第27話 ラブラブ新婚さんごっこアクロバティックあーん

 お風呂から戻って来た百合華は、元気が復活して元通りになっていた。何だか顔色も良く、お肌ツヤツヤだ。


「ユウ君、おまたせ~」

「お姉ちゃん、シャワー凄く長かったね。心配だから一度様子を見に行ったんだよ」

「え、ええっ、い、いつ?」

「さっき……」


 悠は、姉がシャワーから戻らなくて心配していた。

 体調が悪そうだったのもあり、気になって様子を見に行ったのだ。


 百合華は動揺を隠せず真っ赤な顔になった。

 それもそのはず、浴室でこっそりイケナイコトしていたのがバレたら、姉の威厳どころではなく恥ずかし過ぎる。


「ちょちょちょちょっと! 私、何か言ってた?」


 声に動揺が出たまま百合華は質問する。


(マズい、マズい、マズいって! 思いっ切り、お風呂でユウ君を想像しながらピー自主規制しちゃったんだけどぉぉぉ! 聞かれた? もしかして聞かれちゃったとか……?)


「シャワーの音でよく聞こえなかったけど、何か俺の名を何度も言ってたから、いつものお姉ちゃんだと思って戻ったけど」


 悠とのエッチを想像して名前を連呼してしまったのだが、百合華は普段から『ユウ君、ユウ君、ユウ君――』と興奮して連呼しているので、悠は姉が今日も通常運行だと思って不審に思わなかった。

 普段からエロ姉なのが、結果的に功を奏した形になる。


「ふ、ふ~ん……お姉ちゃんユウ君と一緒でテンション上がっちゃってたのかも」


(バレてない、バレてないよね……お風呂で、こっそりイケナイコトしてるのなんてバレたら、恥ずかし過ぎて死んじゃうよぉぉぉ~! それに、ユウ君の教育にも良くないしね)


 普段からエッチな言動が多いのを棚に上げ、百合華は悠の教育を心配する。


「なら良かった。一時は様子が変だったから心配したんだよ」

「あ、あれは、ユウ君のマッサージが上手で、体が熱くなっちゃったんだよぉ」


 実は、悠の方も動揺していた。

 百合華を心配して様子を見に行ったのだが、浴室から元気そうな声が聞こえ一安心したのも束の間、洗濯カゴに入っている汗でグッチョリした姉のナース服や下着を見て、抑えようのない強い衝動が沸き起こってしまったのだ。


 アニメや漫画でよくある『くんかくんか』の映像が脳裏をよぎり、どうしても手に取ってしまいたい衝動と戦っていた。

 もう、思い切り顔に押し当て匂いを嗅ぎ、イケナイコトしてしまいたいくらいに。

 ギリギリのところで踏みとどまり、何もせずに部屋に戻ったのだが。


(バレてない、バレてないよな……脱衣場で、こっそり姉の衣類をくんかくんかしてピー自主規制しようと思ってたのがバレたら、恥ずかし過ぎて死んじゃうぜ……。それに、そんなのお姉ちゃんに対して失礼だし、バレたら軽蔑されちゃうかもしれない)


 まったく、この姉弟ときたらお互いへの想いが強すぎて、愛が暴走して自主規制が追い付かないレベルだ。



「そ、そうだ、ユウ君、お腹空いたよね。お昼ご飯を食べようか?」

「うん、そうだね」


 お互いエッチな妄想しまくり不健全なので、ご飯を食べて落ち着くことにした。




 キッチンで一緒に料理を作ることになる。

 並んで立つ二人の姿は微笑ましい感じだ。


「ユウ君、お姉ちゃんが作ってあげるのに。待ってても良いんだよ」

「俺も手伝うよ。お姉ちゃんと一緒に作りたいし……」


 キュン!

 悠の健気な姿に百合華の心もキュンキュン弾む。


「ユウ君……良い子だね」

「子ども扱いするなって」

「ふふっ、そういうところも可愛いんだよね」

「ううっ…………」


 親が居ないこともあって、今日はいつもの十倍くらい甘口お姉ちゃんだ。


「あっ、ユウ君、包丁を使う時はネコの手だよ。こうやって、こう――」


 百合華が、悠の後ろから優しく手を取って教える。

 悠は、背中に姉の柔らかい膨らみを感じて赤くなった。


「わ、分かってるって。自分でやれるから」

「ダメだよ、危ないし」


(お姉ちゃん……そんなに密着して刺激的すぎるよ……何でそんなに無防備なんだよ……)


 悠は姉の無防備さを心配する。


「ユウ君……こうしていると、何だか新婚さんみたいだね」

「へっ、し、新婚……っ」


(だから、それ無意識なのか……? さっきから恋人とか新婚とか、意味深なことばかり言ってるし。お姉ちゃんと結婚……し、幸せな新婚生活……ううっ、天国やぁぁぁぁ~)


 悠の夢は膨らむ。

 将来は、大好きな百合華と結婚して、毎日イチャイチャしまくって幸せな家庭を築きたいのだ。

 ただ、今でもイチャイチャしまくっているのだが。



「「いただきます」」


 二人で作った料理を並んで食べる。

 いつもは四人の食卓も、今日は二人っきりだ。


「あの、お姉ちゃん……近くない?」


 いつも距離が近い百合華だが、今日はいつにも増して近い。

 椅子がくっついて並べられ、ぴったり寄り添うように座っている。


「今日は、いっぱい甘えて良い日だって言ったでしょ」

「それ、お姉ちゃんが甘えたいだけのような?」

「そ、それはそれ、これはこれ……。弟は素直に姉に甘えるべきなんだよ」


 そう言って、更にぎゅうぎゅうと密着してくる。

 悠に覆いかぶさるように後ろから抱きしめて、バックハグのような恰好にった。


「あの、お姉ちゃん……これじゃ食べられないよ……」

「だ、大丈夫だよ。お姉ちゃんが食べさせてあげるから」


 百合華は、悠をバックハグしたまま箸で料理をつまむと、それを悠の口元に持っていった。

 まるで宴会芸の二人羽織ににんばおりみたいだ。


「はいっ、ユウ君、あーん」

「ちょっと、こんな『あーん』は聞いたことないよ……」


 百合華のバックハグしてからのアクロバティックな『あーん』に、さすがのエッチな姉萌え漫画好きの悠も『このタイプのあーんは初めて見たぜ』っと思う。

 予想を超えたエロ姉の発想には驚くばかりだ。


「もうっ、私が『あーん』してるんだから、ちゃんと食べてよね。弟は姉に絶対服従するもんなんだよ」


 さっきは悠のモミモミで陥落して、自分が弟に絶対服従しそうになっていたのに、懲りずに再び絶対服従させたがる。

 もう、姉の威厳を見せつけるというより、イチャイチャしたくて言っているだけのようだ。


「そんなルールは――うっ……」


 悠が文句を言おうとした時、百合華の左手が悠の下腹の方に滑り込んできた。


「ユウ君、お姉ちゃんの言うコトを聞けないと……」

「わ、分かりました! 食べます、食べさせて頂きます」


 これ以上ごねるとエロ姉の攻撃力が上がってしまいそうなので、素直に『あーん』で食べることにした。


「はい、あーん」

「あーん……」

「どう? 美味しい?」

「う、うん……」


 正直、味よりも姉に密着された柔らかさで、悠は心ここにあらずの状態だ。


(おおお、おっぱいが……ホントに、お姉ちゃんは無自覚過ぎるよ……。こんなの絶対誤解しちゃうだろ。絶対、恋人同士でないとしないプレイだよ)


 悠の脳裏に、ある仮説がよぎる。


(ハッ! お姉ちゃん……もしかして、俺のことを……こんなの好きな人にしかしないよな……でも……)


 彼女いない歴イコール年齢で漫画の中のカップルしか知らない悠でも、こんなラブラブなプレイをするのは好きな相手だけだろと思う。



「はい、次はユウ君の番だよ。お姉ちゃんに食べさせてね」

「え、ええ~っ! 俺もするの?」

「当然でしょ。お返しは絶対なんだからね」


 百合華が一度離れて背中を向ける。

 髪をかき上げると白いうなじが見え、薄っすら浮き上がるブラの跡と合わせてセクシー過ぎだ。

 同じようにアクロバティックな『あーん』をする為には、今からこのセクシーな姉の背中に抱きつかねばならない。


 悠が生唾をゴクリと飲み込む。

 既に朝からイチャイチャしまくり昂ってしまっているのだ。


(お姉ちゃんの背中……凄く綺麗だ……。お姉ちゃんは、何処から見ても綺麗だな。今から、お姉ちゃんの背中に抱きつかねばならないのか)


 悠はイケナイコトを思い浮かべる。


(こんなエッチなことになるのなら、お姉ちゃんがシャワー浴びてる時に、こっそりピー自主規制しておくべきだったか……)


「ほらっ、早くぅ~ご飯が冷めちゃうよ」

「う、うん」


 やっと決心した悠は、百合華の背中に抱きついた。


 ぎゅぅぅぅぅ~


 ピッタリと体を寄せると、お互いの体温を感じ胸の鼓動がシンクロした感覚になった。

 悠の目の前に、百合華の綺麗な髪やうなじなきて、たまらない気持ちになってしまう。


(うううぅ~こんなの拷問だよ……すぐ近くに、お姉ちゃんのうなじが……。もう、このままキスしちゃいたい。はむはむしたりペロペロしちゃいたい)


 もう色々と限界なところを耐え続ける悠が、震える箸を器用に使い料理をつかむ。


「はい、お姉ちゃん。あーん」

「あーん……」


 無言で食べていた百合華だが、振り向くと顔を真っ赤にして照れていた。

 自分からやれと言っておきながら、どうやら恥ずかしくていっぱいいっぱいなようだ。


「じゃあじゃあ、また、お姉ちゃんの番ね」

「ええ~まだやるの?」

「食べ終わるまでやるんだよ」

「マジか……」


 再び体勢を入れ替える。

 ところが今度はバックハグだけではなく、百合華の脚を悠の腹の方に絡ませてくる。

 俗に言う『だいしゅきホールド』だ。


 バックハグからのだいしゅきホールドという、更に変態的なアクロバティック技を繰り出してきた。

 クロスさせた足が悠の微妙な部分に当たっていて、早く食べてしまわないと限界突破してしまいそうだ。


「はぁぁぁぁ~ユウ君、ユウ君、ユウ君~」

「うわぁ! 早く食わせろぉ!」


 もう、食べ終わるのが先か、限界突破が先かの大問題に直面する。

 傍から見たら完全にバカップルになっているのを本人たちは気付いていない。

 こんなのは、親どころか知り合いにも他人にも絶対に見せられないだろう。


 エッチ禁止はどこへやら、二人の新婚さんごっこのようなプレイは続く――――


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