第4話 一緒にお風呂、だって姉弟だから当然だよねっ!

 湯けむりに浮かび上がる美しく煽情的な肢体。しっとりとした張りのある白く瑞々しいきめ細やかな肌。


 今、悠の目の前には、憧れている義姉の生まれたままの姿が。


 重力に逆らうかの如くツンと上を向いた柔らかそうな膨らみに、流れるように理想的な曲線を描く腹から腰へと続く曲線。そこからプリっと盛り上がった美しい形の尻に、ムチムチと肉感的でありながら太過ぎない魅惑的な脚が続く。

 出るところは大迫力ダイナマイトに出て、引っ込むところは細くくびれている理想的なスタイル。


 まるで、漫画の中から出てきたような、魅惑の姉キャラが目の前に降臨した。


「うわぁぁぁぁーっ! 来るなぁぁ! あっち行けぇぇぇ!」


 進撃するエロ姉に恐怖した悠は、両手で視界を隠し姉の裸を見ないようにしながら、指の隙間からバッチリと義姉の裸を目に焼き付けつつ後退する。


 追い詰められた悠に逃げ場は無く、もうエロ姉の無慈悲で無尽蔵の精力で蹂躙じゅうりんされるだけに思えてしまう。


「ほらほら~ユウ君、背中を洗ってあげるね~」

「ふ、服を着ろぉぉー!」

「お風呂なんだから、裸になるのは当たり前でしょ。変なユウ君」

「変なのをおまえだぁーっ! せ、せめてタオルを着けろ!」

「もぉ~しょうがないユウ君だなぁ」


 何とかタオルを付けることで妥協させた。


「ほらっ、そんなに動くと洗えないよ」


 悠は背中を洗われていた。


 手でボディーソープを泡立ててから、何故かタオルやスポンジではなく素手でヌリヌリと洗われている。


 くちゅ、にゅるっ、にゅぱっ、ちゅるっ、くにゅっ――――


「くっ、うあっ、あっ、く、くすぐったい……」

「ほらぁ、動くと洗えないでしょ」

「だ、だって……何で手で洗ってるの?」

「手で洗うのがお肌の健康に良いんだよ」


 実際、素手で洗うのは肌を傷めず良いらしいのだが、百合華の場合は疑問に思うところだ。


(ぐへへ~っ! ユウ君のお肌すべすべ~! くねくねしちゃって可愛い~)


 一方、悠の方はといえば、憧れの年上お姉さんに色々されて限界寸前であった。


(くっ、くううっ……ダメだっ! 気持ち良すぎる! こんなの我慢できないよーっ! さっきから前の鏡に色々映ちゃってるし! 全然タオルで隠しきれてないし!)


 ぬるっ、くちゅっ――


「うわあっ! ダメっ! エッチなことするとポリスメンに!」

「えっ、ポリスメンって何? 警官のこと? それなら私が超ミニスカポリスウーマンになって、エッチなユウ君を可及的速やかに逮捕しちゃいます!」

「うわぁぁぁ~」


 地上最強の姉である百合華には、国家権力も米軍も通用しないのだ。


 義姉の過剰なスキンシップに限界を迎えそうな悠に対し、百合華の方も興奮が極限に達し危険な状況になってしまう。

 ちょっと手つきやいやらしくなって、危険な場所まで洗いそうな勢いになりつつあった。


 そして……勢い余った百合華が悠の方に滑って、豪快にハグするように抱きついてしまう。


 つるっ、ぎゅう~っ!

「あっ!」

「きゃっ!」


 カポーン――――――――


「えっ、あ、あのっ、ユウ君、ご、ごめんねっ」


「う、ううっ、うわぁぁぁぁぁ! おまえなんか嫌いだぁぁぁぁぁ!」


 悠は浴室を飛び出して行ってしまった。

 一人取り残された百合華は、呆然とした表情で悠の叫びだけが頭の中で木霊していた。


『おまえなんか嫌いだぁぁぁぁ! 嫌いだぁぁぁぁ! 嫌いだぁぁぁぁぁ!』


「うっ、うわああああああっ! ユウ君を怒らせちゃった! どぉうしよぉぉぉぉぉ!?」



 ◆ ◇ ◆



 気まずい雰囲気のまま風呂から上がった百合華は、悠を怒らせたショックから立ち直れぬまま謝りに行った。


「ゆ、ユウ君、さっきはごめんね」

「つーーーーん」


「あ、あの、ユウ君、アイス食べる?」

「つーーーーん」


「ユウ君……」

「つーーーーん」


 ――――――――




「わあああああっ! ホントに嫌われちゃった! どぉぉしよぉぉぉぉーっ!」


 自室に戻った百合華は、ベッドに突っ伏して足をジタバタとさせながら、頭を抱えてもがき苦しむ。

 新しくできた超好みで可愛い義弟に対し、可愛がりたいとかお世話したいという感情が昂って、本能の赴くままに色々とやり過ぎてしまったのだ。


 信頼というものは、積み上げるのは大変だが、壊れるのは一瞬である。


「こ、こ、こ、壊れてないからぁぁぁ!」


 混乱した百合華が、ナレーションにまでツッコミを入れる。


「ユウ君……怒らせるつもりじゃなかったのに……」


 百合華の大きく綺麗な瞳から、涙があふれてくる。


「どうしよう…………」




 一方、こちらも自室に逃げ込んだ悠なのだが――――


「うわああああっ! お姉ちゃんをエッチな目で見てたのがバレちゃった! どぉぉしよぉぉぉぉーっ!」


 実は怒っていたのではなく、恥ずかしさやら何やらで義姉の顔を見れないだけなのだ。


 浴室の鏡に映るエロ姉の胸の谷間やら太ももやらお尻やら、タオルに隠しきれないワガママボディな部分をチラ見しまくっていたのだが……百合華の手が滑って抱きつかれてしまい、義姉で興奮していたのがバレたと思っていたのだ。


「あんなの我慢できないよ……」


 それもそのはず。

 漫画なアニメなど二次元で思い描いていた理想のお姉ちゃんキャラが、ある日突然目の前に爆誕したのだから我慢できるはずがない。

 新しくできた超好みで可愛い義姉に対し、甘えたいとかお世話されたいという感情が昂り、もっとお姉ちゃんとスキンシップしたいと思ってしまったのだ。


 信頼というものは、積み上げるのは大変だが、エロ目線で見てばかりいたら壊れてしまうものなのだ。


「え、え、え、エロくないからぁぁぁ! い、いや、エロいけど……」


 混乱した悠がナレーションにまでツッコミを入れようとするが、やっぱりエロ目線だったので止めた。



 そんなこんなで、二人っきりの夜は、涙と悶々とした感情で更けて行く。



 ◆ ◇ ◆



 悠がトイレに行こうと部屋を出ると、ばったり百合華と鉢合わせしてしまう。

 ケンカして気まずい状態のまま、ぎこちない対面となってしまった。


 悠は、百合華の顔を見て思う――――


(うっ……あ、謝らないと……。でも、お姉ちゃんをエッチな目で見て、ちょっと興奮してましたとか言えないし……)


 百合華も、悠の顔を見て思う――――


(あっ……あ、謝らなきゃ……。でも、ユウ君をお世話すると見せかけて、実はエッチな気持ちだったなんて言えないし……)


 似た者同士だった――――



「あ、あの!」

「あ、あの!」


 二人の声が重なった。


「お、お先にどうぞ……」

「じゃ、じゃあ……言うね」


 百合華はモジモジとしながら、少し真面目な顔になって話し出す。


「あ、あのね……さっきは、ご、ごめんなさい!」

「えっ」

「さ、触るつもりじゃなかったんだよ。手が滑ったというか、偶然というか……(エッチな気持ちが半分くらいあったけど)」

「う、うん」

「ユウ君と仲良くなりたいと思って。それで背中を流そうとしてね。(エッチな気持ちが四分の三くらいあったけど)」

「うん…………」

「だから、ユウ君と仲直りしたいの」


 百合華は素直な気持ちを伝えた。

 無論、エッチな気持ちなのは隠してだが。


「うん、仲直りする……」

「ほんと! ユウ君、もう怒ってない?」

「怒ってないし……恥ずかしかっただけだし……」

「そうなんだ、良かったぁ~」


 二人は、無事仲直りすることができた。

 麗しき兄弟愛だ――――と、思いきや……。


「ユウ君、そういえばぁ、私のこと『おまえ』じゃなく、ちゃんと『お姉ちゃん』って呼んでよぉ」

「うっ……や、ヤダ」

「えええっ~」


 実は、好き好き大好きお姉ちゃんな悠としては、思いっ切りお姉ちゃんに甘えたいのだが、そんなの恥ずかしくてできないのだ。


「あっ……そういえばユウ君、私の裸をチラ見……」

「うわっわあああああっ! 言います! お姉ちゃん!」

「はい、よくできましたぁ~」


(ううっ……この女……。ただのエロ姉かと思っていたけど……実は、とんでもない女なのでは……)


 悠の義姉を見る目が変わる。実はこの女、強敵なのではと。


「じゃあじゃあ、仲直りのしるしにぃ~今夜は一緒に寝よっ?」

「はぁああああああああ!?」


 百合華が、とんでもないことを言い出した。

 思春期真っ盛りの男子が、こんなエチエチな義姉と一緒に寝るなど、そんなの興奮しまくって寝れるはずがない。

 もはや拷問みたいなものである。


「そんなのダメに決まってるでしょ!」

「ふ~ん、ユウ君いけないんだぁ~ 本棚の奥にエッチな……」

「うわっあああああっ! 寝ます! 一緒に寝させてください! お姉ちゃん!」

「はい、よくできましたぁ~」


 若干、調教されつつあるような悠が良い返事をする。

 今日一日で色々と弱みを握られてしまった。

 一時は悠に嫌われたのだと思って大ダメージだったはずが、瞬時に立場を逆転させてしまう恐ろしさ。

 正に、地上最強の姉である。


「ほらほらぁ、早く寝よっ! 姉弟だからセーフだよねっ!」


 ※アウトです。



 フェロモンが可視化できそうなほどエロい義姉と、添い寝することになってしまった悠。

 果たして悠は、この溢れ出るようなエチエチオーラを纏ったエロ姉と、一晩無事に過ごすことができるのだろうか。

 長い夜が始まろうとしていた。


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