第104話 恋人になった日

 静寂に包まれた部屋の中で二人。

 お互いの心臓の音だけを感じて抱き合っている。


「お姉ちゃん……」

「うん、いいよ……」


 百合華が目を閉じ少しだけ口を開く。


「ちゅっ……んっ」

 大好きな姉に優しいキスをする。


 パジャマを脱がせブラを外そうと手を姉の背中に回す。

 自然と二つの膨らみに顔を埋める形になった。


 ファサッ――

 ブラを外しても、まるで重力に逆らうように形の良い胸が、ツンと上を向き美しい形を維持している。

 まるで奇跡のようなおっぱいだ。


「お姉ちゃん……好きだ、大好きだ。出会った時からずっと。この六年間、俺がどんな気持ちでいたかなんて、お姉ちゃんは知らないんだよね。本当なら、もっと早く欲しかった。もっと早く自分だけのものにしたかった。もっと早く全て奪いたかった。でも……大切だから……一番大事だから、ずっと我慢したんだよ」


 悠が思いの丈を打ち明ける。

 恋い慕う全てを。

 言葉では伝えきれないような大好きな気持ちを。


「ユウ君……嬉しい……私も大好きだよ」

「お姉ちゃん!」

「私の初めて……ユウ君にあげるね」


 ガバッ!

 まるで吸い込まれるかのように、百合華のカラダに抱きついた。

 溶け合ってしまうのではないかと思うほどに。


「んあぁんっ……」


 百合華は、自分が年上だからリードしようとしていたことも、ネットでエッチを勉強しまくって覚えたことも、その他もろもろのことも、全て忘れて真っ白になってしまった。


 ああああっん…………

 ユウ君が……

 ユウ君の手が、私のカラダに……

 嬉し過ぎる……

 大好き過ぎる……

 もう、こっからどうするのか忘れちゃったよぉ~


「お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん――」

「んんっ、そ、そうだ……これ」


 百合華が棚に手を伸ばし、0.01ミリ的な製品を渡す。


「う、うん」

 そうだ。

 お姉ちゃんの立場を守らないと。

 俺は、お姉ちゃんを守ると決めたんだ。


 アイテム装備は必須である。


「じゃあ、お姉ちゃん……行くよ」


 真っ赤な顔で目を閉じてモジモジしている百合華を見つめる。

 いつものサキュバスのようなエロくて横暴でオシオキ魔な姉ではなく、少し震えているような可愛い女子だ。


 お姉ちゃん――――

 お姉ちゃん――――

 お姉ちゃん――――

 大好きなお姉ちゃん――――


 あれっ?

 どうするんだっけ……

 頭がクラクラして……

 ダメだ、興奮し過ぎて……


 焦れば焦るほど更に慌ててしまう。

 限界突破しそうな体と慌てふためく頭が、完全にパニック状態だ。


 悠の〇〇〇が百合華の〇〇〇に〇〇した時、不意に限界を迎えてしまった。


 チュドォォォォォォォォーン!


 あああ……あぁ――――


「ああっ、ごめん……」

 泣きそうな顔で謝る悠。


 ダメだ……

 失敗しちゃうなんて……

 恥ずかしいやら情けないやらで泣きそう……



 ぎゅゅゅゅ~っ――


 悠が消えてしまいたい気持ちになった時、全てを許すような優しさで百合華が抱きしめてくれた。


「ユウ君、大丈夫だよ」

「お、お姉ちゃん……」

「初めてなんだから良いんだよ」

「うん……」

「ゆっくり二人でやっていこっ」

「うん」


 慈愛に満ちた瞳で微笑むと、優しくおでこにキスをされる。

「ちゅっ……ユウ君、大好きだよ」


「お姉ちゃん!」


 ああっ……

 お姉ちゃんが初めてで良かった……

 お姉ちゃんが好きな人で良かった……

 お姉ちゃんと姉弟になれて良かった……

 お姉ちゃんと恋人になれて良かった……


 ちょっとエッチだけど、優しくて包容力があって可愛い、俺のお姉ちゃん――――


 二人は、まるで昔に戻ったかのように、純粋な気持ちで通じ合う。

 ずっとこのまま抱き合ったままでいたい気持ちで。



 キュン、キュン――――


 さっきまで頭真っ白になっていた百合華が、悠の可愛い失敗で胸がキュンキュンしまくる。

 逆に母性本能や姉性本能をくすぐられ、好き好き大好き弟君で食べちゃいたいくらいになってしまった。


 ガサガサ――

 体を入れ替えて百合華が上になる。


「へっ?」

「ふふっ……ユウ君、いっただきまぁ~す」


 ドスケベ姉本領発揮で、超絶テクでグイグイ追い込まれてしまう。

 もはや逃げ場のない悠が、翻弄されまくって攻められまくる。

 それは、童貞ピュアボーイには過激すぎる内容で。


「ぐあぁぁぁぁ~っ! ら、らめぇぇぇぇ~っ!」


 ――――――――

 ――――――

 ――――




 チュンチュンチュン――――


 窓の外で小鳥がさえずっている。

 柔らかな光が差し込み、最愛の姉に抱きつかれたまま目が覚めて幸せが込み上げてくる。


 昔あった朝チュウ展開ではなく、本当の朝チュン展開だ。


「俺は……お姉ちゃんと……」

 悠が呟く。


「や、やったぁ! 俺とお姉ちゃんは本当に恋人同士になれたんだ」


 喜びと同時に不安がよぎる。

 途中から最強淫魔女王サキュバスロード面目躍如めんもくやくじょのようなエロさでハッスルした姉を恐ろしくも思う。


「俺……大丈夫なのかな? お姉ちゃん……凄くエロかったし……」


 悠の胸に抱きついて眠っていた百合華が目を覚ます。


「ん、んんぅ~ん……朝ぁ……」

「お姉ちゃん、おはよ」

「おはよぉ~ユウくぅ~ん……むにゃむにゃ」


 ただでさえ魅惑的な百合華に抱きつかれてスリスリされる。

 あんなに激しい一夜を過ごしたはずなのに、再び色々と元気になってしまう。


「ふへぇ……ユウ君、エッチしよっ!」

「は? はぁぁぁぁ?」


 ニマニマとエッチな顔で迫るドスケベ姉。


「ちょっと待って……夜、あんなに……」

「ぜんぜん足りないよぉ~」

「うっわぁぁぁぁ~」


 ――――――――




 悠は知った。

 姉の本当の恐ろしさを。



「は、早く! 遅刻しちゃうよ」

「ああぁん、ユウ君待ってぇ」


 急いで支度をする二人。

 朝からお楽しみ過ぎて遅刻ギリギリになってしまう。

 すっごいことになったまま学園に行くわけにもいかず、シャワーを浴びたり朝からドタバタしっぱなしだ。


「てか、お姉ちゃん……初めてなのに凄い……」

「ちょっとあそこが……」

「だから激し過ぎだって!」

「でもでもぉ~」


 百合華の大きな尻に悠の必殺技が飛ぶ。


 ペチペチペチ!


「ちょっ、ちょっと、ユウ君! お尻叩かないでぇ!」

「丸くて叩きやすいケツのお姉ちゃんが悪いんだよ」

「もおぉぉぉぉ~っ!」


 朝からイチャイチャしまくりで、これでは姉が出勤できない。


「お姉ちゃん、学園内では立場を弁えてよ」

「もぉムリかも……」

「ちょっとは我慢してよ!」

「ふふっ……ユウ君が悪いんだよぉ~もう我慢できないかも」

「だ、ダメだから!」


 何とか支度を終え、ギリギリで遅刻にならなかった。


 ――――――――




 教室に入り席に座ると、一気に腰の辺りに疲れが出る。


 ううっ……

 す、凄かった……

 遂に、しちゃったんだ……

 お姉ちゃんは俺の彼女なんだ。

 もう誰にも渡さない。

 俺だけの百合華ちゃんなんだ。


 席でニヘラニヘラしていると、竹川が話しかけてきた。


「お、おい……明石、おまえ……」

「ん? 何だ竹川」

「おおお、おまえ! 遂にドーテー卒業したのか!?」

「は? はぁぁぁぁ!?」


 ま、待て!

 何でバレた?

 誰にも言ってないのに……


「その髪型だよ! ツーブロックはリア充で陽キャの始まりなんだよ!」

「は?」

「しかも少し染めてるし」

「いや、それは……」


 あのスキルや呪文みたいな髪型って、やっぱりリア充の髪型なのか。


 ※誤解です。


「くぅ~っ、羨ましいぜ」

「いや、これは……」


 悠が弁解しようとしていると、横から貴美がいつものように絡んでくる。


「ちょっと、悠! 昨日せっかくカッコよくしたのに、もうボサボサじゃないの!」


 美容院に行った後はセットされ決まっていたのに、今朝はシャワー浴びてそのままのボサボサ髪だ。

 髪型は変わっても、ワックスでセットするとか面倒くさかった。


「竹川、美容院に行ったら、変なスキルを受けてこの髪型になったんだよ」

「なるほど……そういうことか」


「あんた達って……」

 悠と竹川の変な会話に付いて行けない貴美だった。



 ガラガラガラ――――

「はい、ホームルームを始めます」


 教室の扉を開け百合華先生が入ってきた。

 今日も美しく魅惑的で、男子だけでなく女子の視線を集めて離さない。

 パツパツに膨らんだ胸も、キュッとくびれた腰からプリッと丸い尻も、ムチムチの太ももも、いつもと同じようにセクシーだ。


 でも、悠にだけ分かる変化があった。

 あの胸も、あの尻も、百合華の全ては、悠によって愛の刻印を刻まれ、身も心も悠専用にされてしまったのだ。

 同じく悠も、百合華により深く深く愛の刻印を刻まれ、もう百合華以外の女に触れることされ許されないような、愛の監獄に閉じ込められてしまう。


 ふと百合華が視線を動かした時、目が合って少しだけ笑った気がした。

 腰の奥にゾクゾクっと甘く恐ろしい疼きが走る。


 悠は気付いていなかった。

 天使で悪魔な地上最強の姉の、真のエチエチ封印を解いてしまったのだと。

 これまでの比ではないくらい甘く恐ろしい、エチエチな愛の暮らしが待っているのだと。

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