第87話 そして親の帰宅が迫るのに大事件な二人

 全身マッサージのご奉仕をする悠。

 表側が終わり、続いて背中を揉む。

 内もものマッサージで百合華が危なくなったが、それからは癒されているようで気持ちよさそうにしている。


 そもそも、エッチな感じにすると『エッチ禁止』と言い、しなければ『やって』というから困ってしまう。

 悠とエッチなイチャイチャしたいのに、一方的に堕とされるのは姉の威厳とやらが気になるという、揺れる乙女心なのである。



 すりすりすりすり――――


 すべすべな背中を揉むと腰回りや尻は飛ばしてしまう。

 姉最大の弱点をモミモミしたら、一気に発情して淫魔女王サキュバスロードになってしまいそうだ。


「ユウ君……腰は?」

「お姉ちゃん、腰回りやお尻が弱いからカットで」

「えええ~っ」


 ちょっと不満そうな百合華をスルーして、最後の足つぼマッサージへと移る。


「じゃあ、最後は足つぼだよ」

「うぅぅ~ん」


 がさがさがさ――――

 寝たままするのかと思いきや、百合華が起きてベッドに腰かけ、悠の顔に脚を突き出してくる。

 そのまんま女王様だ。


「ふふっ、どうぞ」


 滅茶苦茶エッチな顔をしてニマニマと悠を見つめている。

 カラダに巻いたタオルが捲れて、パンチラまでしていた。

 無論わざと見せているのだが。


「どうしたの? 悠、早くしなさい」


 ゾクゾクゾク――――

 女王姉の迫力で、腰の奥がゾクゾクとする。

 口調まで女王様っぽくなり、エッチで挑発的な顔も相まってたまらない。


「悠、さっきから私の脚の間をチラチラ見てるわよ?」

「くぅ……あ、足を開くな……」


 見てはいけないと思いつつも気になってしまう。

 脚の間に見える三角デルタ地帯の布が、これほど気になってしまうのは人のさがか。


 モミモミモミモミ――――


「んぁっ……いいっ……」

「ちょっと、変な声出すなよ」

「ふふっ」


 おもむろに、百合華がもう一方の足を上げると、悠の肩の上に乗せる。

 当然カパッっと足が開き、三角デルタ地帯が更に見えてしまう。


「うっ、何をしたいんだ、この姉は……」

「最近ナマイキな弟にオシオキよ。ふふっ」


 徐々に足が首に巻きついてゆき、そのままガッチリロックしてしまう。

 アロマオイルでマッサージして、更にしっとりツヤツヤな脚が心地良い。


「ちょ、待て! ホント何がしたいんだ?」

「ふふふっ、こうするのよ!」


 グイッ!

 両足に力を入れ自分のカラダへと引き寄せる百合華。

 悠の顔が三角デルタ地帯に一直線だ。


「うっわあああっ! あたる! あたっちゃう!」

「あててんのよ。なんちって~」

「冗談じゃねぇーっ!」

「ほらほらぁ、グイっと行っちゃって」

「いくらなんでもお下品過ぎる!」

「アレがバレちゃったし、もう怖いものは無いのよっ!」


 悠の手を使ってイケナイコトしたのがバレて弱体化したと思いきや、逆に開き直って強くなってしまったようだ。


 ああっ……

 もうこのまま顔を埋めてしまいたい。

 でも……

 そんなのしたら歯止めがきかなくなりそうだし……

 もうすぐ親も戻って来るのに、エッチしたら雰囲気が隠せなくなって絶対親にバレちゃいそうだよ……


 本当なら悠もエッチしたかった。

 毎日でもしたいくらいに。

 それくらい百合華が大好きで、心も体も深く繋がり合いたいのだ。

 だが、教師という社会的立場の姉の職業や、義理とはいえ姉弟という関係が、悠の心にブレーキをかけてしまう。

 もし姉の立場を悪くしてしまったらと。


 しかし、逆に社会的立場や禁断の関係が、より二人を燃え上がらせてしまっているのだが。

 恋愛とは、障害が多ければ多いほど燃えるものなのだから。


「ううっ、もうダメだ……」

「ほらぁ、旅館の時にみたいにペロペロなさい」


 両足でロックしたまま両手で悠の頭を掴み、グイグイと自分の方に引き寄せる変態姉。

 もう完全に詰んだかと思われた悠だが、肝心なことを思い出す。


「あっ、そういえば両手が空いてたんだ」


 最初から両手で姉の脚を掴むなりすれば良いのに、敢えて何もせずに引き寄せられているのだから、本心ではくっつきたかったのだと言われても仕方がないだろう。


「えいっ!」


 ぴとっ!

「ひやぁぁぁぁ~ん!」

「あっ…………」



 悠のクリティカル攻撃が炸裂してしまった。

 脚を掴んで止めるなりすれば良いものを、何故かイケナイ部分をタッチしてしまう。

 完全にスイッチが入って昂っていたところをタッチされ、たまらず百合華の拘束は緩んでしまった。


「ユウ君のエッチ」

「わざとじゃないのに」

「もぉ、ユウ君ってば、いつも無意識を装ってエッチなコトばかり」


 エッチなのはお互い様なのだが。


「もう、真面目なマッサージなのに、結局エッチなことしようとするし」

「それはユウ君の手つきがイヤラシイからだよぉ」

「普通なのに……」

「絶対エッチぃ!」

「エッチはどっちだよ」


 もう隠そうともせず百合華が本音をぶちまける。


「というか、むしろとびきりエッチにしちゃって良いのに。いつもユウ君が途中で止めるから欲求不満になるのぉ~もぉ、ユウ君のイジワルぅ~」


 ベッドの上で駄々をこねている姉を尻目に、悠は片付けを始める。

 まるでこれも、おあずけプレイの一環みたいだ。


「今日は日頃の感謝の気持ちで何でもサービスするから機嫌直してよ」


 悠が素直な気持ちを打ち明けると、百合華は嬉しそうな笑顔と少しだけエッチな顔とが混ざった表情で答える。


「ホント? 嬉しい。何してもらおっかなぁ~」


 ――――――――




 それからの百合華はイチャイチャマックスで甘えまくり、夕食も悠に作ってもらい当然『あーん』で食べさせてもらう。

 食後は悠の膝枕で甘えまくり、耳かきのサービス付きだ。

 当然、お風呂も一緒で洗いっ子。

 そして、風呂上りとイチャイチャで上気した顔とカラダのまま、リビングのソファーに座る悠の上に乗って、ガッチリと抱きついたままキスしまくっている。


「むちゅ、ちゅっ、んっ……」


 この『だいしゅきホールド』のように両足でガッチリと悠をロックしてからのキスが、百合華はたまらなく好きだった。

 大好きな悠を独占している感満々で、誰にも渡さないという固い決意のようなものを感じる。


「んっ……お姉ちゃん……そろそろ寝ようよ」

「ちゅぱっ、んっ……もっとぉ~」

「でも……」

「じゃあ、添い寝して」

「うん」



 ギュッと抱き合ったまま階段を上る。

 片時も離れたくないように。


 百合華の部屋に入ると、クローゼットから腹巻ボディーウォーマーを取り出す。

 ニコニコしながら近寄って来る姉に、悠は若干引き気味だ。


「お姉ちゃん……もしかして、それ……」

「当然、強制密着刑だよ」

「マジか……」

「ほらほらぁ、服脱いで」

「いや、真夏だし……暑いよ」

「それが良いんだよぉ~汗でベトベトになって興奮するしぃ」

「やっぱり姉が変態過ぎるよ!」


 ミチミチのボディーウォーマーに二人で入り、ピッタリと隙間なく密着する。

 エアコンを付けていても、密着部分は汗でヌルヌルとしてエッチ過ぎる感覚だ。

 まるで激しい本番行為のように見えるのに、この二人ときたらまだ未経験なのである。

 他人から見たら信じられないだろう。


「ううっ、何度やってもこれは慣れないよ……」

「ユウ君、今夜はまだまだだよ」

「へっ?」


 カシャ! カシャ!

 百合華はベッドの下から手錠を取り出すと、悠と自分の手首を繋いでしまう。いつもの調教用の玩具の手錠だ。


「えっ、これ……」

「えへへ、これで永遠に離れられないねっ!」


 強制密着刑の上に、更に手錠で繋がれしまう二重の刑だ。


「ああっ……これ本当にダメかも……」

「ユウ君、弱音を吐くのはまだ早いよ」

「ううっ……」

「朝まで、ずぅ~っとキスしていようね?」


 完全に密着したまま、キスの嵐が押し寄せる。

 愛情たっぷりのキスをしたまま、吸い付いて離れなくなってしまうくらいに。


「はむっ、んっ、ちゅっ、んぁあ、ちゅぱっ……ユウ君♡」

「んんん~~~~し、死んじゃうぅぅぅぅ~っ!」



 今夜も百合華の激しい愛情表現が炸裂し、美しいサキュバス姉に色々吸い取られそうな悠。

 もう、いつもの日常のような光景だ。




 そんなラブラブな日々が続き、親の帰宅が翌日に迫ったある日。


「ユウ君、今夜もやるよ」

「ええ……また?」


 手錠で二人を繋ぐ背徳感が病みつきになってしまったようなのだ。

 困った姉である。


「もうっ、本当に繋がったままになっても知らないよ」

「その時はぁ、永遠に一緒だよぉ~」


 冗談を言いながらベッドに入る二人。

 そう、この時は大事件になるなど知る由もなく。


 ラブラブでイチャイチャな夜は更けてゆくのだった。


 ――――――――




「――――ユウ君……ユウ君……」

「んんっ……あ、朝?」

「ユウ君! 起きて!」

「えっ、お姉ちゃん……?」


 悠が目を覚ますと、珍しく慌てた様子の百合華がいた。


「何かあったの?」

「ユウ君、どうしよぉぉぉぉ~」

「何? 何なの?」

「手錠の鍵が無くなっちゃった」

「は?」


 冗談で言っていたのが本当になってしまう。

 親の帰宅が迫っているのに、手錠で繋がったままでは緊急事態だ。


「いつもココに置いてあるのに。朝起きたら無くなってるの」

「ベッドの隙間に落ちたとか?」


 悠がベッドの下を見回すが鍵は見当たらない。


「どうしよう……」

「とにかく、もう一度探してみよう」


 親バレするにしても、いきなり手錠で変態プレイでは、親がショックで卒倒してしまいそうだ。

 何とかして親の帰宅前に鍵を見つけるか手錠を破壊するしかない。


「ベッドの隙間とか、シーツの中とか……」


 悠がアチコチ探していると、百合華が何やらモジモジしている。

 何かを我慢しているような感じだ。


「ゆ、ユウ君……漏れそう……」

 耳まで真っ赤になっている百合華。


「マジか……」

「もうムリ……」

「このままトイレに行くしか……」

「お、お、大きい方なんだけど……」

「ぐっはっ!」

「ダメ……絶対ダメ……ユウ君には見せられない」

「どどどどど、どうしょおぉぉぉぉ~っ!」


 絶体絶命な二人。

 いまにも漏らしそうな我慢姉。

 刻一刻と親の帰宅時間が迫る。


 果たして二人は、無事姉のおもらしを防ぎ、手錠を外すことが出来るのか?

 残された時間の中で、二人の決断は?

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