第84話 もうユウ君なしじゃ生きられないお姉ちゃん
もし、この世界に何百万分の一という確率で、心も体も相性がピッタリ合う相手がいたとしたら。
例え熱烈な恋愛の末に結ばれた者同士でさえ破局を迎えるような儚い世界であっても、そんな寸分の狂いもないほどの相性の良い二人ならば、きっと奇跡のような悠久の時を経ても色あせない永遠の愛を手に入れることができるのかもしれない。
そう、この二人のように――――
「お姉ちゃ~ん……」
「はぁ……はぁ…………はひっ……」
完全に百合華の色香に惑わされた悠が、大好きな姉に抱きついたままキスやペロペロしまくる。
オシオキとか言っておきながら、途中からは夢見心地でちゅっちゅしていた。
いつになく攻め攻めな悠に、百合華は何度も何度も陥落させられてしまう。
百合華のフェロモンの強烈さもあるのだが、悠の無意識な攻めが百合華の波長とピッタリ合い、姉感度三千倍(当社比)くらいに気持ちよくなってしまうのだ。
奇跡のような相性の為せる業とも呼べる。
「うぅ~ん……お姉ちゃ……じゃない、百合華ちゃん」
優しく抱きしめて顔や耳やうなじや
布団に横たわる百合華の白く美しく完璧な腋が見える。
上腕三頭筋から大胸筋と大円筋に繋がる理想的なラインに適度な脂肪が乗り、スベスベできめ細やかな肌が美しい曲線を描き、ムチッとした横乳とも合わさり芸術的な腋を見せていた。
「あれっ? 何か興奮してやり過ぎちゃたような? お、お姉ちゃんの腋が美味しすぎるのが原因とか?」
姉の事になると我を忘れてしまう悠も困ったものだ。
もうここまで来ると、本当に無意識なのか怪しくなってしまう。
「百合華ちゃん、縛られたままだと苦しいよな。楽にさせてあげないと」
手足を縛った帯を解いてあげる。
朝までオシオキとか言っておきながらも、大切な姉にそんなヒドいコトはできないのが悠なのだ。
楽な体勢にして寝かせると、はだけた浴衣も着せてあげる。
セクシーランジェリーがエッチ過ぎて、わんぱくなあそこが落ち着かない。
「これで良し」
「全然良くないよぉ~っ!」
「うわっ、お、起きてたの?」
悪魔嫁から囚われの姫になり、くっころ姉のように気丈に耐え続けたのも空しく散々陥落させられた百合華が、不本意そうな顔で睨んでいる。
「もぉ~ヒドいよぉ~ 姉の威厳がボロボロだよぉ~」
最初から威厳があったかどうかはさておき、だいぶ年下の義弟に恥ずかしい顔を見られてしまい、もう余りの羞恥で年下男子の悠に絶対服従してしまいそうな勢いだ。
悠の恥ずかしい顔を見たかったのに、自分が恥ずかしい顔を晒してしまったのだから。
認めてしまえば楽になりそうなのだが、普段は女王然としてSっぽい百合華なのに、悠に攻められるとエッチな奴隷にされたい感情がムクムクと溢れ出そうな気持になる。
悠が大好き過ぎて、何でも受け入れてしまいそうな自分が怖かった。
「百合華ちゃんが悪乗りするからでしょ」
「それは……そうだけど。だって、ユウ君が恥ずかしがるトコ見たかったんだもん」
たまに……いや、毎回変なプレイをしたがる困った人だ。
「明日も早いから、もう寝るよ」
「ユウ君……我慢できるの?」
「うっ…………」
百合華の瞳が妖しく光る。
その美しい瞳で見つめられただけで、たまらない感じになってしまう。
「俺は……お姉ちゃん……百合華ちゃんが大好きだよ。でも、もう少し待って欲しい。ちゃんと百合華ちゃんを幸せにできる男になるまで」
悠が真面目な顔で百合華を見つめ返す。
「もぉぉぉ~何でそこだけ真面目なの。さっきは私の腋をペロペロしまくってたくせに」
「い、いや、それはそうなんだけど……」
「もうっ、ホント限界。ユウ君、わざとイジワルしてるでしょ?」
「違うから! 本当に大切だから慎重なの」
「ううぅ~ユウ君は私が養ってあげるのにぃ~」
「それじゃヒモ男でしょ!」
過保護嫁の溺愛に浸りまくっていたらヒモにされそうだ。
悠としては立派とまではいえなくても、好きな女に苦労させたくはないと思っていた。
「もう寝るよ」
悠が百合華の頭をぽんぽんする。
「あぁ~私の方が年上なのに」
「ほら、ナデナデもしてあげるから」
「もぉ~」
「ギュッてしてあげる。いい子いい子」
「何で私が子供扱いなのぉ~」
「ほらほら、ぎゅぅぅぅぅ~」
「ふへぇ~」
文句を言いながらも、悠にギュッてされたりナデナデされたりで、満更でもない感じにデレデレになってしまった。
威厳とか言っているのに、年下男子に堕とされるのも大好物のようだ。
「あぁんっ、ユウくぅ~ん」
「百合華ちゃん」
抱き合ったまま眠る。
まるで生まれる前から相性ピッタリな相手であるかのように。
――――――――
どれだけ時間が経ったのだろうか……
悠は、ふと隣の百合華の息が荒くなっている感覚で目を覚ました。
百合華のカラダを熱く火照って、時折『うっ』っと押し殺した声が聞こえる。
あれ?
お姉ちゃん……
起きてるのか?
「……んっ……ユウ君……ごめん」
微かに百合華の声が聞こえる。
ん?
お姉ちゃん何をやってるんだろ?
「はっ……んっ……ユウ君……また手を借りるね」
そう言うと、百合華は悠の手を取り自分の方へと寄せる。
ええっ?
お姉ちゃん?
何で俺の手を?
ぴとっ――
手が何か柔らかいものに触れた感触がある。
えっ、なになに?
何が起きているんだ?
気になる!
凄く気になる!
起きるタイミングを失い、寝たふりを続ける悠。
隣で怪しい行動をする姉を不審に思いながらも、何をしているのか気になって仕方がない。
「んっ、はあっ……ユウ君……ごめん……悪いお姉ちゃんで……」
うっわぁぁぁぁ!
すっごい気になるんだけど!
目を開けて確認したい。
今すぐ目を開けて確認したい。
このまま動けないなんて生殺しだぁぁぁぁ!
「もうムリ……我慢できないよぉ……ユウ君、大好き……ちゅっ」
手を取ってモゾモゾしたまま、悠のくちびるに軽くキスをする百合華。
起こさないように、くちびるとくちびるが軽く触れるだけのキス。
「キス……しちゃった……んんっ、あっ……ダメぇ……これすっごい……クセになるぅ……」
ちょ、ちょっと、これってキスされてるのか?
お姉ちゃん……もしかして、いつも添い寝している時は?
俺が寝ている時にキスしちゃうなんて、お姉ちゃん可愛いとこあるよな。
でも、俺の右手がどうなっているのか気になる!
気になって気になって仕方がない!
「も、もう一回しとこ。はぁ……んっ、ちゅ……っ」
二回目は少し長めにくちびるを合わせる。
「んっ、ああっ……も、もう一回だけ……ちゅっ、んっ、ちゅ、ちゅぱっ……」
もう一回と言いながら何度もする百合華。
これで起きない方が不自然だ。
うがぁぁぁぁーっ!
もう、何なのこれ!
こんなの我慢できないだろ!
ガサガサガサ――――
寝返りを打つフリをして姉に背中を向ける。
これ以上キスされ続けたら大変なコトになってしまいそうだ。
「ああっ……」
背中で残念そうな姉の声がした。
「ユウ君……もうちょっとだけ……」
再び悠の手を取り自分の方へ持って行く。
背中にピッタリと張り付いて、微かな息遣いを立て続ける。
「んっ、んんっ……ユウ君、ユウ君、ユウ君、ユウ君、ユウ君、ユウ君……大好き……ユウ君の全てが欲しい……私の全部あげるから……もうユウ君なしじゃ生きられないカラダになっちゃったよぉ~」
背中に姉の熱い吐息と囁きを受けながら、悠は悶々とした夜を耐え続けた。
――――――――
チュンチュンチュン――――
結局、悶々としたまま余り眠れなかった悠が布団から起き上がる。
姉のキスや告白は飛び跳ねそうなくらい嬉しいのだが、右手の柔らかな感覚だけは記憶に鮮烈に焼き付いて消えそうにない。
ふと、悠が自分の右手を見つめる。
そのまま顔に近付けてゆく。
お姉ちゃん……
お姉ちゃんの匂いが……
今までも添い寝した後に、自分の手や腕に姉の匂いが付いていたことがあった。
それほど気にしていなかったのだが――
「お姉ちゃん……」
悠が指を口に運ぶ。
今、口を開いて舌を出した瞬間――
「ユウ君」
ビックゥゥゥゥーン!
指を舐めようとした体勢のまま固まってしまう。
「ユウ君、おはよ…………えっ!」
目を覚ました百合華が見たのは、今にも自分の指を舐めようとしている悠の姿だった。
「え、えっと……ユウ君……何してるのかな?」
「い、い、いや、別に……」
二人が、気まずい沈黙になる。
悠は無意識に指を舐めようとした自分の行動にドキドキしていた。
ななな、何を……
俺は何をしようとしていたんだ……
ま、まさかな……?
そんなワケないよな……
いや、でも……あのドスケベ姉だし……
百合華は深夜の自分の行動と朝の悠の行動が、パズルのピースが組み合わさるように合致し、顔から火が出そうなくらいに恥ずかしくなってしまう。
え、ええっ、ええええっ!
ユウ君、気付いてる?
もしかして、バレてるの?
確かに寝てたはずだけど……
もし、起きていたのなら、私の超恥ずかしいアレを……
どどど、どうしよぉぉぉぉ~っ!
ユウ君にバレちゃったら恥ずかしくて死んじゃいそうだよぉ~
「え、えへへ……」
「あ、あはは……」
とりあえず二人共笑ってみる。
「ユウ君……何してるのかな?」
「い、いや、何でもない、何でもないから!」
「えっと……ユウ君は……よく眠れた?」
「えっ?」
「いや、変な意味じゃなくて」
「う、うん……ぼちぼち……」
「そうなんだ……」
百合華の思考が混乱する。
どっち!
どっちなの?
気付いてる? 気付いてない?
あああぁ~ん!
どっちなのぉぉぉぉ~っ!
悠も混乱する。
気になる!
気になって仕方がない!
でも、俺が起きてたのを知ったらお姉ちゃんは……
こ、ここは武士の情けで知らなかったことにしておこう。
「あはは……えっと、朝食が楽しみだね。お姉ちゃん」
「そ、そうそう、旅館の朝食って美味しいんだよね」
「あはは……」
「うふふ……」
お互い何も知らない事にした。
「あふぅ、眠っ……」
ガシッ!
悠が目を擦ろうとした時、百合華が悠の手首を掴んだ。
「ユウ君、まだ顔洗ってないよね?」
「うん……」
「一緒に洗いに行こうか?」
「うん……」
「でも、その前に手を洗おうか?」
「えっ……う、うん、そうだよね。手を洗うのは大事だよね」
「そうそう、大事大事」
お互い意味深な感じを残しつつ、二人仲良く洗面所に入り一緒に手を洗う。
差し当たって、今日のことは知らないフリをしようと悠は思った。
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