第88話 迫りくる〇〇〇に限界なお姉ちゃん
「もうムリぃぃぃぃ~っ!」
真っ赤な顔の百合華が、お腹を押さえながら叫ぶ。
いつもとは別の意味で限界突破しそうだ。
少しでも気が緩んだら、大好きな悠の前で最悪の醜態をさらしてしまう。それだけは、どうしても避けたかった。
「どどど、どうしよう! そ、そうだ、トイレに」
「ダメ……ユウ君に……見られたくない……」
「でも……」
限界突破寸前に悠は決意する。
お姉ちゃんが……
でも、選択肢は一つだけなんだ。
ここで漏らすよりはトイレの方が……
迷ってる場合じゃない。
「お姉ちゃん、行くよ」
がしっ!
悠が百合華を支えて立ち上がらせる。
「ユウ君……どこに?」
「トイレだよ」
「でも、ダメっ」
「ここで漏らすよりマシでしょ?」
「うえぇぇ~ん、ユウ君にそんなの見られたくないよぉ~」
泣き出した百合華を抱えてトイレへと急ぐ。
今は一刻の猶予もないのだ。
ガチャ!
トイレのドアを開けて百合華を入れる。
手錠で繋がっている為に、ドアは閉まらず中の様子が丸分かりだ。
「ムリだよ……」
「でも、するしか……」
「ユウ君、絶対に見ないでね!」
「絶対見ないから」
「音も聞いちゃだめ!」
「それは……努力する」
「臭いも嗅いじゃダメだからね!」
「うん」
便器に座った百合華が下着を下す。
もう決壊寸前なのに、悠がすぐ近くにいる事で踏ん切りがつかない。
ドアの隙間からは悠の姿が見えているのだから。
ああっ……ユウ君……
もうダメ……
こんな汚いお姉ちゃんを見ても、嫌いにならないでね……
脂汗のようなものをかきながら小刻みに震える百合華。もう限界が訪れていた。
「うぐっ、ああああっん……ああっ、もうっ、ダメ……ああああああぁ~ん! 出ちゃう! 見ないでぇ~っ! ユウ君、お姉ちゃんのコト嫌いにならないでぇぇぇぇーっ!」
ジャァァァァァァァァ――――
水を流して少しでも音を誤魔化しながら、女にとって一番恥ずかしいそれをしてしまった。
――――――――
――――――
――――
「ああ……あああっ……終わった、女として……」
何かに打ちのめされたような百合華が茫然としている。
「だ、大丈夫だよ。お姉ちゃん……」
「全然、大丈夫じゃないよぉ……」
「そんなに臭くなかったから。むしろ良い感じに――ぐえっ!」
余計なことを言って百合華に締められる。
「ゆゆゆ、ユウ君! 嗅いじゃダメって言ったでしょ!」
「でも、そんなに息を止めていれないし……」
「口呼吸するのよ!」
「そんなの言われても……」
最愛の弟に恥ずかしい臭いを嗅がれてしまい大ダメージだ。
更に百合華がヘロヘロになって崩れ落ちた。
「もう……お姉ちゃんはダメかも……」
「だ、大丈夫だよ。俺は、例えお姉ちゃんが大きなウ〇〇をしても気にしないよ」
更に余計なことを言う。
悠としては姉を元気づけようとしているのだが、尽く不発どころか暴発だ。
「悠! それ、わざと? わざとなの? オシオキの仕返しなの?」
「ちがっ、違うから!」
「もぉ~ユウ君のイジワルぅ~もう、お嫁に行けないよぉ~」
ちょっと古典的なフレーズを口にする。
だが、悠は即答する自信があった。
「大丈夫だよ。お姉ちゃんは俺の嫁だから。姉弟から夫婦に変わるだけだし」
ちょっとだけ堂々として俺の嫁宣言をする悠。
「ユウ君……こんなお姉ちゃんでも良いの?」
「お姉ちゃんでなきゃだめなんだよ。お姉ちゃんが良いの」
「ユウくぅ~ん!」
ウ〇〇によって更に関係が深まった二人。
もう結婚も決まったようなものだ。
例え、どんな汚い部分を見せても、この愛は揺るぎようもない。
「それに、お姉ちゃんがしてる時に、何だかドキドキしちゃって。してる時の声が色っぽくて――ぐえっ!」
再び百合華に締められる悠。
最近はプロレス技も板についてきたようだ。
百合華のせいで変なフェチになりそうだったが、姉怒りの制裁でそうはさせなかった。
「ぐえぇっ! ギブ! ギブアップ!」
「悠! 今すぐ記憶から消しなさい! 全消去よ!」
「そんなの無理だから」
「何か記憶を操作できる技ってないかしら?」
「いやいやいや、危ないって!」
チョークスリーパーのような技を掛けられながらも、おっぱいの圧とスベスベの肌のコンボで、苦しいより気持ち良いが勝ってしまう。
「もぉ最悪~ユウ君に全部バレちゃうし。部屋でこっそり〇〇してるのとか、変な日記つけてるのとか、ユウ君が寝てる時に手を借りてるのとか、うう、ウ〇〇まで……ああああぁ~ん! お姉ちゃん、もう恥ずかしくて死んじゃいそうだよぉ~」
「そんな、ちょっと変なところも大好きなのに。お姉ちゃんに汚いところなんて何処にもないよ」
それは悠の本心だ。
ちょっと変な性格も、ドスケベなところも、嫉妬深いところも、キツいオシオキでさえも、百合華の全てが大好きなのだから。
でも、たまにオシオキが度を越えていて、逃げ出したい時もあるのだが……
「ユウ君……」
「お姉ちゃん……」
「あ、そうだ、俺も小〇」
がしっ!
百合華が悠の腕を掴む。
「ユウ君、女の子がした後すぐ入っちゃダメだよ」
「臭いならさっき嗅いだから気にしなくて良いよ」
「悠、やっぱり厳しい躾けが必要かしら?」
「お、お姉ちゃん、目が怖いよ」
「そうだ、ユウ君のも見せてもらえばおあいこだよね」
「おあいこじゃねーっ!」
そして――――
「もぉ~ユウ君ってば大人なんだからぁ」
「ううっ、俺までダメージを受けてしまうとは……」
わんぱくなあそこを見られて、悠までダメージを受けてしまう。
トイレで余計な時間を使い、更に親の帰宅が迫る事態になってしまった。
「早く探さないと! 親が帰ってきちゃう」
「だって、私だけ恥ずかしいのはヤダなんだもん」
刻一刻と時間は迫る。
手錠プレイをしているのが親にバレたら大問題だ。
二人は、ベッドの下、壁際の隙間、シーツの中などを探す。
何処を探しても鍵は見つからなかった。
――――――――
少し日が傾いてきた。
そろそろ親が帰宅する予定時刻だ。
もはや万策尽きた感が、二人の間に漂う。
「もう諦めようよ……私が無理やりしたコトにするから。ユウ君は悪くないよ」
百合華が全部罪を背負おうとしている。
「ダメだ!」
悠は叫んだ。
「ユウ君……?」
「そんなのダメだ! それじゃ、お姉ちゃんが弟に手を出した悪い姉になっちゃうだろ! そんなのダメだよ!」
「で、でも……もうそれしか」
「まだ、諦めちゃダメだ! 俺達が結婚するのは、親や周囲に祝福されないと! 後ろ指をさされるような、お姉ちゃんが悪者みたいに言われるのなんて絶対にダメだ! お姉ちゃんは幸せにならないと! 俺は、お姉ちゃんを世界一幸せにするって決めたんだ!」
悠は真剣な顔で叫んだ。
百合華を幸せにしたいと願った幼い頃の想いは何も変わっていない。
年を重ねて、その想いはより強くなっていた。
大好きな百合華を幸せにする為なら何でもしたいと思っている。
親を納得させる為には、ある程度自分で責任がとれるようになるまで一線は超えないと誓っているのだ。ここで周囲に如何わしい関係だと思われ、後ろ指をさされるような事だけは絶対にしてはならない。
「ユウ君……そ、そんなに私のことを……」
「そ、そうだ! お姉ちゃん、すぐ着替えて。今からホームセンターに行って、金属切断工具で手錠を切ろう。買うと高いけど、レンタルもあるかもしれない」
「う、うん」
「とりあえず、下は着替えられるから。上は何か羽織るもので誤魔化せれば」
二人で着替え始める。
急がねば親が帰って来てしまう。
何としても、このミッションをクリアし、久々の家族団らんをしなけらばならない。
こんなところで関係を壊すような事態にはさせないのだ。
昨夜ベッドでパジャマを脱いでから、ずっと下着姿だった百合華が普段着のスカートを穿く。
手錠で繋がり、やり難そうだが。
「お姉ちゃん、また脱ぎ散らかして」
悠が、百合華が昨夜脱ぎ散らかしたパジャマを拾う。
チャリーン!
「ん?」
何かの金属音がして床を見つめる悠。
「これは……鍵?」
「あ、あれ……」
急にキョドリ始める百合華。
「お姉ちゃん……パジャマのポケットから鍵が出てきたけど?」
「んんっ……そ、そういうこともあるよね?」
「お姉ちゃん!」
「うっ……そういえば……パジャマのポケットに入れておいた気も?」
「じぃぃぃぃ~っ…………」
悠に睨まれて小さくなるドジ姉。
「ご、ごめんね……」
「もうっ、このドジ百合華!」
「ああぁ~また呼び捨てにしてる」
「だいたい百合華は、外だと完璧なのに家だとポンコツ過ぎるよ!」
「ポンコツとか酷いよぉ~」
ドジ姉からポンコツ姉にクラスアップだ。
「本当のところ言うと、さっきは臭くないって言ったけど、実はちょっとくさ――ぐえっ!」
やっぱり余計なことを言い出す悠に、鍵を外して自由になった百合華の完璧なチョークスリーパーが決まる。
昔のプロレスごっことは一味違う、鍛え抜かれた本物の風格だ。
「ぐえっ、苦しい! ギブ!」
「ゆ、ユウ君、それ以上言ったら本気出すよ」
「もう本気出してるだろ!」
「やっぱり記憶全消去しなさぁーい!」
親の帰宅が近付いているのに、下着姿でプロレスごっこの義理の姉弟。
とても人に見せたものではないのだが、二人はとても楽しそうだ。
そして、毎日エッチな生活の二人が、親と一緒の夏休みで我慢出来るのだろうか?
怒涛のお盆休みがやってくる。
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