第26話 思いっ切り甘やかすつもりが思わぬ反撃をくらって陥落するお姉ちゃん


「今日は、一日中ずうぅぅ~っと、お姉ちゃんと一緒にいようねっ」


 満面の笑みで百合華が話しかける。

 その太陽のような笑顔に照らされ、悠は夢見心地のまま姉の声を聞いていた。


 百合華の胸に抱かれ、ギュッと抱きしめられている。

 柔らかな膨らみに包まれ、胸元からは心地良い匂いと、さらさらと艶やかな髪からシャンプーの香りが漂う。

 まるで時間が止まったような気がして、屋外の喧騒も聞こえず世界が二人だけになった気さえする。


 悠は、これ以上ないほどの幸福感でいっぱいになっていた。


 お姉ちゃゃゃ~ん

 て、天国やぁぁぁぁ~

 もう一生お姉ちゃんの胸の中に居たい……


「ほら、なでなでもしてあげるね」

「ん?」

「ほぉら、いい子いい子~」

「ちょっと待て。子ども扱いしてない?」


 完全に蕩けきる寸前で、ちょっと疑問に思う。


「ええ~ なでなでは大人でもするんだよ。恋人同士なら普通だよ~」

「えっ! こ、恋人……」

「あっ、えっ、えっと……姉弟でも普通だよ」

「そ、そうなのかな……?」


 百合華が口を滑らせて『恋人』と言ってしまう。

 もう百合華の中ではラブラブな恋人のように思ってしまっているのだが、逆光源氏計画は道半ばであり手を出してはいけないのだ。

 ちょっとお手付きしちゃってるみたいだけど、少しくらいはご愛敬なのだ。


 悠の方は、姉の口から『恋人』という言葉が出た事でドキリとする。


 おおお、お姉ちゃん!

 恋人って……

 もしかして俺の事を……

 いやいや、そんなわけ……

 ぐっ、気になる。


 お姉ちゃんはスキンシップが激しくてイチャイチャしたがるけど、俺を弟として可愛がっているのかもしれないし……

 でも……

 俺は、お姉ちゃんが誰よりも大好きなんだ!

 お姉ちゃんと恋人同士になりたい!

 俺が責任を持てる大人になって、お姉ちゃんとつり合う男になったら絶対告白するんだ。

 そして、俺のこの想いを……大好きだと伝えるんだ。


 悠は大人になったら告白すると決意していたが、百合華の方はいつでもOKだった。

 むしろ、今すぐにでもバッチコイなのだ。


 なでなでなでなでなでなでなでなで――――

「ふへぇぇぇぇぇぇ~」


 悠は百合華のナデナデ攻撃でフニャフニャになった。


「ちょっと、撫で過ぎだって!」

「ユウ君、これは医療行為なんだよ。お姉ちゃんナースに任せて」

「えええっ……」


 悠が本当かよって顔をする。

 ナデナデする医療行為など聞いた事が無い。


「ハグしたりナデナデすると、オキシトシンという脳の伝達物質が分泌されて、リラックス効果やストレス軽減効果があって健康に良いんだよ」


 専門用語で解説され、半信半疑だった悠も納得してしまう。


「そうなんだ……知らなかった」

「だから、お姉ちゃんナースの言う事は絶対服従だよ」

「う、うん……」


 よく分からない内に、絶対服従させられてしまった。

 百合華は、悠を絶対服従させて色んな事をしたいのだ。

 隠れた女王様気質があるのかもしれない。


「はうぅぅぅ~ん ユウ君、ぎゅぅ~っ」

「ぐわっ」


 百合華のムチムチな胸を顔に押し付けられて、ぎゅうぎゅうと抱きしめられる。

 ナースコスのフロントファスナーが、おっぱいの圧力で下がってきて、深い谷間が見えてしまう。


 おおおおおっ、おっぱいがぁぁぁぁ!

 お姉ちゃん……

 これ、オキシトシンでリラックス効果って言うけど、おっぱいで興奮し過ぎて全然リラックスできないよぉぉぉ!


 悠はカッチカチだった。


 このままでは限界突破してしまう……

 少し休憩しないと……


「お、お姉ちゃん。俺もなでなでしてあげるよ」

「えっ?」


 悠は、百合華のナースキャップを外すと、頭をナデナデしてみた。


 なでなでなでなで――――


「はうっ、ゆゆゆ、ユウ君! はわわ、だ、ダメだよ……あんっ」


 ちょっとナデナデしただけで、百合華は顔を真っ赤にしてフニャフニャになってしまう。

 いつも攻め攻めで攻撃だけつよつよなのに、実は防御力は低くてよわよわだった。

 予期せぬ悠の反撃を受けて、もうされるがままだ。

 悠を絶対服従させるどころか、自分が絶対服従してしまいそうな勢いだ。


 ユウくぅ~ん……

 急に積極的に……

 うううっ、そんなにされると、お姉ちゃんおかしくなっちゃいそうだよぉ~


 百合華の悠に対する想いが強すぎて、ちょっと撫でられただけで凄い事になっていた。

 もう、カラダがムラムラとうずいてどうしようもない。


「ゆ、ユウ君! エッチなのはダメなんだよ」


 百合華が、エッチ禁止令を出す。

 自分がエッチなのは忘れているようだ。


「ええっ、エッチなのはお姉ちゃんの方では……」

「ダメ、エッチなのは禁止です」


 二人は少し離れて黙り込む。

 ただ、名残惜しいように片手だけ繋いだままだ。

 本人達は気付いていないのか、どう見てもラブラブな恋人だ。


 悠は急激に恥ずかしさが込み上げてきた。


 ちょ、ちょ、ちょっと待て……

 俺、今お姉ちゃんのおっぱいに甘えまくってなかったか?

 いくら親が居ないからって暴走し過ぎでは……?

 明日の夜まで二人っきりなのに、このままだと大変な事になってしまうかも……

 流されてエッチな事ばかりしないように、少し落ち着いて気をつけないと。

 そうだ、日頃お世話になっているお姉ちゃんにご奉仕しようかな。



 百合華は体が火照り気持ちがたかぶってしまっていた。

 完全にスイッチが入ってしまっている。


 どどど、どうすんのよ、これぇぇぇぇーっ!

 カラダの奥の方がウズウズしちゃって収まらないよぉ~

 今すぐ部屋に戻ってユウ君をおかずにしてイケナイ事しちゃうとか?

 でもそれなら、ユウ君にマッサージと称して〇〇をモミモミしてもらうとか……って、それ完全にアウトだよぉぉぉぉ!


 ※完全にアウトだった。



「お、お姉ちゃん……いつも勉強を見てくれたり色々お世話になってるから、今日は俺がお姉ちゃんにご奉仕するよ」


 悠は、姉にマッサージをしようとして横にさせた。

 百合華に甘やかされていると、限界突破してしまうそうなので、自分から姉にご奉仕して落ち着かせようとしたのだ。


「ほらほら、横になって」

「えっ、ええっ、ユウ君?」


 よく分からないまま横にさせられ、百合華は敏感になったカラダを震わせる。

 まるで、自分が想像していたイケナイマッサージが現実になってしまったかのようだ。


「じゃあ、行くよ」

「はうっ!」


 びっくん、びっくん、びっくん――――


 スイッチが入って敏感になっているカラダを大好きな悠に触られ、百合華は余りの気持ちよさに一瞬気が遠くなってしまう。


「どう? 気持ち良い?」

「う、うっ……はっ、う、うん……き、気持ち良い……よ」


 いつも攻めてばかりの百合華が、今日に限って悠の無意識な攻撃に防戦一方だ。

 カラダ中に快感が走り、もう全く抵抗も出来ない。


 はぁ、あああっ……ユウ君……もう、ダメかも……

 これ……完全にダメなやつだぁ~

 すっごいのきたぁぁぁぁ~


 もみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみ


 悠は良かれと思って頑張ってマッサージする。

 姉の肩こりをほぐす為に。

 肩から背中へとモミモミしてゆく。


 百合華のタイトなナースコスが薄地な為に、薄っすらと下着のラインが浮き出ていて、悠は目のやり場に困ってしまう。

 少し汗ばんでいるのか、生地が肌に張り付いて余計にエロティックだ。


 悠は真面目にマッサージを続ける。

 いつもお世話になっている姉に、恩返しがしたいだけなのだ。

 決してエッチ目的でやっているわけではないのだ。


 もみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみ


「あっ、んんっ、んぁっ……あんっ、ふぁあっ……あぁぁ……っ」


 姉が変な声を上げているのにも気付かず、悠は一心不乱にモミモミし続ける。

 肩や背中が終わり、続いて腰へと手を伸ばす。

 小刻みに震える百合華の細くくびれた腰に悠の手が触れた瞬間、百合華に大きな波が到来してビックンとカラダが跳ねた。


「んほぉあぁぁ……んぁ……」

「えっ、ごめん。もしかして痛かった?」

「ち、ちがっ……あうっ……だ、だいじょ……ぶ」

「腰は止めた方が良いかな? じゃ、じゃあ、脚の方を……」


 悠が百合華の脚を触ろうとする。


「あれ? お姉ちゃん……凄い汗でビチョビチョだよ」


 百合華は最後の力を振り絞って体を起こした。


「ゆ、ユウ君……お、お姉ちゃ……ん、汗かいちゃったから……シャ、シャワーっ……あ、浴びてくるね……」


 百合華は、汗で濡れ乱れた髪が額に張り付いて、凄い色気を放出していた。

 薄地のナース服も汗でカラダに張り付いて透けている。


 姉の顔を見た悠がビックリする。

 汗で汚れた姉の顔も最高に美しかった。


「お姉ちゃん、大丈夫?」

「だ、ダイジョブ、ダイジョブ……」


 若干カタコトになった百合華が、疲れた体を引きずるように浴室へと向かう。

 悠は心配そうに姉を見つめていた。


 風呂場に到達した百合華が呟く。

「あああーっ、ユウ君に、あんなにされちゃうなんて。姉の威厳がぁぁぁぁーっ!」


 威厳があるかどうかは分からないが、弟に負けたままで終わる百合華ではない。

 ここから起死回生の一撃、いや百撃くらいを返そうと心に誓う。


 あと、シャワーで音をかき消して、イケナイ事をめっちゃしてしまったのは言うまでもない。


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