第66話 思い切り姉を甘やかす日

 完全に拗ねてしまった姉を前に、悠が何度も謝っている。

 悠自身も、こんなとんでも展開は予想していなかった。


 百合華の異常なまでのフェロモンに当てられた貴美達が、ほわほわ夢見心地になって少し際どい部分まで揉みまくってしまったのだ。

 全員が我に返った時には、何度も限界突破してぐったりの姉が転がっている始末。

 当然、怒った百合華に説教されてしまう。


 女子五人は何度も謝ってから帰宅し、今はプンスカ怒っている姉を前に、悠が正座して謝罪している状況なのだ。



「お姉ちゃん、ごめんなさい。そろそろ機嫌直してよ」

「つーん…………」


 相変わらず百合華は怒ったままだ。

 最愛の悠が見ている前で、他人の手で陥落させられてしまったのだ。

 これが女子だからまだ良かったものの、百合華としては納得できない。


「ううっ、どうしたら許してくれるのか……」

「ユウ君は、お姉ちゃんが他の人に触られても良いの?」

「もちろん嫌だよ」


 悠はキッパリと答える。

 大好きな姉を他人に触られるのは当然嫌なのだ。


「だって、あの子達全員にエッチなコトされちゃうし……先生なのに……あんなに何度も……姉の威厳が……」


 百合華としては少し厳しめの女教師で通っているのに、くっころ展開の女騎士のように堕とされてはプライドが傷付くのだろう。

 エッチに喘ぐのは悠の前だけにしたい。


「姉刑により、ユウ君は一日私を甘やかすコト!」

「えっ、それで許してくれるの?

「それで……?」


 百合華が立ち上がり悠の前に仁王立ちする。


「私を甘やかすのは厳しいんだよ! 私は『甘えん坊マスター』の称号を持ってるんだからっ!」

 変なスキルを言い出す百合華。

 きっと、悠の漫画に影響を受けているのだろう。


「先ず、他の子に触られたカラダをお風呂で隅々まで洗うコト!」

「えっ、俺が洗うの?」

「当然でしょ!」

「は、はい……」

「そして、あの子達に触られた場所全てを、ユウ君がキスで消毒するコト!」

「き、キスっ……」


 いきなりアウトなことを言い出す姉。

 全身キスとかエッチ過ぎだ。


「それはちょっとやり過ぎなような……」

「ユウ君! これは姉刑なんだからねっ!」

「はい…………」


 一線を超えるのを我慢し続けているのに、サキュバスのように魅惑的で煽情的で芸術品のように美しく、もう見るだけでドキドキする大好きな姉のカラダ中にキスは厳しすぎる。


「でも、最初に触ったのはお姉ちゃんだったような……(ぼそっ)」

 悠が呟く。


「ユウ君! 文句を言うと量刑を増やすよ!」

「い、いえ、文句などありません」


 多少横暴でも姉に絶対服従するのがシスコン弟というものだ。

 もう、百合華が満足するまで甘やかすしかない。


「はい、じゃあ、お風呂に……」

「言っとくけど、エッチなのは禁止だからね」

「難しい……」


 エッチにイチャイチャしたいのに、弟のエッチな手つきで陥落するのは姉の威厳が傷付くのでダメなのだ。

 これは難易度高すぎる。




 すぐに浴室に移動して一緒に入浴する。

 悠はタオルで目隠しをして、先ず姉の艶やかで綺麗な髪を洗い始めた。

 大切な姉の髪に何かあってはいけないと、優しく丁寧にシャンプーする。


「ふふっ、ユウ君って、目隠しして髪洗うの上手だね」


 百合華が少し苦笑した。

 姉の裸を見ないように気を使いながらも、上手にシャンプーしている姿が甲斐甲斐しくもあり面白くもある。


 もうっ、ユウ君ってば……

 可愛いんだから……

 私が怒るとションボリしちゃったり、でも私の為に尽くしてくれる。

 いつでも私の味方なんだよね。


 百合華は怒っているようでいて、実はそれほど怒っていなかった。

 年下女子に陥落させられたのは怒っているのだが、姉の為にあたふたする悠には慈愛の気持ちが勝っているのだ。

 ちょっと怒ったフリして、悠に目いっぱいサービスさせようと企んでいた。


 トリートメントやコンディショナーまで使い、完璧に髪を仕上げたら丁寧にタオルで拭いてゆく。

 最後にタオルを巻いて髪をまとめ完成だ。


「ユウ君、プロみたい」

「お姉ちゃんの髪を扱うのだから、これくらい当然だよ」

「もぉ、ユウ君、お姉ちゃんだいしゅきなんだよね」

「いつも言ってるだろ。俺が好きなのは、お姉ちゃんだけだって」

「ふふっ、嬉しいコト言ってくれるな、この弟はぁ、このこのぉ」

「ちょ、触るな!」


 好き好き言われてニコニコになった百合華が、悠のカラダを指でツンツンする。


「次は体を洗うから」

「はい、これがボディーソープ」


 目隠しをした悠の代わりに、百合華がボディーソープを取って手渡す。

 一連の動作が完璧なコンビネーションだ。


「はい、腕から行くよ」


 悠が、百合華の腕を取り泡立てたボディーソープを素手で伸ばしてゆく。

 スベスベできめ細やかな肌を悠の指が滑ると、百合華の表情がギュッとなり吐息が漏れる。


「ユウ君、わざとやってる?」

「は? 何のこと?」

「ユウ君の手つきがエッチなんだけど」

「ううっ、真面目に洗ってるのに……」


 そりゃ、大好きな者同士が素手で洗いっ子していればエッチに感じるのは当たり前なのだが、百合華としては悠の指がカラダの隅々まで撫でたり滑ったりする度に、何とも言えない心地良さと共にゾクゾクする快感を伴ってしまうのだ。


 すぐにでも一線を越えてしまいたいのに、健気に我慢する弟の姿を見ていると、温かく見守ってあげたいような少しイジワルしちゃいたいような、様々な感情が沸き上がってきてたまらない気持ちになってしまう。


 両腕を丹念に洗い終わり、悠の指が腋から背中に入ると、くすぐったくて百合華がクネクネする。


「ちょっと、やっぱりわざとでしょ?」

「ええっ、普通に洗ってるだけなのに」

「だって、少しおっぱいに当たってたし」

「あ、当たってないから!」

「ふふふっ、ユウ君、ちょっと興奮した?」

「してないから! したけど……」

「あはっ、したんだ」


 背中を洗い終わると一旦悠が離れた。


「前は自分で洗ってよね」

「えぇ~ 前もユウ君が洗ってよぉ」

「エッチ禁止なんでしょ」

「うぅ~」


 自分でエッチ禁止と言いながら不満そうな百合華。


「じゃあ、脚も洗って」


 不敵な表情をした百合華が女王然として魅惑的な脚を突き出す。

 思い切り脚を広げて凄い光景なのだが、目隠しをしている悠の前なので大胆極まりない。


「もう、しょうがないな」


 悠は、自分の膝の上に姉の脚を乗せて、大事なものを扱うように優しく洗ってゆく。

 足の指の隙間まで丁寧に丁寧に。


「ちょっと、くすっぐったい! ダメっ、きゃっ、もぉ~」

「うわっ、動くなよ」


 百合華が、もう一方の足で悠のあそこを突く。


 つんつんつん――――


「うわっぁぁ! イタズラするなって」

「ユウ君がピクピクしてるぅ~面白い~」

「ううっ、エッチ禁止なのに……」

「私は姉だから良いのっ!」

「理不尽過ぎるぜ……」


 こうして姉への奉仕を兼ねた全身洗体を終えた。

 その後は、百合華が悠のカラダを隅々まで洗うのだが……

 もちろん、思い切りエッチな手つきで。


 ――――――――




 風呂から上がりベッドに移ってからは、全身キスでのご奉仕だ。

 マッサージされか個所全てに悠がくちびるを押し当ててゆく。


「先ずは首と肩へ……ちゅっ、ちゅっ……」

「うむ!」


 続いてパジャマを捲り背中へキスをする。


「ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ……」

「はぁ、んっ……くすぐったい」


 更に腰へと続き、少しだけ下着をずらし尻の上の方へ。


「ちゅ~っ……」

「ユウ君、お尻だけキスが長いよね?」

「ち、違うから!」

「ユウ君のエッチぃ」

「ううっ……」


 お尻フェチの悠が、自然と尻へのキスが長くなったようだ。

 そして、百合華の足を持つと、足の裏にキスをした。


「ちゅっ」

「あ、あの……ユウ君、足の裏にまでしちゃうの?」

「えっ、ダメだった? ここもマッサージされた場所だし」

「え、あの、そのっ……ユウ君が良いなら問題ないけど……」

「何で?」

「だって……汚いし……」

「お姉ちゃんの体に汚い場所なんて一つも無いよ」

「んっ~~~~っ……」


 悠の言葉に百合華が真っ赤になる。

 大好きな悠から、そんなことを言われたら恥ずかしくなってしまう。


 悠にとって百合華は、神聖であり大好きな唯一のかけがえのない存在なのだ。

 足の裏だろうが何処だろうが、全てが綺麗で穢れなど無かった。


「ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、つつっ……ちゅぱっ」


 そのまま足首からふくらはぎに、太ももへとキスをし、最後に内ももへと入る。


「んっ、あんっ……くっ……」


 百合華は完全にスイッチが入って、そのまま更に上に行くのを期待する。


「はい、終わり」

「えっ! そこで終わりなのっ!?」

「えええっと……」


 期待通り行かず、百合華がご立腹だ。

 自分でエッチ禁止にしておきながら、エッチ無しだとこれである。


「今夜はユウ君の腕枕で寝るから! はい、腕寄こしてっ!」

「はいはい」


 ベッドで腕を伸ばした悠に上に、百合華が頭を乗せる。

 嬉しそうな顔になって幸せそうだ。


「ほらっ、頭ナデナデしてっ!」

「はいはい」


「キスもして! 私が眠るまでキスとナデナデし続けるコト!」

「はいはい」

「はいは一回!」

「はい……」


 おでこや頬にキスをして頭をナデナデする。

 悠の甘やかしで『とろ~ん』と蕩けた百合華が、悠のカラダをギュッとする。


「ぐへへぇ~ 攻めるのも良いけど、ユウ君に甘やかせるのも良いものだねぇ~」

 百合華が悠に甘やかされるのがクセになってしまったようだ。


「ユウ君、手が止まってるよ! もっとギュッてして」

「はいはい」

「はいは一回!」

「はーい」


 いつもの悪魔姉と違って、甘え姉も良いものだと感じる悠。


 甘えん坊マスターのお姉ちゃんも可愛いな……

 キツいオシオキされなくて助かった……

 いつも甘えん坊なら可愛いのに。

 でも、たまには攻めて欲しい気も……

 バランスが難しいところだぜ。


 甘え姉が気に入ってしまった悠。しかし、日々の調教で攻められるのを求める体にされている気もする。

 ただ、今は甘える姉をギュッとしていたい。


 愛情に飢えているような義姉を愛おしくも思う。

 そしてこの時は、またあの女性に会う事になるとは思ってもいなかった――――

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