第78話 やるときは意外とやる悠

 姉とのラブラブデートの最中なのに、またしても女性に絡まれる悠。

 やっぱり年上女性に目を付けられる運命なのだ。もう、女難の相が出ているのかもしれない。



「あいたたた……」

 人妻風女性が、つった足を痛がる。


「大丈夫ですか?」

「少ししたら治まると思うわ」

「と、とにかくプールから上がりましょう」

「きゃっ」


 よろけた態で女性が悠に抱きついた。


「なな、何で抱きつくんですか!」

「流れで足が滑るのよ」


 マズい……

 これではお姉ちゃんに……

 いや、待て!


 悠は肝心な事に気付いた――――


 俺は勘違いをしているのでは?

 お姉ちゃんの嫉妬が怖いからじゃない!

 お姉ちゃんに悲しい想いをさせたいのが重要なんだ!

 無関係の女に絡まれている場合じゃないんだ!


「奥さん! 俺が押しますからプールから上がってください」

「えっ、ええっ?」


 悠が女性の体を掴んで持ち上げる。

 水の中で浮力があるから持ち上げるのも簡単だろう。


「ああっん、だ、ダメよ……」


 女性が変な声を上げる。

 ちょっと変な場所を触ってしまっていた。



「ふうっ、やっと上がれた」

 人妻を押し上げてから自分もプールから上がり一息つく。


「あっ、こむら返りの足はどっちですか? ここを伸ばすと治りますよ」


 グイグイグイ!

 悠が人妻の足を掴んでグイグイする。


「あんっ、そ、そんなとこ触っちゃ……」


 跪いた悠が足を持ってグイグイする姿が、王子様に見初められた灰かぶり姫シンデレラのシーンのように見えてしまう。まるでガラスの靴を履かせてもらったかのような人妻風女性は夢見心地だ。


 この子……良いわね……

 ちょっと初心うぶな印象だったから声かけちゃったけど。

 一見受けっぽいのに、無意識攻めもいけそう。

 ショタっぽい子に私が色々されちゃうのを旦那に見せて、思いっ切り嫉妬させちゃいたいかも。


 ちょっとNTR好きな人妻のようだ。

 旦那もきっと、妻が若い子にNTRされてテンション上がっちゃう人なのかもしれない。

 相変わらず悠は、変わった女性に絡まれる運命だった。



「これで良し」


 本当に足がつっていたのか演技だったのから分からないが、悠の処置で痛みが治まったのか女性は普通に立っている。

 こんな場面をバレー部エースの松風美雪が見たら、『やっぱりキミは、ストレッチやマッサージに適任だ! がはは』とか言い出しかねないだろう。


「キミったら、結構大胆なのね」

 そう言って女性が抱きついてきた。


「ちょっと、ダメですって」

「良いじゃない。ちょっとくらい」

「旦那さんに悪いですよ」

「ねえ、私とイイコトしない?」


 ちょうど女性に抱きつかれたタイミングで、流れるプールのコースを一周回った百合華が戻ってきた。

 女性に抱きつかれたのをバッチリ見られてしまっただろう。


「ユウ君――」

「百合華ちゃん! 掴まって」


 姉の浮き輪をキャッチして、姉の手を掴んで引き上げる。


「ユウ君! この女性は?」


 百合華が少し威圧感を増す。

 タイミング的に抱きつかれたのを見たはずだ。


 ガバッ!

 突然、悠が百合華の腰を持って抱き寄せる。

「えっ、えっ、ゆ、ユウ君?」


「奥さん、俺には心に決めた人がいるんです!」


 高らかに宣言する悠。

 ちょっと神聖Holy百合華lily騎士団Knightsが入っているようだが少し違う。

 真理を探究しクラスチェンジした悠は、神聖リリウム王国聖騎士長パラディンにして百合華王女プリンセスリリー婚約者フィアンセEternalBrightstoneなのだ。

 中二病全開だが、本人は大真面目である。


「えええっ……キミ達……」

「ゆ、ユウ君……」


 急展開に人妻も百合華もビックリだ。


「俺は、姫を愛している! そう、姫を守り、姫を愛し、姫の為に命を捧ぐ聖騎士なのです。だから、あなたのNTRプレイのお手伝いは出来ません。ごめんなさい」


 どどどどーん!


 悠がドヤ顔で宣言し、人妻は唖然として、百合華は唐突な愛の告白で茫然とする。

 普通に聞いたらアホっぽいのに、何故か恋の魔法なのか場の雰囲気なのか、ちょっとだけカッコよく見えてしまうから不思議だ。


 唖然としていた人妻が、笑顔になって悠の肩をポンポンする。

「キミ、カッコいいわね。姫を守りなさい。NTRプレイ出来ないのは残念だけど、良いものを見せてもらったわ」


「奥さん……」


 人妻風女性は手で卑猥なジェスチャーをして去って行く。

 もしかしたらグッジョブのジェスチャーをしたかったのかもしれないが、実際は『エッチしまくりなさいよ』という意味なのかもしれない。



「ふうっ、危機は去ったぜ!」

 やりきった顔をする悠。


「ユウ君! もうっ、放っとくと知らない女にナンパされちゃうんだから。もう、心配で心配で」

 何処かの誰かと同じことを言い出す百合華。


「いや、モテてないから。変な人には絡まれるけど」

「ダメっ! 目を離すと知らない女に連れて行かれそうなんだから」

「行かないから。子供じゃないから」

「私が二十四時間ずぅ~っと一緒にいるからね!」


 百合華が悠を強く抱きしめる。

 誰にも渡さないと主張するように。


「百合華ちゃん、そんなにくっつくと歩き難いよ」

「ダメっ、ユウ君が取られちゃうから」

「誰も取らないのに」

「ユウ君……私を愛しているって……」

「お姉、百合華ちゃん……」


 抱きついたまま顔を悠の胸に埋める百合華。

 熱い吐息が胸をくすぐる。


「わ、わ、私も……大好きだよ。ユウ君を愛してる。ずっと、永遠に」

「百合華!」


 抱き合ったまま少し移動してスライダーの柱の陰に入り、浮き輪で隠しながらキスをする。


「んっ……ちゅっ……」


 完全に蕩けてしまった百合華が熱を持った潤んだ瞳で見つめる。

 もう止まれないほどにカラダは出来上がってしまう。


「こ、ここじゃマズいって……」

「ユウ君……」

「人に見られちゃうから」


 悠がカラダを離す。


「てか、ユウ君……」

「ん?」

「何かおかしくない?」

「ええっ?」

「これだけ大好きだって言ってるのに。これだけ愛し合っているのに。まだ付き合ってないとか!?」


 確かに毎日イチャイチャしまくっているのに、悠は『責任が持てるようになるまで』と言って、頑なに一線を越えるのを断っていた。


「だって、お姉、百合華ちゃんの立場を考えて……」

「も、もういい加減に限界なんですけど! エッチしたいんですけど!」

「ちょ、ちょっと、声が大きいって」

「もうエッチしたいのぉ~! んんんっ~」


 百合華の声がどんどん大きくなり、悠が手で口を塞いだ。


「んんぅ~んんんっ~」

「はい、百合華ちゃん。行きましょうねぇ」


 欲求不満な百合華の口を塞いだまま連れて行く。




「もぉ~ユウ君のイジワルぅ~」


 プールサイドのリクライニングチェアまで戻り、完全に火照ってしまった姉をチェアに寝かせると、悠はホッと一息ついた。

 最初の頃は百合華が攻め攻めで悠を焦らしまくっていたのに、いつのまにか立場が逆転して我慢の限界になった百合華が、少し触られただけでも決壊しそうなほどに疼きまくったカラダを抱えて悶えている。


「と、とりあえずドスケベな百合華は、このまま放置プレイということで」


 悠が唐突に鬼畜プレイをする。

 他の女の前で堂々と愛の告白をした悠に、百合華は完全に蕩けて立場逆転してしまったようだ。先日のクラシックメイドプレイでエッチな奴隷メイド扱いしたように、完全に悠が御主人様になってしまう。

 しかも、ちょっと調子に乗って『百合華』と呼び捨てだ。悠としては、年上の姉を呼び捨てにするのが、背徳感が刺激されてイケナイコトしているようにドキドキしてしまうのだろう。


「ユウ君がヒドいよぉ~」

「でも、こんな場所でイチャイチャがエスカレートしたらヤバいって」


 ちょっとだけ姉にエッチな仕返しをしたい気持ちもあるのだが、それ以上に公衆の面前でアウトな事は出来ないのだ。

 いくら地元から遠く離れているとはいっても、余り目立つ行動をするのはマズい。


「タオルタオル。百合華がドスケベ過ぎて放送禁止っぽい」

 百合華にタオルを掛けて悶えるカラダを隠す。


「ちょっと! 私の存在が18禁みたいに言わないで」

「顔も隠した方が良いかな?」

「もぉぉぉぉ~」


 ジタバタする姉にタオルを掛けて、放置プレイよろしく寝たふりする悠に、欲求不満が爆発しそうな百合華の『もぉもぉ』言う声が続く。

 悠としても人前で告白してしまったり、大好きな百合華とイチャイチャしまくって、少し休憩しないと限界になってしまいそうなのだ。





 かき氷を食べてクールダウンさせてから、姉を連れてアトラクションを回る悠。放置プレイで、ちょっとだけプンスカご立腹になってしまった百合華を宥めているのだ。


「ほら、こっちのジャグジーに行ってみようよ」

「もうっ、ユウ君ってば意外とSかも?」

「それは無いと思うけど……」


 惚れた弱みなのか、意外と百合華は肝心なところで悠の命令に服従してしまうのだ。

 普段は女王然としているのに、実際ベッドでの本番ではよわよわになって、悠のされるがままになりそうな気もする。



 ジャブジャブジャブ――――


 泡泡のジェットが噴出するジャグジーに入ろうとする百合華だが、プリッとした尻が悠に向けられウズウズとした気持ちが湧き上がる。メイドプレイを思い出した悠は、体が勝手に動いてしまった。


 ペチン、ペチン、ペチン!


「ちょっと、何でお尻叩くの!」

「えっと……体が勝手に……」


 ペチン、ペチン!


「こらぁ!」

「ど、ドスケベメイドの百合華はオシオキだぜ」

「もぉ~ユウ君のばかぁ~」


 ジャグジーの泡で見えないからと、少しエッチな手つきでお尻ペンペンする悠。

 全く後の事は考えていないようだ。

 その平手の一発一発が、百合華のカラダの奥の欲望に燃料を注ぎ続けているとも知らずに。


「ユウ君……後で覚えていなさいよ」


 超絶色っぽい目つきになって囁く百合華。

 やられたオシオキは百倍にして返すとでも言いたげだ。


 この後、同じ部屋に一泊する事を忘れているような悠と、どんどんムラムラが溜まる百合華の、想像を絶するような甘々でオシオキな一夜が迫っているのだった。

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