第32話 誓約の証、永遠を誓うキス
姉に引っ張られて部屋に連れ込まれる。
やはり添い寝という事なのか……
いや、このテンションの姉では、添い寝ではなく合体まで行ってしまうかもしれない。
このままでは悠のドーテーデイズも風前の灯火だ。
「ちょっと、お姉ちゃん。待って」
「待てない……もう、待てないもん」
「えっ」
百合華の顔が真剣だ。
「ユウ君が悪いんだよ。今まで私がずっと誘惑していたのに、全然受け入れてくれなかったんだもん。それなのに、私のこと大好きだって……」
「それは……」
「大好きだって告白されたり、永遠に守るとか幸せにするとか言われたら、我慢できなくなっちゃうよぉ~」
「やっぱり、お姉ちゃんも俺の事を好きだったの?」
「好きに決まってるじゃん! あんなに好き好きアピールしてたのに。好きじゃない人とキスしたり添い寝したりしないもん」
「た、確かに……」
悠は今頃になって、過去の姉の好き好きアピールを思い出して納得する。
そうだった……
お姉ちゃんが好きじゃない人とベタベタするわけがなかった。
姉の友人のマキが言っていたのだ。
何人もの男が告白してきたのに全部ふってしまったのだと。
男嫌いなのかと誤解されるほど、男からのお誘いを断っているのだと。
いつも講義が終わるとサークルもコンパも断り、真っ直ぐ家に帰って来るのだ。
休日も家でゴロゴロしているか、悠とイチャイチャしていた。
完全に悠しか見ていなかった。
うっわぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!
最初から相思相愛だったぁぁぁぁぁぁーっ!
悠は、今頃気付いた――――
う、嬉しい……
お姉ちゃんも俺が好きだったんだ。
両想いだったんだ。
でも……
「ほらほら、お布団に行きましょうねぇ~」
「ちょっと待って、お姉ちゃん」
「だから待たないって。お互い好き同士なんだから、お布団に
姉の肩を掴んで真面目な顔をする。
そして真っ直ぐに見つめる。
「俺は、お姉ちゃんが大好きだし一番大切なんだ」
「ユウ君……」
「だからこそ、俺が責任をとれるようになるまで待つよ。進学して責任をとれる歳になってから付き合う。いつか両親にも認めてもらえるようにする! 絶対にお姉ちゃんを幸せにするから!」
「ううっ……」
真っ直ぐな瞳で見つめられ、真摯な言葉で告白され、百合華は感動と昂揚とじゅんじゅわー的な感じになってしまう。
もう、幸せ過ぎておかしくなりそうなくらいに。
普段からちょっと変なのだが、それはそれこれはこれだ。
ユウ君……
そんなに真剣に私の事を……
嬉しい……凄く嬉しい……
でも……
エロまっしぐらな自分が恥ずかしいよぉ~
でもでもぉ~このままなんて生殺しだよぉ~
ユウ君の気持ちは分かるし大切にしたい。
でも、私も限界なんだよぉ~
毎晩一人でイケナイ事ばかりして、淋しくておかしくなっちゃいそうなんだから。
ここは、ユウ君の気持ちを尊重して本番を控えながらも、スキンシップを超えて思いっ切りイチャイチャする方向に誘導し、更に我慢できなくなったユウ君から『おねだり』するように仕向けないと……
百合華は一瞬で色々と策を考える。
「だから、今日は大人しく――――」
「ユウ君の気持ちは、すっごく嬉しい。ありがとね」
「お姉ちゃん」
「でもでも、ホントに我慢できるのかな?」
「えっ?」
ここで百合華の口元に笑みが浮かぶ。
「ユウ君が我慢できなくなっちゃって、お姉ちゃんにエッチな事をしちゃうかもしれないよ」
「うっ、それは……」
そうなのだ。
今までも超我慢しているのに、何度も暴走しそうになっているのだ。
ますます魅力も色気も増す最強の姉に、悠自身どこまで我慢できるのか分からなかった。
「我慢してみせるよ」
「ホントかなぁ~?」
「絶対耐えてみせる」
「じゃあ、もしユウ君が我慢できなくなっちゃったら?」
「へっ?」
「ユウ君が我慢できなくなっちゃったら、オシオキで良いよね」
「うん、我慢するから」
「じゃあ、我慢できなかったら絶対服従だよ」
また懲りずに絶対服従とか言っている。
「ユウ君が我慢できたらユウ君の勝ち。我慢できなかったらお姉ちゃんの勝ち。これで良いよね」
「う、うん……分かった」
「はい、決まりねっ! お姉ちゃんが、いぃぃ~っぱい誘惑しちゃうから、ユウ君は我慢するんだよ。ユウ君が負けたら絶対服従だから、私と付き合って何でも言うこと聞いてエッチは一日二回ね。じゃあ、今から勝負開始ね」
「ん? えっ、あれっ?」
悠の頭が『?』となっている内に勝負が決まってしまった。
何度もエロ姉の策略に引っ掛かっているのに、また同じ作戦に
ちょっと素直で騙されやすい悠が、百合華流風林火山を使いこなしエロい事だけ
これから悠は、四六時中エロ姉の誘惑攻撃を受け続ける事になってしまう。
もう、逃げ場は何処にも無いのだ。
「うっわぁぁぁぁ! ハメられたぁぁぁぁ!」
「は、ハメるのはユウ君だよっ」
「そんな下ネタは要らねぇぇぇぇ!」
恥ずかしそうに下ネタを言う姉に、ちょっと可愛いとか思ってしまいながらも、何処まで本気なのか心配になる悠。
実際、文句を言いながらも内心はドキドキが止まらないのだ。
責任が持てるようになるまで我慢するという決意と、大好きなお姉ちゃんとエッチな事をしたい気持ちとで大混乱していた。
「も、もう、ユウ君……そんなに警戒しないでよぉ。今までだってイチャイチャしてたでしょ」
言われてみれば、今までもオシオキという名のエッチな事をされていたので同じかもしれない。
「そう……かな? そうだよね。今までも仲良しだったんだし、これからも変わらないよね」
百合華の言葉に、悠も納得してしまう。
キラァァァァァァーン!
百合華の目が光る。
ふふふふっ……
ユウ君めぇ~
今までと同じだと思ったら大間違いだよ。
もう、お互い大好きなのが分かったからには、お姉ちゃんは容赦しないんだから。
大好きなら遠慮は要らないよねっ!
いっぱい、いぃぃぃぃ~っぱい、エッチなコトしまくっちゃうから。
ユウ君が泣いてエッチをお願いするくらいに、徹底的に容赦のない無慈悲なオシオキをしちゃうんだから。
ついでに変態っぽいのもしちゃうもんねっ!
しょうがないよね、ユウ君のコト大好きなんだから。
百合華が、かなりアウトっぽい事を妄想する。
後に悠は知る事になるのだ。
姉の真の恐ろしさを――――
エロ姉のドスケベさを――――
とりあえず長い恋愛戦国時代が始まったのかと身構える悠だが、姉ときたらさっきからモジモジしながら上目遣いでチラチラと意味深な視線を送っている。
明らかに何か構って欲しいとか甘えさせて欲しいオーラを出しているようだ。
「あの、お姉ちゃん?」
「ユウ君、何か忘れてない?」
えっ? 何の事だろ?
いや、それより、モジモジするお姉ちゃんが可愛すぎだろ!
ああっ!
お姉ちゃんは何してても可愛いぜっ!
もう、一生見ていられるよ。
「ゆ、ユウ君! もうっ、ダメだよ。告白したんだから誓いのキスでしょ」
「えっ、ええっ! えええええっ!」
百合華はファーストキスを求める。
お互いに大好きだと告白した記念日に、永遠を誓うキスをしたいのだ。
「でも……キスしたらエッチに……」
「ユウ君。お互いに告白して大好きだと伝えたんだよね。だったら、誓約の証として永遠を誓うキスが必要なんだよ。もし、ユウ君が進学して同級生の子を好きになっちゃったらどうするの? 裏切りは許されないという誓いの為にキスは必要でしょ」
「た、確かに……俺は、お姉ちゃんしか愛さないよ。絶対に他の子になんか好きにならない。誓うよ!」
「じゃあ、誓いのキスだね。ユウ君」
二人は見つめ合ったまま抱き合う。
超絶に美しく最強に可愛い姉の顔が迫り、潤んだ瞳が悠だけを見つめる。
まるで世界に悠しか居ないかのように。
「お、お姉ちゃん……」
「ユウ君、大好きだよ」
「俺も、大好き」
二人の顔が近付き重なり合う。
人生初めての、まるで最初で最後の恋であるかのような永遠を誓うキス。
百合華の柔らかなくちびるに優しく触れる。
くちびるとくちびるが優しく触れるだけのキス――――
――――のはずだったのだが……
「ちゅっ、ちゅぷっ……」
「んんっ?」
ガシッ!
百合華の両腕が悠の首にガッシリと巻きつき、動けないように完全にロックされる。
「ちゅちゅっ、ちゅぱっ、むちゅっ……」
「ん、うぅ、んんっ~」
百合華の舌が悠の中まで進入し、舌を絡ませ
完全に大人のキスだ。
「んっ、ちゅぱっ、ちゅっ……
ぺろっ!
「ふふっ……キス、しちゃったね……」
思い切り攻めまくる大人のキスを堪能して、百合華はペロリと舌でくちびるを舐めて妖艶な顔をする。
初めてなのに超積極的で超攻撃力だ。
その姿は、やっぱり
「あっ、もう一回しとこっ!」
「ええっ!?」
「はむっ、ちゅっ、ちゅぱっ、んっ、ちゅっ……ぷはぁ~」
再び大人のキスをする百合華。
「くうっ……初めてなのに刺激的過ぎるよ……」
「ユウ君、これで永遠の誓いは完了だよ。もう、他の子とのキスは禁止だからね」
「他の子となんてしないよ」
「ふふっ、ユウ君……もう
百合華の雰囲気が少し怖くなる。
「あっ、言い忘れてたけど、私ってすっごく嫉妬深いから、他の子とイチャイチャしたら許さないからね」
目は笑っているのに、何故か笑っていない気がする。
「言われなくても、お姉ちゃんが嫉妬深いのは知ってるし……」
もう独占欲が暴走気味で付き合っている雰囲気を出す百合華。
勝負がついていないのに、すでに彼女になった気なのだ。
そして悠は、この勝負に最初から勝ち目など無い事を知るのだ。
レベルもスキルもカンストしたかのような、地上最強の姉による超攻撃力の愛の暮らしが始まる――――
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