第65話 お姉ちゃん完全敗北! まさかの展開で限界突破姉!

 二人きりのダイニングにキスと吐息の音だけが響く。

 何だか色々とアウト姉になってしまった百合華を、悠がキスで甘やかしてなだめていた。


「ちゅっ、んっ……お姉ちゃん……」


 百合華をギュッと抱きしめて、頭をナデナデする。

 荒ぶる姉を静める為に、悠の『超甘やかし』だ。


「どう? 落ち着いた?」

「はぅ~ん、ユウくぅ~ん、好き好き、だいしゅきぃ~」


 とろ~んっとしてしまった百合華が大人しくなる。


「もぉ、ユウ君。これからは、いつもそうやって私を甘やかすコト!」

「注文が多い姉だなあ。とりあえず静かにしていてよ。さっきみたいにエッチなことしてバレたらヤバいんだから」


 さっきみたいというのは、ズボンに手をかけ搾り取ろうとした事だ。

 さすがにアウト過ぎる。


「大丈夫だよ。バレないようにするから」

「大丈夫じゃねぇ……」


 不安を残しながら、悠は二階へと向かった。

 二階に女子軍団、一階に最強の姉、行くも戻るも修羅の道だ。




 ガチャ――――

 悠が部屋に戻ると、一斉に女子達が迫る。


「悠、ごめん! ちょっとやり過ぎちゃった。お姉さん怒ってた?」

 貴美が気まずそうな顔で謝る。


「あたしも調子乗ってたっつーか……悪かったな」

 真理亜もすまなそうにしている。


「もう、あまり騒がないでよ。お姉ちゃんが怖いんだから。あと、特に東さん。変なこと言うとお姉ちゃんが本気にするからやめてくれ」


「はーい、ごめんなさい。明石君」


 悠に注意されて沙彩が少しだけ反省した顔になった。

 普段は大人しいのに、喋ると危険人物なのだ。

 彼女が喋り出すと姉に変な影響が出てしまいそうで怖い。


「でも、明石先生って彼氏いるのかな? ああいう堅物っぽくて怖そうな女性ほど、彼氏の前でだけ凄い甘えたり乱れたりしそう」


 反省したのも束の間、再び沙彩が話し出す。

 そして、それは当たっていた。


「あるある」

「先生って、そんな感じかもな」

「きゃぁ、それある!」

 女子達が盛り上がってしまう。


 もう……

 皆、勝手に俺のお姉ちゃんを……

 確かにお姉ちゃんは外と家とのギャップが凄いけど。

 しかし、言われてみれば、外でのお姉ちゃんは気高い女騎士みたいで、『くっころ展開』とか『後ろあっちが弱い』とか似合いそうな……


 お、俺は何を考えているんだ!

 神聖なお姉ちゃんを、そんな凌辱展開みたいな……

 くっ、しかし……神聖で気高いほど似合いそうだぜ!


 悠が姉で『くっころ展開』を想像していた頃、女子達は教科書を広げ勉強を始める。

 テーブルが小さくて五人でもキツキツで悠の入る隙間は無いようだ。


「俺は机でやるから」

 一人離れて机に向かう。

 これなら女子と密着せす姉の嫉妬も回避出来そうだ。


 暫くは、そのまま静かに試験勉強を続ける。

 悠は、チラチラと少し女子の方を気にしながら机に向かっているが、どうしても女子達の生足や部屋に充満する良い匂いが気になって仕方がない。


 くっ……

 俺の部屋に女子が五人も……

 気にしないようにしようとしても気になってしまう。

 狭い部屋に女子の匂いがムンムンだぜ!

 しかも、皆ミニスカートとか生足出しまくりだし。


 悠がチラチラ女子の生足を見ていると、沙彩と目が合いニヤッと意味深な顔をされる。


 し、しまった!

 チラ見しているのがバレたか……

 いや、一瞬だし分からなかったはず……


「あぁーっ! 明石君、私達の脚をジロジロ見てた」

 非情にも、沙彩が速攻でバラしてしまった。


「ちょっと、悠! やっぱ、あんたエロい目で見てんじゃないの!」

 貴美がジト目で睨んでくる。


「もう、明石君ってば、やっぱりエッチなの想像してたんだ」

 当然のように歩美も同調する。


「おい、明石はドーテーなんだからしょうがねぇだろ。あんま責めるなよ」

 真理亜は庇ってくれているようだが、ドーテーを強調するのは恥ずかしい。



「くっ、ちょっと見ただけなのに……」


 女子達に一斉に責められ、悠があわあわしてしまう。

 こんなリアクションをするから、更にSっぽい女子を喜ばせてしまうのだが。


「ねえ、誰の脚を見ていたのかしら?」

 葵が余計な事を言い出した。


「それ気になるわね。悠、誰の脚が一番好みか言いなさいよ」

 葵の言葉に貴美が対抗意識を燃やしてしまう。


「い、いや、皆さん同じくらい魅力的で……」


「ちょっと、悠! そんなので納得できると思ってんの?」

「そうです、もちろん私の脚が一番ですよね?」


 案の定、貴美と葵が張り合ってしまう。

 そして沙彩が『計画通り!』といった顔をする。


「ねえ、明石君。もっと近くでじっくり見て決めた方が良いんじゃない?」

 沙彩が更に余計な事を言い出す。

 もう、わざと楽しんでいるようだ。


「そうね、悠、ちゃんと見なさいよ」

「恥ずかしいですけど、しっかり見て決めないとですね」

「面白そう! 私も参加で!」

「あ、あたしのも見ろよな。明石……」


 貴美と葵だけでなく、歩美と真理亜まで参加してしまう。

 皆のところに連行された悠は、女子達の瑞々しい脚に囲まれてしまった。

 ニヤニヤとしている貴美と歩美、少し恥ずかしそうな葵、意外と照れている真理亜、状況を楽しんでいる沙彩、全員の脚が悠の眼前に迫って張り付きそうだ。


 何だこれ!

 何で俺は、いつもいつも囲まれる運命なんだ。

 てか、近いんだけど!

 瑞々しく健康的な中将さんの脚も良いけど、すらっと細く綺麗な六条さんの脚も良い、だが俺はお姉ちゃんの足が最高なんだ。

 こんなの選べないぜ!


 迷っている悠に痺れを切らし、女子達が足を上げぐいぐい迫る。

 もう、五人の女子に踏まれそうな勢いだ。


「ほら、明石君。早く決めないと踏んじゃうよ」

 もう計画通りと言わんばかりに、沙彩が皆をそそのかして悠を踏もうとしている。

 最初から、これが目的だったのだろう。


「悠、何か私も変な気分になってきちゃったかも」

「中将さん、目を覚まして!」

「目を覚ますというか……目覚めたかも?」


 元からSっぽかったが、貴美が目覚めてしまったようだ。


「明石君、私も何だかドキドキします」

「六条さん、そっちに行っちゃダメだ!」

「ふふっ、もう行っちゃってます」


 葵も行っちゃったようだ。


「あ、明石……あたしも良いかな? 別にそういう趣味じゃねーんだけど」

「いやいやいや、夕霧さん! 凄く嬉しそうな顔してるし!」


 真理亜の中で抑えていた感情が爆発しそうになっている。


 悠は迫りくる女子の足に、為すすべなく防戦一方だ。

 だが、ここで姉以外のオシオキを受けるわけにはいかない。

 オシオキは姉一択なのだ。


「ぐわぁっ、俺は屈しないぜ!」


 ガチャ!

「こらっ、全然勉強に身が入ってないじゃない!」


 五人女王様に攻められるアブノーマルプレイが始まりそうな瞬間、ドアが開いて百合華が入ってきた。

 またしてもイチャイチャしているのを見られてしまう。




「「「すみません……」」」


 百合華の説教をくらって全員が正座になる。

 イスに座り見事なまでに美しい脚を組んだ百合華の前に、まるで下僕のように跪いてしまった。

 そして、やっぱり百合華の脚が一番だと悠は思った。


 結局、昔と同じように姉監視の下での勉強会になる。

 女王のように威厳のある百合華に、女子達も服従してしまい誰も逆らえない。

 悠と二人の時の少しズボラでおバカな感じなのとは大違いだ。


「この三角比・三角関数の基本となる公式は重要だから確実に暗記して」

「はい」

「この公式でsinθは斜辺と対辺の――」


 悠にベタベタしないように監視しながらも、貴美達に勉強も教えてあげる百合華。

 何だかんだ言っても優しかった。




 日も傾いてきた頃、一通り勉強も終了間際となる。

 百合華の指導で悠も女子達も理解が深まったようだ。


 そこで終われば素晴らしい姉なのだが、ちょっとイタズラ心が湧いてしまったようで――――


 一人離れて机で勉強している悠を教えていた百合華が、女子達から見えない死角を使って悠のあそこに手を伸ばす。

 女子達とイチャイチャしまくっていたヤキモチと悠にオシオキしたい欲求が、そろそろ限界でドロドロとした疼きが腰の奥でウズウズと渦を巻いているのだ。


 さわさわ――――


 ちょっ、待て!

 お姉ちゃん……

 何で触ってんだよ……

 こんな人が多いのに、バレちゃうだろ!


 下手に声を上げたりリアクションを取ればバレてしまう為に、悠は我慢して触られ続ける。


 ううっ、何とか止めさせないと……

 そうだ!

 気高い女騎士は後ろが弱いのかもしれない!

 それだっ!


 何を勘違いしたのか色々と限界な悠は、気高い女騎士百合華の後ろを触ってしまう。


 ピトッ!

「ひゃん!」


 百合華が変な声を上げて、一斉に女子達の視線が集まる。


「どうかしましたか? お姉さん」

 貴美が心配そうに声をかける。


「い、いえ、何でもないのよ」


 百合華は気丈に振舞うが、腰の辺りがビクビクしている。

 悠の攻撃が危険な場所にクリティカルヒットしてしまったようだ。


「お姉ちゃん、疲れているみたいだから。肩とか足腰がこってるみたいだし」

 誤魔化そうとして悠が肩こりのせいにする。


「じゃあ、勉強を教えてもらったお礼に、私達がマッサージしますよ」

「OK、あたしも手伝うぜ」


 貴美だけでなく他の女子までマッサージに参加してしまう。

 元から欲求不満でムラムラしていたのを、悠のクリティカルヒットで昂らせてしまい、更に女子全員から体中を揉みまくられる事態になってしまった。


「ちょっと、マッサージなんてしなくていいのよ」

「いいからいいから、任せて下さい」


 貴美にうつ伏せに寝かされて肩を掴まれる。

 首筋に手が入った時に、百合華のカラダがビクッとなった。

 葵が背中を、真理亜が腰を、歩美と沙彩がそれぞれ脚をマッサージする。


「んんっ、あっ、うっ…………」


 真理亜の手が敏感になっている腰に入り、完全に出来上がってしまった百合華のカラダが痙攣する。


「あれ? くすぐったかったですか?」

「んんんん~~~~~~っ!」


 歩美と沙彩が芸術品のように美しい百合華の脚を容赦なくまさぐる。


「先生の脚、凄く綺麗!」

「スベスベで気持ち良い……」


 ベタベタベタベタ――――


 余りの気持ちいスベスベの肌に感動した女子達が、調子に乗ってモミモミしまくってしまう。

 腋へ!

 背中へ!

 脇腹へ!

 尻へ!

 内ももへ!

 足の裏へ!

 魔性の女である百合華の超強力なフェロモンは女子さえも狂わせてしまうようだ。

 夢見心地になった女子達は、容赦なく十本の手でモミモミしまくり止まらない。


「ふぁ、うぐっ、ああっ……っ、あっ、あんっ……」

 ビック、ビック、ビック、ビック!


 まさかの事態に、百合華が完全に陥落してしまう。


 ダメっ!

 すっごいの来ちゃう!

 ユウ君の前で他の女に堕とされるのなんて……

 ダメぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!


 トロトロに蕩けてよだれを垂らした姉の顔を見た悠が動揺する。

 角度的に百合華の顔は悠だけに見えていて、カラダ側にいる女子達には見えていない。


 マズい……

 何か余計な事を言ってしまったような……

 とにかく、お姉ちゃんの顔を隠さないと。

 こんな顔、誰にも見せられない。


 近くにあったタオルを姉の頭にかける。


「お、お姉ちゃん……俺もヘッドマッサージするよ」

 機転を利かせて、ヘッドマッサージという事にしてタオルで姉の顔を隠し、頭をモミモミとマッサージする。



 その日、百合華は計十二本の手により敏感なカラダを揉みまくられいじくられ、寄せては返す波のような快感をくらい続け、何度も何度も堕とされてしまった。

 悠は、他の女子達にだけはバレないように、姉の顔を隠し声を上げそうになると口を押え続けた。


 ちょっとイタズラしようとしただけの百合華が、まさかの無意識な悠の大反撃で完全敗北してしまったのだった。

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