第28話 世界一のお姉ちゃんと、溢れ出す想い

 昼食を食べるだけなのにギリギリまで気力体力を使い果たしてしまう。悠は限界突破を何とか堪え、エロ姉の猛攻を全部耐えきったのだ。

 もう、自分で自分を褒めたい気分になっていた。


(ううっ……ご飯を食べるだけでも凄い修行みたいだぜ。これ、バトル漫画の修行なのか……? ご飯を食べる度に戦闘力が上昇するとか……)


 バックハグだいしゅきホールドに味を占めた百合華は、三回目の『あーん』では、通常だいしゅきホールドをし、見つめ合ったまま食べさせ合うことになった。

 傍から見たら『あれ、絶対入ってるよね』とか言われそうだ。


 もう色々とアウトな感じになった百合華が、興奮し過ぎてイスから転げ落ちそうになり、四回目からは普通の『あーん』になる。

 昼間から暴走気味な姉が、夜になったらどうなってしまうのか、悠は戦慄を禁じ得なかった。




 そして、現在は午後のまったりした時間をリビングでテレビを見ながら過ごしている。

 二人並んでソファーに腰かけ、ピッタリと寄り添い百合華もご満悦だ。


「ふあぁ~ユウ君~」

「ちょっと、くっつき過ぎだって」


 並んで座っていたはずが、いつの間にかドンドン寄りかかってきて、今では完全に抱きつかれていた。

 ソファーの上ででも二人はスーパーバカップルぶりを発揮している。


「姉弟なんだから普通だよぉ~」

「普通じゃねぇぇーっ!」

「ユウ君の持ってる漫画では普通にやってたよ」

「ギクッ!」


 こっそり漫画をチェックしている百合華なのだ。

 確かに悠の好きな漫画の中では、主人公が姉キャラと普通にイチャイチャしていた。


 悠は、本棚の奥に隠している物を思い出す。


(し、しまったぁぁぁぁーっ! 俺の姉萌漫画コレクションがぁぁぁぁーっ! もう、俺が重度のシスコンなのがバレているのか!)


 だいぶ前からバレバレだった――――



「もうっ、ユウ君……お姉ちゃんとスキンシップするのイヤ?」

「うっ……い、イヤじゃない……」

「ふふっ、ユウ君のエッチ」

「くうぅ……」


 百合華の顔がニマニマとエッチな笑みを浮かべる。

 さっき反撃されて陥落しちゃったのを根に持っているのだろうか。


「ユウくぅぅ~ん……ちゅっ、ちゅっ」


 首筋から鎖骨にかけてキスをされる。

 くちびる以外なら何処でもOKと認めてしまったからには、もう体中どんな場所にでもキスをされかねない。

 自主規制になりそうな危険な場所にでもされる可能性があるのだ。


「だ、ダメだって……」

「ダメじゃない。ユウ君がスキンシップしてくれないと、体中にいぃぃぃ~ぱいキスしちゃうぞっ!」


 テレビからは時事問題のニュースが流れている。

 悠はエロ姉の過激なスキンシップでそれどころではないのだが、百合華は良い事を思いついたようにニマァという顔になった。


「ユウ君、突然ですが問題です」

「はあ?」

「三権分立とは、立法、行政、もう一つは?」

「し、司法!」

「ですがぁ…………」

「あっ、するい!」


 まだ問題は続いているようだ。


「国会は内閣に対し総理大臣の指名を、内閣は国会に対して衆議院の解散を。では、国会が裁判所に対して行えることは?」


 突然のクイズに悠は狼狽うろたえる。


「えっと、ええっと…………」


「3、2、1、0、ぶっぶー! 弾劾裁判所の設置でしたぁ~! はい、オシオキ決定ね!」


 ソファーに寝かされた悠の上に、百合華のムッチリしたお尻が下りてくる。

 オシオキは『お尻置きオシリオキ』だった。

 悠の腹の上にみっちりと尻が乗せられ動けなくなってしまう。


「ううっ、重っ」

「は? ユウ君、今重いって言った?」

「い、い、言ってません!」

「えっ?」

「お、お姉ちゃんは軽いです!」

「だよねぇ~」


 無理やり軽いと言わせているが、百合華としては『重い』というワードに敏感なのだ。

 グラビアアイドルのようにスタイル抜群な百合華だが、出るとこは出ていて胸や尻はムッチリなので体重はそれなりにあり内緒である。


「今から問題を出すから、間違えたらオシオキね。もし正解したらご褒美あげる」

「はあ? 何だよ急に」


 何だよと言われても、百合華はオシオキしたいだけなのだ。

 ただ、オシオキもご褒美も、百合華にとってはメリットしかない。

 攻めも受けもバッチコイだ。


「ご褒美なんて言って、どうせどっちもオシオキなんだろ」


 こんなことを言いながらも悠は、お腹の上に乗っているムッチリとした尻圧にドキドキが止まらない。


「う~ん、そうだなぁ……あ、そうだ。もしユウ君が正解したら、お姉ちゃんの好きなところにキスしても良いよ」


「きききききき、キスだとぉぉぉぉ!」


 キスと聞いて、悠のテンションが爆上げした。


 お姉ちゃんとキス!

 お姉ちゃんとキス!

 お姉ちゃんとキス!

 お姉ちゃんとキス!

 お姉ちゃんとキス!


(いや、待て! キスは付き合ってからだろ! 告白して付き合うまでは清い交際をしないと! ああっ、でもキスしたい! どこでも好きな場所……)


「ごくりっ!」


 悠が、百合華の胸を見つめ……視線が下がりお尻から太ももへと移る。


「ゆゆゆ、ユウ君! ダメ、ダメだからね! エッチなのは禁止!」

「まだ何も言ってないよ」

「だって、今、視線がいやらしかったよ。もうっ、ユウ君のエッチ、スケベ、ヘンタイ!」


 自分はエッチなことばかりするエロ姉なのに、弟にはエッチ禁止なのだ。

 ちょっと理不尽な姉だった。


 だが、仕方がないのだ。

 自分から攻め攻めなら理性が働くのだが、大好きな悠にエッチな攻めをされたら、爆発しそうな溜まりに溜まった想いがせきを切って溢れ出し、もう最後の一線を越えてしまいそうなのだから。


 午前中のように、頭を撫でられ体をマッサージされただけで、我慢できないほど反応してしまうあの有り様なのだ。

 今まで散々誘惑しまくって悠の方から手を出させようとしていたのに、急に弱気になってエッチ禁止にしてしまう。

 攻めも受けもバッチコイとか言ったが、あれは嘘だ!


 常勝不敗無敵の地上最強の姉は、防御はダメダメのよわよわだった。


(もぉ~ユウ君のエッチ……。姉の威厳を見せつけて私がリードしようとしてたのに、ちょっとマッサージされただけですっごいコトになっちゃうし……)


 更に百合華の妄想が加速する。


(も、もしそれが、〇〇や〇〇〇〇にキスされちゃったら、暴走してポリスメンにタイホされちゃいそうだよぉ~! ここは何とか私がリードして、ユウ君がドヘンタイなコトをしないようにさせないと)


 悠は〇〇や〇〇〇にキスしようだなんて全く思っていなかったが、百合華が勝手にエッチな想像をしていた。

 

 悠のことが大好き過ぎて、百合華の作戦が混乱してしまう。

 本人も手を出したくて仕方がないのだが、悠の将来や世間体も考えて泣く泣く我慢しているのだ。

 百合華にとっても、悠が一番大切なのだから。


「んんっ、こほん……とにかく、何でも甘えて良い日って言ったけど、ゴニョゴニョとかチョメチョメみたいなエッチでお下品極まりないのは禁止だからね」


「そそそ、そんなことしないから!」


 小声だが微かに聞こえたゴニョゴニョやチョメチョメが、完全に18禁な内容で悠もドン引きする。

 ちょっと姉がエロ過ぎて心配になった。


「なに言ってんのさ……俺は頬にするだけだよ」

「だ、だよね~ほっぺにチュウだよね~」


 エロ姉が勝手にドエロ展開を妄想していたが、悠は至って健全だった。

 そして、お姉ちゃんクイズが始まる。




 悠は連続不正解になった――

 ひっかけ問題やズルい問題ばかり出す百合華が大人げないのだが。

 ちょっとエッチなオシオキを次々とくらってしまう。


 そして今は、百合華に乗られたまま全く決まっていない関節技のようなものをかけられ、くんずほぐれつムチムチでスベスベな太ももに挟まれていた。


 結局、朝に百合華が言った『お姉ちゃんのナースプレイ』と『オシオキ百連発』と『プロレスごっこ』を全部やってくれているみたいだ。

 こんなにサービス満点な姉は、世界中探しても百合華だけだろう。


「じゃあ、最終問題ね。日本の都道府県の中で一番面積の広いのは?」

「えっ?」


 最終問題が超簡単なサービス問題だった。

 悠も半信半疑になる。


(えっ……これ、ひっかけ問題じゃないよな……? 本当にサービス問題なのか?)


「…………北海道」

「ぴんぽんぴんぽ~ん!」


 ちょっとエッチなオシオキをしながら勉強を教えてくれて、最後はサービス問題でご褒美までくれるなんて、お姉ちゃん先生はメッチャ優しかった。


「じゃあ、お姉ちゃんのほっぺにキスして良いよ」

「う、うん……」


 悠が百合華の肩を掴み、顔を近づける。

 近くで見る姉の顔は、とても美しく愛しく見えて夢のようだ。


(お姉ちゃんの顔……超綺麗だ……白くてきめ細やかな肌……大きな目に長いまつ毛……くちびるの形も美しくて柔らかそうだ……。もう、このまま抱きしめて、大好きだと伝えたい。お姉ちゃんが誰より一番大好きだと告白して、俺の彼女になって欲しいと伝えたい)


 悠が百合華を見つめたまま止まってしまった。

 百合華の方は、悠の真面目な顔をした急展開にドギマギしてしまう。


(えっ、ユウ君……? どうしちゃったの……。も、もしかして我慢できなくなっちゃったとか……どどどど、どうしよぉ~! ま、まだ早いよぉ! 私だって、したくてしたくて我慢の限界だけど……でもでも、まだ心の準備が……あと、アレ用意してないし……)


 悠は告白したくて暴走しそうになり、百合華は更にその先まですっ飛んで0.01mm的な製品が無いのを心配する。

 二人っきりの家の中で、背徳的で禁断の関係が動きそうになってしまう。

 誰も止められないほど大好きな気持ちが溢れ出し、全てを忘れて突き進みそうな二人が見つめ合う。


 もう、アウトになってしまわないことを祈るばかりだ。


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