


「え、ええ……」


「もぉぉぉぉ~帰ったら超キツいオシオキですからね!」


 泣きそうな顔でプリプリ怒りながら倉庫を出て職員室に向かう。

 その後ろ姿を見ながら、恐怖と期待で今夜のオシオキを想像してしまう悠だった。


 ――――――――




 ガラガラ――

 職員室に百合華が戻る。


「あっ、明石先生、心配したんですよ。備品チェックに行ったきり帰ってこないので……」


 同僚の男性教師が声をかける。

 どうやら心配して校内放送を入れたようだ。


「ちょっと体育倉庫の扉が建付けが悪くて、開けるのに苦労したんです」


「そ、そうです……か……」


 声をかけた同僚が途中で固まってしまう。


 それもそのはず。

 汗ビッショリになった百合華が、肌に張り付いたブラウスから下着の柄を透けさせて、ムチムチに張り出た巨乳を更に際立たせている。

 髪がしんなりと濡れ額に垂れ下がって、此の世の者とは思えないほどの色気を出しまくっていた。


 全身から『もわぁぁ~っ』と湯気が立ち上がりそうになり、上気した顔は長いまつ毛の大きな目が蕩けたような表情をし、セクシーなくちびるは甘い吐息をしているようだ。

 まさに、そういう・・・・行為をした後みたいである。


 サッ!

 男達の視線に気付いた百合華が胸を隠す。


「何か?」

 ちょっとキツめの表情で男達を睨む。


「あ、いえ……失礼しました」

 胸をガン見していた男達が一斉に視線を逸らした。


「今日は汗になったので、これで失礼しますね」

「「お、お疲れ様です」」


 カツカツカツ――――



 百合華が荷物を纏めて職員室を出て行くと、残された同僚達が目配せして噂し出した。


「お、おい、あれ?」

「ああ……たまらんな……」

「相変わらず凄い色気だな」

「汗で濡れて更に破壊力が……」

「ああ、舐めてぇ……舐めまくりてぇ」

「変態か」

「変態でも良い。明石先生を舐められるのなら」

「ど、同感だ」


 こそこそ話している男達の声が近くの席の花子にも聞こえてしまう。


「師匠……やはり魔神の刻印というアニメの淫魔女王サキュバスロード


 実は花子も百合華の胸をガン見していた。

 百合華のフェロモンは同性さえも惑わしてしまう。




 家路を急ぐ百合華。

 風に当たり透けた服は元に戻ったが、汗をかいた後でフェロモンが増強され、すれ違う人を自動攻撃オートスキルで魅了と催淫してしまう。

 まさに、竹川や花子の想像通り魔王や淫魔女王だ。


 同僚の男達は知らない。

 憧れの百合華女王が、一人の男にペロペロされまくっていることを。

 どれだけ焦がれても舐めるどころか触れることさえ不可能な永遠の夢である氷の女王は、身も心も完全に悠のものなのだ。


 毎日のようにイチャイチャでエチエチでヘンタイなことをしまくって、とても人には見せられない蕩け顔を悠にだけ晒しているのだと。

 悠が望むのなら、とんでもなく恥ずかしい行為でさえしてしまいそうなほど、愛の牢獄に堕とされまくっているのだと。



 見えてきた自宅に入ろうとする百合華が、心の中で呟いだ。


 今日という今日は許さないから。

 ユウ君、覚悟してよね。

 姉の威厳を取り戻す為に……

 弟を絶対服従させる為に……

 もぉ~徹底的に調教しちゃうんだからぁ~


 実は最近、負けて堕とされまくっている百合華なのだ。

 つまり、そういうことだ。

 今日こそリベンジを誓って、玄関のドアを開けるのだった。

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