第33話 サキュバスロードお姉ちゃんと愛の暮らし
チュン、チュン、チュン――――
窓の外で朝日を浴びた小鳥が鳴いている。
悠は姉の恐ろしさを思い知り、勝ち目のない勝負をしてしまった自分を嘆いた。
(しまったぁぁぁぁ! 万に一つも俺に勝ち目なんて無かった。 何故、勝負しようなんて思ってしまったんだ。 お姉ちゃんが最強過ぎる!)
ベッドに寝る悠の隣には、幸せそうな寝顔をした百合華がいる。
まるで朝チュン展開のようなのだが、厳密に言うと朝チュンではない。
一晩中、愛情たっぷりなキスをされまくったのだ。
それは魅惑と催淫を同時攻撃する百合華のキス。身を焦がし全てを蕩けさせるような愛の調教を受け、細胞の一つ一つのレベルにまで隷属の証を刻み込まれてしまうような。
そう……
「ユウ君、そろそろ寝よっか」
「じゃ、そういう訳で……俺は部屋に戻るから」
ガシッ!
自室に戻ろうとする悠の手を百合華が掴む。
「ユウ君、どこ行くのかな?」
「だ、だから部屋に……」
「あれあれ~勝負はユウ君の不戦敗で良いのかな?」
「うっ…………」
「ユウ君が不戦敗になると、お姉ちゃんの勝ちなんだよ。絶対服従だよ」
そう言いながら服を脱ぐ百合華。
「服を脱ぐなっ~」
「ええ~っ、お姉ちゃんは、寝るときは裸って決めてるんだよぉ~」
「いつもパジャマだろ」
「ちぇっ、バレたか」
ちゃっかり裸で添い寝しようとしていたエロ姉を止めたのだが、結局添い寝はすることになりベッドに引きずり込まれる。
告白してから初の添い寝とあって、二人とも以前とは比べ物にならないくらい気分が昂っていた。
「ユウ君……んっ……」
「うっ……くぅ……」
両手の指を絡ませてダブル恋人つなぎをしながら、情熱的なキスをする。勝負とか言っておきながら、どう見ても既に熱々カップルのようだ。
こんなラブラブなキスは恋人同士でなければしないはずだろう。
最初は頬に、次にくちびる以外に、そしてくちびるに。
どんどん侵攻する姉の猛威に、防戦一方になってしまってしまう悠。
素直でお人好しな悠は、姉のおねだりをちょっとずつ許してしまい、結果的にすっごいことになってしまったのだ。
「はむっ、ちゅっ……んっ、ちゅぱっ……」
「んんっ……あうっ……ちゅぱっ……お、お姉ちゃん、もう寝ようよ」
「ダメっ、朝まで寝かさないから」
「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」
激しいディープキスをしたかと思えば、ついばむような可愛いキスをしたりと、緩急つけた愛が溢れるキスの嵐で寝かせてもらえない。
両手をギュッと恋人つなぎされ全く抵抗できないまま、くちびるに頬に耳に首筋に
誰も助けが来ない二人きりの家で、悠はサキュバスお姉ちゃんの調教を、じっくりたっぷり体の奥まで刻み込まれていった。
こうして、超ラブラブな夜は明け、まるで朝チュン展開のような朝チュウ展開になってしまう。
一晩中キスで焦らされまくった悠は、もう精も根も尽き果てフラフラだ。
健気に我慢する悠の姿に、百合華のハートがキュンキュンしまくり、もう思いっきり甘えまくって色々なところにキスをする。
天国のような地獄のような、よく分からない超高レベルな一夜だった。
「ふにゃぁ~ユウくぅ~ん……むにゃ~」
横で百合華が寝言を言っている。
「うっわぁぁぁぁぁぁ! ど、どうしよぉぉぉぉぉ!」
悠は頭を抱えた。
「いや、待て……今日は親が帰ってくるし、お姉ちゃんも普通に戻るよな。そうだ、きっとそうだよ――――って、そんなわけねぇぇぇぇ!」
自分で自分にツッコむ。
「お姉ちゃんのことだから、『親に隠れてするエッチは背徳感いっぱいで最高だねっ』とか言いそうだ。ととと、とんでもないエロ姉だったぁぁぁぁぁぁ!」
「んんっ、んあっ、もぉ~ユウ君、朝からうるさいよぉ……」
悠の叫びで百合華が起きてしまう。
気だるげに起きた顔に髪がハラリと掛かり、たまらないセクシーさだ。
そのまま悠の方にしな垂れかかり腕を絡ませる。
「んあぁ~ん、ユウくぅ~ん……おはようのキスちょーだい。んっ」
そう言って、くちびるを突き出す。
一晩中キスしまくったのに、まだまだ足りないらしい。
「うわぁぁぁぁ! こんなエチエチ生活してたらバカになりそう!」
そんなことを言いながらも、おはチュウはちゃっかりとする悠なのだ。
◆ ◇ ◆
二人で朝食をとりながら、悠はエロ姉にエッチ禁止の釘をさしていた。
「親が帰ってきたらエロいことやめろよな」
「ええ~っ、どうしよっかな?」
「もう不安しかねぇ……」
「ふふふっ、ふふっ……『お姉ちゃんだいしゅき~』」
「しゅき~とか言ってないから!」
幸せオーラ全開で悠の声真似をする百合華がフヒッっていて少し怖い。
もう、このエロ姉は悠の告白ネタをすっと引っ張りそうだ。嬉しくてたまらないのだろう。
「はぁ~昨日のユウ君は可愛かったなぁ~スマホで録画しておけば良かった」
朝から淫らな百合華が、アウトっぽいことを呟く。
「ねえっ、もう一回言ってよ。『お姉ちゃんだいしゅき~』って」
スマホを構えながら、とんでもない発言をする。
「絶対言わない。てか、しゅき~とか言ってないし」
「えええぇ~っ、ケチぃ」
食後もイチャイチャしまくっていて、放っておいたら一日中イチャコラしまくりそうだ。
「お姉ちゃん、たまには何処か遊びにいったら?」
「ええぇ~ユウ君と遊ぶ」
「もしかして、これずっと続くのか?」
「一生続くと思うよぉ~」
「マジか……」
夜は悪魔のような姉が、昼はネコのようにニャンニャンと甘える。
好き好き大好きお姉ちゃんの悠でさえ、若干ひき気味になるほどだ。
ガチャガチャ――――
その時、玄関の方から鍵を開ける音が聞こえた。
きっと事故の影響で旅行が取り止めになり、両親の帰宅が早まったのだろう。
「あっ、親が帰ってきたみたいだよ」
キラァァァァァァーン!
悠の声に、百合華の目がエッチに光る。
「ふふっ、ユウ君……ちゅっ」
「わぷっ……んんっ……」
親の帰宅に合わせるように、わざと百合華がキスを始める。
「んっ、ちょっ、ダメ! バレちゃう……」
「ちゅっ、ちゅぱっ……ほぉら、ユウ君、お父さんたちが来ちゃうよぉ~ちゅっ……」
わざとスリルを味わうようにキスをして、とことんエッチに追い込んでくる。
やっぱり昼間も悪魔姉だった。
ガチャ!
バタン――――
「ただいま」
「帰ったわよ」
玄関から両親の声がする。
「んんんんっ~~~~!」
「あむっ、ちゅっ、ちゅぱっ」
(お姉ちゃん……もうダメだ……バレちゃう……)
悠が背徳感と羞恥心と焦燥感で、失神しそうなほどにカラダが快感で震えたその時、百合華が瞬時に離れて、まるで何も無かったかのように玄関に向かった。
「おかえりなさい。大変だったね」
「ああ、とんだ災難だったよ。まさか事故に巻き込まれるなんてな」
「本当に怖かったわ。あのまま崖下に転落するのかと思って……」
普通に両親と会話している。
凄い胆力だ。
「怪我が無くて良かったよ」
「子供たちを残して死ねないわよね」
幹也と絵美子が、お互いの顔を見て無事を喜び合う。
「お、おかえり」
悠もリビングから顔を出した。
「悠君もただいま……あれ? 悠君、顔に怪我してるぞ」
幹也が悠の顔の怪我に気付いた。
昨夜のナンパ男と揉み合った時の怪我は大したこと無いのだが、百合華が一晩中くちびるを吸いまくって少し腫れてしまったのだ。
(ユウ君ごめん……お姉ちゃんが興奮して強く吸い過ぎちゃったかも……)
百合華が気まずそうな顔をする。
「お、おい、百合華……」
それを見た幹也が盛大に誤解した。
「えっ、私じゃないよ。ちょっとだけ私のせいでもあるけど……」
「いくらスパルタ教育といっても体罰は……」
やっぱり誤解しているようだ。
「お姉ちゃんのせいじゃないよ。俺が勝手にぶつかっただけだし」
「そうなのか……」
悠本人の申し出もあり、幹也は訝しみながらも納得した。
「もうっ! 私がユウ君を殴るわけないでしょ!」
幹也に誤解されて、百合華がプンスカ怒っている。
姉のプク顔も可愛いと悠は思うのだが。
リビングに移動して家族四人でテーブルを囲む。
一時はどうなるかと思ったアクシデントだが、こうして無事に帰って来て、皆でほっと胸をなでおろした。
「二人が無事で良かったよ。事故が起きたって聞いた時は、お姉ちゃんが大泣きして大変だったんだから」
「ちょっと、ユウ君! 何で言っちゃうのよぉ」
百合華が慌てる。
一晩中攻められ続けた悠の、ちょっとした仕返しのつもりだ。
「百合華らしいわね」
「ははっ、心配かけてすまんな」
リビングに笑い声が広がる。
こうして笑っていられるのも、無事に帰ってこれたからなのだ。
ほんの少しの偶然が運命を変えるのだとしたら。
もし、親の再婚相手が違っていたら。
何百万分の一の確率で二人が出会うことができたとしたのなら。
悠も百合華も、この運命のような最愛の人と出会えた奇跡を、運命を司る何かに祈らずにはいられなかった。
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