第79話 新婚さんになった二人

 ジャグジーの泡で周囲から見えないのをいい事に、水の中でイチャイチャしまくる二人。

 調子に乗った悠は、姉の尻をペチペチしまくる。

 いつもと違う開放的なシチュエーションで、お互いに攻め合ったり焦らしまくったりした挙句、どちらも我慢できないくらいに昂ってしまっていた。


 ペチン、ペチン、ペチン!

 益々調子に乗ってエッチな手つきの悠が、百合華の尻をペチペチしまくる。

 気高く気品ある百合華王女は後ろが弱そうだと勝手に想像している悠なのだ。


「あんっ、ユウ君、だめえぇ~」

「ドスケベ百合華はオシオキだぜ」


 ペチペチすればするほど色気を増す百合華から、可視化出来るのでは思うほどのフェロモンが流れ出て、悠だけではなく周囲のカップルまでエッチな気分になってしまう。

 悠が完全に百合華のお尻の虜だ。


 お姉ちゃんのお尻……

 凄くすべすべで、プリッとしていて最高だ。

 はぁぁぁぁ……永遠にペチペチ出来そうだよ。


 あまりのエッチさに頭がボーっとしていた悠がハッと気づくと、逃げ出そうとする百合華を抱きしめて、お尻ペンペンしている変態さんな自分がいた。


「あれ? えっと……俺やらかした?」


 周囲を見ると、百合華のフェロモンに催淫された両隣のカップル達がキスしまくっていた。


 ま、マズい……

 淫魔女王サキュバスロードのフェロモンで、地上が淫魔界にされてしまう!

 すぐに悪魔姉から天使姉に戻ってもらわねば!


「ふにゃぁ~もう……らめぇぇぇぇ~」


 目の前で百合華が陥落していた。

 悠の攻撃が弱点にヒットし過ぎてヘロヘロだ。


「おね……百合華ちゃん! しっかりして!」


 ――――――――




 流れるプールのレジャーランドを遊び倒し十分満喫した二人が、着替えや片付けを終えてクルマに戻ってきた。


 ただ、ジャグジーの泡で隠れていたとはいえ、人前で陥落させられてしまった百合華はプリプリ怒っている。

 当初は悠を焦らしまくって我慢できなくさせる作戦だったはずが、まさか自分が焦らされたり、昂った後に放置プレイされたり、攻めまくられて陥落させられるとは思ってもいなかっただろう。


「お、お姉ちゃん……怒ってる?」

「つーん…………」

「ごめんなさい!」

「つーん…………」


 姉を怒らせたのだとオロオロする弟を横目でチラチラ見ながら、ちょっとだけ笑いを堪えてニヤニヤする百合華。


「ふふっ、ユウ君ってば、オロオロしちゃって面白い」

「ちょ、お姉ちゃん! 冗談だったの?」

「ユウ君!」

「は、はい」

「私のコト、何度も『百合華』って呼び捨てにしてたよね?」

「うっ……それは……」

「ドスケベとか言って」

「それは事実なような……?」

「ユウ君!」

「はい」


 さっきまで呼び捨てにして攻めまくっていたのに、今は元の姉と弟に戻っている。


「本当なら、知らない女に抱きつかれていたり、私にエッチなイタズラしたりで怒るところだけど、でも……ユウ君が『愛している』って言ってくれたから、全て許すことにします」


 悠は許された――――

 どんなエッチなイタズラでも、姉の威厳を傷付けても、『愛してる』の一言は全てを帳消しにして尚、それを大幅に上回る威力があった。


「お姉ちゃん……良かった」


 ガチャン!

 突然百合華が覆いかぶさり、クルマのシートのリクライニングを倒した。


「え、えっ……」


 狼狽する悠の上に乗り、外から見えないようにキスをする。


「はむっ、ちゅっ……んっ」


「お、お姉ちゃん……」

「ユウ君、宿に着いたら覚悟してよね」

「は?」

「ふふっ、もぉ、お姉ちゃんどうなっちゃうか分からないからぁ~」

「ええっ!」


「しょうがないよねっ! ユウ君がぁ~他の女とくっついたりぃ、私を放置プレイしたりぃ、ジャグジーでイジワルしたんだもん。これはぁ、すっごいオシオキしないとだよねっ!」


「はぁぁぁぁ!?」


 悠は許されていなかった――――

 愛しているの言葉は最高に嬉しくて、百合華の心をときめかせていたのだが、やっぱり他の女とくっついたヤキモチや、放置プレイで焦らされまくったムラムラや、呼び捨てでお尻ペンペンされた屈辱的快感など、それら全てが百合華の情欲に火をつけまくって止まらないのだ。


 いやむしろ、それら全ての行いが『愛している』の言葉との相乗効果で余計に昂っていた。

 悠の放ったペチペチの一発一発が、百合華の次元起動永久恋愛機関ラブラブな乙女心にエネルギーを送り続けてしまう。もはやエネルギー充填200%なのだ。


「それって……許されていないのでは?」

「違うよぉ~ユウ君は何も悪くないんだよ」

「は?」

「ユウ君は、いつも良い子だよ。悪いのはユウ君を狙う女だもん」

「それじゃあ……」

「でもでもぉ、それを口実にユウ君にエッチなオシオキしたいんだからしょうがないよね?」

「しょうがなくねぇーっ!」


 実は口実だった。

 昔は悠を取られるとガチギレしていたのだが、最近は悠の心が自分に向いていると分かっているので、プンスカ怒りながらも少しだけ余裕があるのだ。

 だが、実際に目の前で悠が他の女とイチャイチャしたら確実にガチギレする。

 そういうものだ。


「ふふふ~ん、それじゃ旅館にレッツゴー!」


 上機嫌になってクルマを発進させる百合華。

 早くも宿の部屋で悠とラブラブな一夜を思い浮かべてご満悦だ。


「くっ……やっぱりドスケベ百合華だ」

「ユウくぅ~ん、あんまり姉の威厳を傷付けると、後でどうなるかわかんないよぉ~」


 ゾクゾクゾクッ!

 一瞬だけ姉から悪魔のような威圧感を受けて、ゾクゾクと腰の奥の方が震えた悠が黙ってしまう。

 悠は調子に乗ってやり過ぎてしまったのかもしれない。


 ――――――――




 二人を乗せたクルマは、旅情感溢れる旅館に到着した。

 老舗のような重厚な外観で、門の向こうには庭園まである。


 風情のある暖簾のれんを潜り玄関を入ると、広いロビーには屏風絵が飾られていたりと、まるで大正時代にタイムスリップしたかのような感覚を覚えた。


「凄い……」

「良い感じの宿でしょ?」

「うん」


 悠が驚いていると、百合華がちょっと自慢気になる。


「ちょっとお高そうな感じが……」

「ユウ君、たまにはご褒美も必要なんだよ」

「そうだね」


 二人が玄関に入ると、奥から着物姿の女将おかみが現れた。

「ようこそ、お越しくださいました」


 落ち着いた雰囲気の女将がお辞儀をし、百合華もプールでのドスケベさは消え気品ある対応で返す。


「予約しております明石です。お世話になります」


 豪華なロビーに悠が気を取られている内に、百合華が手続きを終え部屋へと案内される。

 家では毎日暴走気味なのに、いざという時は大人な姉に感心してしまう。


「若いカップルさんですね」

「はい、夫婦なんです。まだ新婚で」

「それはおめでとうございます」


「ぶふぉ……」


 前を歩く百合華と女将の会話で、悠が吹きそうになる。

 勝手に新婚さんにされてしまった。



 案内された部屋に入り前室を抜けると、落ち着いた和室になっており床の間に掛け軸が飾られている。

 奥に小さな洋室があり、更に何か続いているように見えた。


「おおっ、良い部屋だね。奥に行くと何がありそうだけど?」

「ユウ君、この部屋はね、小さな露天風呂付なんだよ」

「えっ?」


 家族風呂やカップル風呂と呼ばれる貸し切り風呂だ。家族やカップルだけで仲良く入浴する為のプライベート空間。

 百合華は、わざわざ悠と二人っきりで風呂に入れる宿を選んでいた。


「えっと……これって、やっぱり」

「当然、一緒にお風呂だよ!」

「で、ですよね……」


 自信満々に答える百合華に、この先の事を考え怖くなる悠。

 旅費や宿代を出してもらっている以上、文句など言えるはずもない。


「あっ、ユウ君、当然だけど目隠し禁止だよ」

「は?」

「せっかく風光明媚な露天になってるんだから、一緒にお風呂を楽しもうねっ!」

「ああ……もうダメかもしれない」

「それとぉ~ちゃんと準備してあるから大丈夫だよぉ」


 鞄から0.01ミリ的なゴム製品を取り出す百合華。

 恥ずかしそうにもじもじしながらも準備は万端だ。


「つ、詰んだ……もしかして詰んだ?」


 逃げ場を失う悠。

 家から遠く離れ、プールリゾートでイチャイチャしまくり昂ってしまい、カップル風呂で一緒にお風呂、そして同じ布団で朝まで同衾どうきん

 もはや姉の策略通りなのだ。

 途中、プールで反撃されていたが、それもより百合華のムラムラを高めてしまうだけだった。


「でも……俺が我慢すれば……」

「ふふっ、ユウ君、どこまで我慢出来るのかなぁ?」


 百合華が悠に覆いかぶさる。

 もうプールから、いや途中のサービスエリアからムラムラしっぱなしなのだ。


「ちゅっ、んっ……ふうくぅ~んユウ君ふぁいしゅき~大好き


 そのまま情熱たっぷりのキスをされる。


「んんんっ~~~~ちょ、お姉、百合華ちゃん」

 激しいキスを止めようとして、新婚さん設定を思い出す悠。

 やっぱりここでも百合華ちゃんだ。


 コンコンコン!

「失礼いたします」


 熱々にキスで盛り上がっている最中に、中居さんが部屋に入ってきた。


「あ、あの……お食事ですが、大広間とお部屋と選べますが、どちらに――」


 若い中居はチラチラと激しく愛し合う二人を見ながら、夕食を何処で食べるか聞いているのだが、あまりにもラブラブな二人にあてられて、恥ずかしそうに顔を赤らめている。


「ちゅっ、ちゅぱっ……部屋で食べます。んっ、ちゅっ……」

「んっ……す、すみません。ホントすみません」


 百合華が部屋で食べると要望を述べるが、抱きしめてキスを続けたままだ。

 悠は中居の視線が気になって謝ってばかりになってしまう。


「い、いえ、大丈夫です。部屋で熱々になってしまわれるお客様は意外と多いのですよ」


 中居まで百合華のフェロモンで変な気分になっているのか、膝をスリスリさせながら何とか返答している。


「そ、そうなんですか? ちゅっ……でも、すみません、うちの嫁が」

「ほらぁ、あなたぁ~ 恥ずかしいトコ、いっぱい見てもらいましょうねぇ」

「変態過ぎる! 俺の嫁が変態すぎるよ!」


「で、では、お時間になりましたら、お部屋に料理をご準備いたします」


 スーパーバカップルになった二人の痴態に、変な妄想を膨らませて真っ赤になった中居が用件を終えて戻って行く。

 悠は、申し訳ないやら恥ずかしいやらでヘロヘロになってしまった。



「お姉ちゃん……少しは自重してよ……」

「お姉ちゃんじゃないでしょ! 妻でしょ! ちゃんとやって!」

「くっそ、ドスケベ百合華め」

「あらあらぁ~ そんな生意気な口をきいて、ただで済むと思ってるのかな? あ・な・た・!」

「ひぃぃぃぃぃぃ~」


 エロ姉の策略に嵌り絶体絶命の悠。

 このまま次々とイチャイチャイベントに巻き込まれる運命だ。

 果たして、悠は己の信念を貫く事が出来るのだろうか――――

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