第71話 ちょっとSな女子達とプールイベント
悠は待ち合わせ場所の駅前へと向かう。同級生のドS女子達との戦い……ではなく、皆でプールに行く為に。
ちょっとリア充っぽいイベントに緊張する悠なのだが、緊張しているのはプールに行く事ではなく、怖い女子達に電話の件で絡まれる方だった。
昨夜は姉がドロドロの欲求不満になりながらも、イチャつきたいのを我慢して時間を与えてくれたり、夜も添い寝を控えてくれて体力もバッチリだ。
これは、寝不足でプールに行って何か事故にでもなったら大変だからと、悠を心配しての配慮なのだ。
そういうところは弟想いで優しかった。
しかし、元はと言えば百合華が電話中にイタズラして、変なコトをしていると誤解されてしまったのが原因なのだが。
「何とか誤解を解かないと」
悠が呟く。
「誤解って何?」
「うわっ!」
突然、耳元で囁かれて、悠がビクッとなった。
「えっ……東さん……」
振り向くと、そこに東沙彩が立っていた。
「おはよ、明石君」
「おはよう……」
「ふっ、今日も良いリアクションだね」
「東さんが気配を消して忍び寄るからでしょ」
「明石君を見てると、徹底的に辱めたくなっちゃうから」
「だから怖いって!」
マズい……
一番怖い女子と二人っきりに……
昨日のネタで
こんな感じに――――
『ふふっ、明石君……昨日、貴美と電話しながらイケナイコトしてたんだってね』
『うっ、それは……』
『どうしよっかなぁ~クラスの皆にバラしちゃったらどうする』
『東さん! そ、それだけはやめて!』
『ふふっ……バラされたくなかったら全部脱いで。明石君の恥ずかしい写真を撮らせてよ』
ななな、なんて事になってしまい……
ドS女子の東さんに、写真をネタに更に脅されて屈辱的なプレイを……
蟻地獄のようにどんどん堕とされ続け後戻り出来ない事態に……
うわぁぁぁぁぁぁぁ!
もう、おしまいだぁぁぁぁ!
「――――くん……明石君」
「へっ?」
「明石君、何ぼーっとしてるの?」
「あれ? 夢だったのか?」
沙彩に恥ずかしいネタで脅され調教される妄想をしてしまう。
いくら毎日のように姉に調教されているといっても、変な妄想をし過ぎだろう。
「何考えてたの? てか、誤解って何?」
「えっ、いや、何でもない……」
「昨日、貴美と何かあったの?」
「何でもないって」
「あやしい」
「あやしくないし」
あれ?
東さん、ホントに知らないのか?
中将さんがバラしちゃったと思ってたけど。
内緒にしてくれたのだろうか?
と、とりあえず、中将さん、早く来てくれ……
東さんと二人だと怖過ぎる……
普段は貴美を怖いと思っているのに、いざ更に怖い女子と一緒だと貴美が優しく見えてしまうのが不思議だ。
「おまたせ~」
「どうもぉ」
少しすると貴美と歩美がやって来た。
何も無かったように沙彩と三人でテンション上がっている。
「さ、行こっか」
「あれ? 人数はこれだけ?」
先頭を切って駅に入って行く貴美に悠が声をかけた。
「ん? 最初から四人だけど。あんた男子とか呼ぶと来ないでしょ」
「まあ、ウェイ系でパリピなのはちょっと……」
「だから、そんなんじゃないから」
貴美が言うように、陽キャっぽい男子が多いイベントは乗り気ではなかった。
ちょっとだけノリに付いて行くのに疲れるから。
しかし、今日は本当に貴美達三人だけの遊びに呼ばれたようだ。
「本当は、うちら三人だけだったのに、貴美がどうしても明石君を呼びたいって言うから――」
「あ、アユ、余計なコト言わない! ち、違うから! べつにあんたなんか……」
バラしてしまう歩美を止める貴美。
電話では歩美達が悠を呼びたいと言っていたはずなのに、実際は貴美が呼んだらしい。
何だかんだアタリがキツいのに、悠を気にかけているようだ。
電車で数駅の屋内プールへと向かう。
スポーツ施設と併設されていて、お手頃価格で設備も整っているのだ。
少し込み合う電車内で席を探し、悠と貴美は他の二人と離れた席に座る。
「あそこ二人分空いてるわね」
「うん」
貴美と二人になったところで例の話題を出した。
「あの……昨日のことだけど」
「昨日って、もしかして電話で一人エッチしてたコト?」
「わあっ、声が大きいって」
隣の人に聞こえそうで悠が慌てる。
「ふふっ、私と電話しながらしちゃうって、あんたどんだけ変態なのよ」
「ち、違うから、してないから。それより、皆には言ってないんだ」
「言った方が良かった?」
「良いわけないだろ」
他の人に言わないでいてくれる貴美が優しいと思った。
「他の人に言っちゃったら、あんたを脅して言いなりに出来ないでしょ。せっかく良いネタを手に入れたのに。これからは、私の命令に絶対服従させて面白いコトしたいのに」
「うっわぁぁぁぁ! 中将さんを信じた俺がバカだった」
悠が頭を抱える。
「じょ、冗談よ。ふふっ、相変わらず面白いわね。あんたって」
「くっそ……また騙された……」
「ふふっ、あんたのそういう単純なとこ良いと思うわよ」
貴美に
悠をからかっている時が心底楽しそうだ。
「だから誤解だって。あれはしてないから」
「まあ、そういうことにしてあげる。で、どうやってしてたの? 手で?」
「ぐっ、全く聞いてねえ……」
「だって、男子って毎日してるんでしょ? こう、すこすこって感じに?」
どこで仕入れた知識なのか、貴美が手を動かしてジェスチャーする。
年頃の娘が変な手つきをして、悠の方が恥ずかしくなってしまう。
「もうなんなんだ、このエロい女子は……」
「ふふふっ、教えなさいよ」
電車に乗っている間、ずっと根掘り葉掘り内容を聞かれまくった。
やっぱり
毎日のように百合華とイチャイチャしまくっている割には、いつまで経っても女慣れしていないオーラを出しまくるドーテー感な悠だった。
――――――――
「到着! 私達は着替えてくるから、あんたは適当な場所で待ってて」
「うん」
スポーツ施設に到着し、それぞれ更衣室に向かう。
着替えに色々かかる女子と違い、男子は海パン穿くだけの簡単な作業だ。
すぐに着替え終わり、プール脇で女子達を待つ。
意外と若い人が多いな。
オシャレな陽キャスポットと違って、こういう公共施設って地味なイメージだったけど。
まあ、健全な感じで良いかもしれない。
目の前を歩く若い女性の尻を見て、健全なはずのイメージが少しだけ乱される。
いかんいかん!
健全、健全……
女性をエロい目で見たら失礼だ。
「おまたせ~っ!」
着替え終わった貴美達が登場する。
「ぐはっ、健全じゃなかった」
「は?」
「い、いや、別に……」
健全にしようと思っていた悠だが、同級生女子の大胆に肌を出した水着姿で、結局エッチな気分になってしまった。
「ちょっと、ハッキリ言いなさいよ!」
「何でもないって」
地味な競泳水着を想像していたのだが、予想に反して貴美達はビキニだった。
貴美は意外にも紐になっているタイサイドビキニで、瑞々しく健康的な肌を大胆に露出している。
他の二人も派手目な感じで、歩美はホルダーネックで胸を強調したようなビキニを、沙彩はフレアタイプで小さめなバストを水増ししているようだ。
「せっかく新しい水着を着てきたんだから何か言いなさいよ! あんたってば気が利かないわね」
ちょっとだけ貴美がご機嫌斜めになってしまう。
「ほらっ、明石君。こういう時は褒めるもんでしょ」
歩美に諭される。
ここでスマートに褒める男がモテるのだろう。
無論、悠にそんな気が利いたモテテクは無いのだが。
ぐっ……
ここは素直に褒めるべきなのか……
でも、エロいとか言ったら怒られそうだし……
お姉ちゃん以外の女子を褒めるのも抵抗感が……
「う、うん……良いと思うよ」
「どこが良いか具体的に言いなさいよ」
悠の簡単な感想を貴美は許してくれない。
もっとちゃんと褒めないとダメらしいのだ。
「えっと……中将さんは、その、大胆なビキニでエロいというか……」
「は、はあ?」
「野分さんは、胸が強調されてエロいし……」
「ちょっと! どこ見てんのよ!」
「東さんは、ヒラヒラしてるのがエロいから……」
「ふふっ……」
感想がエロいだけだった。
やっぱり百合華以外の女子を褒めるのは下手糞だった。
「うっわ、エロいばっかでサイテー」
貴美がジト目になる。
「あははっ、良かったじゃん貴美。エロい目で見てもらえて」
面白そうにしている歩美が、貴美をからかった。
「ちょっとアユ、やめてよね」
「ホントは嬉しいくせに」
「そんなんじゃないから!」
二人盛り上がる貴美と歩美を他所に、沙彩が悠の耳元で囁いた。
「明石君って、女は全員エロい目で見てそう」
「ちがっ、違うから……違わなくもないけど……」
やっぱりエロい目で見ていた。
いや、こんな水着の女子に囲まれてるんだからしょうがないだろ……
マズい……
他の女子の水着をジロジロみていたのがお姉ちゃんにバレたら恐ろしい事に……
「ほら、悠! 行くわよ」
貴美に手を引っ張られてプールに連れて行かれる悠。
楽しそうな顔の貴美と、ニヤニヤと何かを企むような顔をした歩美と沙彩。
波乱のプールイベントが始まった。
ここに来て悠は、竹川あたりの男子も連れてくるべきだったと悟る。
女子三人とプールでイチャイチャしているとあっては、姉の嫉妬を爆発させ更にキッツいオシオキをされてしまいそうだ。
いつもいつも姉にオシオキされる方向へ舵を切ってしまう悠。
もう、オシオキ欲しさに行動していると言われても仕方がない。
予想通り、百合華の超恐ろしいオシオキが待ち受ける未来になっているのだが。
この時の悠は、まだ何も知らず強気女子達に囲まれているのだった。
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