第64話 同級生女子達の発言で更に火がついてしまうお姉ちゃん
あっという間に日曜日を迎え、クラスの女子達が明石家に訪れる。
悠は連日のオシオキに耐え、何とかこの日を迎えたのだ。
「こんにちは」
「お邪魔します」
「お世話になりまーす」
「あら、いらっしゃい」
悠よりも先に待ち構えていた百合華が顔を出す。
「あっ、お姉さん、今日はラフな格好なんですね。いつもスーツでバリっと決めてるから」
憧れのお姉さんを見つめる眼差しで、貴美が話しかける。
「そうかしら? いつも家ではこんな感じなのよ」
こんな感じと言いながら、普段と全く違う雰囲気で話す百合華。
いつものぐでっとしたエロ姉と違い、今は気品漂う高貴なイメージだ。
まあ、普段は服を脱ぎ散らかして下着姿でウロウロしているのだが。因みに脱ぎ散らかした服は、悠が拾い集め洗濯カゴに入れていた。
カラダを見せつけて誘惑したい姉と、健気に姉の世話を焼きたい弟のコンビネーションだ。
いつも張り合って変なコスプレしたがるので、今回は事前に悠がコスプレ禁止令を出していた。
スーツならまだしも、セクシー過ぎるドレスやエッチなホットパンツになっては気まずいし、無用な誤解を招いてしまいそうだ。
ドタドタドタ――――
悠が二階から駆け下りる。
先に姉に出られてしまったが、そのまま対応させるには危険なのだ。
「どうぞ、上がって」
「「「「「おじゃましまーす」」」」」
女子が五人も集まって騒々しくなりながら二階に上がる。
「悠、後でお茶とお菓子を取りに来て」
「うん……」
ここまでは何も問題無く進んでいるが、悠は一瞬だけ百合華の目が光ったのを見逃さなかった。
お姉ちゃん……
変な事しないよな……
まさかな……
でも、昔も隠れてエッチなイタズラしてきたし……
もちろん百合華はエッチなイタズラする気満々だった。
愛しの悠が部屋で女子五人とベタベタするなど許せるはずもなく、他の女が悠に手出しするのを防ぎつつ、隠れてイチャイチャしまくるつもりなのだ。
ガチャ――――
悠が最後に入りドアを閉めると、部屋の中は女子だらけで凄い光景だ。
まるでハーレムのような。
ハーレムというにはヒロイン達が怖すぎるのだが。
「ねえ、この前言ってたエッチなアニメは?」
「中将さん、ベッドの下を漁らないで!」
「この本棚が怪しいわね」
「六条さん、そっちも漁らないで!」
「あっ、私も漁りたい!」
「野分さん、漁らなくていいから!」
「ふふっ、このベッドで明石君が一人エッチを……」
「してないから! 東さん!」
「あ、明石、あたしも何かした方が良いのか?」
「夕霧さんが一番マトモだった」
「それ、褒められてんの?」
真理亜だけ静かに座り、他の四人が部屋を漁りだす。
男子の部屋が新鮮でエッチな物を漁りたくてウズウズしているのだ。
その点、経験者な真理亜は落ち着いていた。
「いい、お茶を取りに行くから、絶対に漁らないでよ」
悠が念を押す。
エッチな姉萌え漫画が見つかってしまえば、シスコンなのがバレてしまう。
「私達を気にせず早く取りに行きなよ」
貴美がテーブルの前に座り答える。
「絶対だよ」
「分かった分かった」
ガチャ!
「と、思うじゃん」
「捜索開始」
悠が出て行くと、貴美と歩美が再び動き出す。
そのくらいで止まるような女子ではなかった。
貴美達を気にしながら一階に下りた悠は、キッチンでお茶を用意している百合華のところに向かう。
「あっ、ユウ君。お茶が準備出来たよ」
「ありがとう、お姉ちゃん」
お茶とお菓子を乗せたお盆を持った悠に百合華が話しかける。
「ユウ君の部屋のエッチなのは、全部お姉ちゃんの部屋に移しておいたから安心して」
弟想いの優しい姉だった――――
「くっ……安心したけど、俺のプライバシーはどうなってるんだ」
悠の性癖は全て姉にバレバレだった。
因みにエッチな漫画の内容は、全てオシオキに応用されているのだ。
尽く悠のフェチをストライクで突いてくるのはその為である。
「じゃあ、行くから」
「ユウ君、忘れ物だよ。ちゅっ!」
両手でお盆を持って避けれないのよ良い事に、百合華がキスをする。
これは予想通りだ。
「ふふっ、両手が塞がってるユウ君を見ると、もっとしたくなっちゃうかも」
「もう予想通りのお姉ちゃんだぜ……」
「ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ!」
キスの連打を受けてから解放される。
階段を上りながら、悠は姉の攻撃を警戒していた。
お姉ちゃん……
必ずエッチなことをしてくるはずだ。
警戒しておかないと。
ガチャ!
悠が部屋のドアを開けると、貴美達が部屋を漁っている最中だった。
「ちょっと悠、何もないじゃない」
エッチなアイテムが見つからず貴美がガッカリ顔だ。
「トレジャーハンターかよ……」
姉の攻撃の前に貴美たちの攻撃を警戒するべきだと悠は思った。
「おかしい、絶対エッチなの隠してるはずなのに」
「年頃の男の子って、皆一人エッチしてるんでしょ?」
貴美と歩美がノリノリだ。
「まったく……俺の一人エッチの痕跡を探してどうするつもりなのやら」
悠が呆れていると、沙彩が相変わらず小声で危険な囁きをする。
「そりゃ、恥ずかしいネタで明石君を脅して、もっと恥ずかしいコトさせるとか?」
「くっ……何で俺の周りには怖い女ばかりなんだ……」
怖い女ばかり引き寄せてしまう悠が嘆く。
いまだに悠の独特の雰囲気が、Sっぽい女子の嗜虐心を誘ってしまう事に気付いていないようだ。
「ほら、早く勉強するわよ」
貴美が悠の隣の席を確保して肩を寄せてくる。
「ちょ、中将さん、近いって」
「おい、貴美! おまえ、くっつき過ぎだろ」
人にくっつき過ぎと言いながら、真理亜も反対側を確保して肩を寄せる。
「面白そう、私も」
歩美が後ろからくっついた。
「ちょっと、アユ! あんたはくっつくな!」
「なになに? 貴美ってば嫉妬?」
「ちがうし!」
「ねえ、このまま明石君を
とんでもない事を言い出す沙彩。
皆で悠を裸にして辱めたいらしい。
「あ、えっと……サーヤの彼氏になる男って大変そうだよね」
さすがの貴美も、沙彩のサディストっぷりには引き気味だ。
「ちょっと、助けて! ろ、六条さん」
女子四人に密着された悠が、最後の希望六条葵に助けを求める。
「いけないことだと分かっているのですが、何故だか沙彩さんに色々教えて頂き、私も男子を辱めてみたい欲求が沸々と……」
葵まで影響されていた。
面倒くさい性格の葵にドS属性まで加わったら、更に恐ろしいことになるかもしれない。
コンコン!
「悠、入るわよ」
ガチャ――――
百合華がドアを開けた。
「あっ…………」
悠が女子達に密着されているのをバッチリ見られてしまう。
「お菓子をもってきたわね」
テーブルの上にお菓子を置いて、笑顔のまま悠の方を向くと、少し威圧感を増した百合華が眉をピクピクっとする。
「悠、勉強会で試験勉強するのは立派よ。でも、部屋に女子ばかり集めて如何わしいことをするのは見過ごせないわね。姉として教師として、後で厳しい躾けが必要みたい」
「ううっ……ご、ごめんなさい……」
余りの姉の迫力に、悠がビクビクと震える。
ただでさえ女子を五人も部屋に呼んで嫉妬しているところに、密室でベタベタしているのを見られて絶体絶命だ。
「あの、お姉さん。悠を責めないであげてください。悠も性欲が盛んな年頃だし、私達のような女子をエッチな目で見ちゃうのは仕方がないと思うんです。そ、それに、そろそろ彼女も欲しいと思ってるみたいだし……」
貴美が悠をフォローしてくれているようで、完全に逆効果な発言をしてしまう。
彼女も欲しいの部分で少しだけ顔を赤くして、まるで自分が彼女候補のような印象だ。
「そうですよ。こいつはエロい目であたしらを見てるけど、本当は凄く良いヤツなんです。あたしも気に入ってるというか……」
真理亜までフォローに回る。
悠の良さを伝えようとしているが、これも彼女候補のような感じで逆効果だ。
「先生、明石君くらいの年の男子は、余り厳しく締め付けているとダメですよ。適度に発散させておかないと。溜まり過ぎは逆に問題を起こしてしまうかもしれません。私で良ければ弟さんの欲求の捌け口に」
沙彩がトドメを刺した。
姉の前で恥ずかしげもなく、とんでも発言連発だ。
百合華でさえ我慢しているのに、自分が射〇管理に立候補しているように見える。
大人しそうな顔でドエロ発言する沙彩に、貴美達まで固まってしまう。
悠は、援軍が来たのかと思ったら、まるで後ろから刺されたみたいな感覚になる。
くっそ……
フォローしてくれてるのは嬉しいけど、それ全部逆効果だから……
それじゃまるで俺が溜まり過ぎて、同級生女子を狙ってるみたいだろ。
「そうね。私が厳しくし過ぎたのかもしれないわ。これからは悠にも発散させるようにしようかしら」
百合華が皆の意見を受け入れ、物分かりの良い姉になった。
この発言の意味するところは、これからは悠を搾り取って発散させようという事かもしれない。
「悠、もう一つお菓子があるから下に取りに来て」
「はい…………」
何かの合図のような『下に取りに来て』で悠が身構える。
これは絶対にタダでは済まないだろう。
百合華に続き階段を下りる。
無言の姉が更に恐怖を誘う。
二人でダイニングに入ったところで姉が激変した。
「ゆゆゆ、ユウ君! そんなに溜まってるの!? お姉ちゃんが気持ちよくしてあげるからね」
「うわぁぁぁぁ~ ズボンを下すな! 待て待て!」
「だって溜まってるんでしょ?」
「今はマズいって! バレちゃう!」
「じゃあ、後なら良いの?」
完全に百合華に火をつけてしまった女子達。
益々追い詰められる悠と、攻撃力を上げてしまう百合華。
エッチも結構だが勉強もやって欲しいところだ。
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