第1024話 自滅って言うのかな?
幸い、訴訟を起こしたとか言う店長や店舗オーナー企業は私たちの名前や住所を探し当てられなかったのか、直接弁護士や裁判所から通知が来ると言うことは無かった。
代わりに、退魔協会経由であちらの弁護士からの私たちに何を求めるかを記した上で連絡先の開示を求める手紙と、それに対する退魔協会からの返事の写しを同封した手紙が退魔協会から来たけど。
どうやら、私たちが知らないところで勝手に拒否したと言われない様に、退魔協会が送った返事をこちらにもcc的な感じに送付してきたらしい。
下手にこっちが直接答えて連絡先を知られて食い付かれたら面倒だから、これで構わない。
退魔協会にも報酬から天引きされる手数料分だけ、しっかりウザ絡み予防の役割を果たして貰おう。
と思っていたら。
退魔協会から電話が掛かってきた。
「何かあの理不尽な訴訟に進展がありました?」
いつもの『お世話になっております』の挨拶をしてきた遠藤氏に碧が尋ねた。
訴訟に巻き込まれるかも知れない状況で退魔師の案件を新しくは受けたく無いからねぇ。
あのトンデモ店長とは直接顔を合わせているのだ。
うっかり依頼主のところで待ち伏せされて顔を合わせる様な事になったらウザすぎる。
まあ、退魔協会に依頼を出したらかなりの出費になるし、退魔協会だってそれなりに顧客情報とかは漏洩しない様に努力していると思うから、訴えられている相手にうっかり私たちの依頼情報を流すなんてことは無いとは思うけど。
でも、無能な人間のうっかり間違いって時々こっちの常識を超えるからねぇ。
なので、退魔協会関係では暫く出歩きたく無い。
『北野家が、訴訟を起こした店舗のオーナー企業をコテンパンに叩き潰して日本からの撤退に追い込みました。
結果としてお二人が会ったあそこの店長もクビになりましたし、訴訟も百貨店と北野家の両方に対するものが撤回されたので今後はお二人へ面倒な連絡が来ることも無いと思われます』
遠藤氏の淡々とした声が電話から流れてきた。
「え〜っと。
北野家が叩き潰したって・・・あそこってそんな権力があったんですか?」
それとも百貨店に入っている様な海外企業の店舗って意外と経済的足場が弱いの??
あっさり敗退したら投資が無駄になるんだから、それなりに準備しているだろうし霊障騒ぎで売り上げが落ちるまではそれなりに売れていたらしいし、売り上げが落ち込んでも5年も残れたんだから地力はそこそこありそうだけど。
そんなのをこんなに短期間で叩き潰せる程の大金持ちなんだったら千聖ちゃんを入院させずに在宅で完璧なケアが出来そうだし、両親が毎日仕事の後にお見舞いに来るなんて事にもならなくない?
まあ、働くのってお金のためではなく自己実現とか時間潰しとか社会との関わりを求めてって面もあるかもだけど。
でも、子供が入院していたら働かなくない?
それとも毎日病状が変わらない意識不明な子供の側に座って鬱々としているよりは、働きに出たほうが精神衛生上良いって家族に説得されて仕事に出ていたとか?
まあ、普通の現代医療の技術じゃあ治せない脳の損傷なんかの場合、側に座って声を掛けていてもあまり得るものは無いとは思うけどさ。
『北野家の母親側の実家が流通業に顔が効く大企業の創業家に連なる一族だった様で。
やっと意識の回復した孫娘が損害賠償で訴えられたと知った祖父母が、娘とのリハビリで忙しい両親に手伝いを許されて・・・物凄い勢いで戦い始めてあっという間にあの店舗を駆逐したそうです。
まあ、あそこだけ千聖嬢の生霊と上手く付き合えず、霊障がある店舗と言う評判が立って売り上げがここ数年ずっと下向きでしたからね。
実質、数本電話を掛けるだけでオーナー企業側が諦めて尻尾を切り捨てる決断をしたそうです』
尻尾ねぇ。
トカゲの尻尾切りだって言うなら、あの店長ではなくオーナー企業側が訴訟を始めたのかな?
まあそうだとしても、千聖ちゃんがあの店に対してだけちょっと悪意がある行動を取っていたらしいことを考えると、単にお供えをしなかったってだけでなく、それなりに嫌な思いをする様な悪口を言ったとか意地悪をしたとかってあるんじゃないかね?
他の2軒と明らかに反応が違うことを考えると、そこそこな事をしたんじゃ無いかと疑われる。
まあ、やったと言うよりも家族の悪口でも言ったのを千聖ちゃんが聞いちゃったと言う程度なのかもだけど。
でも手伝いではなく嫌がらせをする様になった事で千聖ちゃんの霊に関しても悪口を言う様になっただろうから、ある意味そこからは泥沼な関係になってそう。
そう考えると、ちょっとあの店長なりその前の店長なりに同情しなくも無い。
悪意ある噂話なんて誰でもしているからねぇ。
大したことはしてない(かも知れない)のに仕事を失う羽目になるのはちょっと痛い。
とは言え。
改めてあの店長の言動を思い起こすと、あまり同情する気は起きない。
オーナー企業側だってあんな店長を雇うような人を見る目がないタイプだったら長続きしなかっただろうと思うし。
「ちなみに、執拗にエクソシストに拘っていたのは何か理由があったんですか?」
碧が尋ねた。
『オーナー企業側の血族にカトリック教会のそこそこなお偉いさんがいるらしく、お布施を多めに会社から出せる様に霊障事件を利用したかったようですね』
遠藤氏が教えてくれた。
やっぱ、カトリック教会のお偉いさんの昇進もお布施ゲット能力が左右するのかぁ。
まあ、外部からの思い込みとか、一部だけって可能性もあるけど。
悪霊祓いの数を競えるエクソシストはまだしも、一般の司祭とかだったら結局は教会にくる信徒の数とか募金等の収入金額でしか業績(?)の比較はし難いもんね。
そう考えると、お布施が多いに越した事はないんだろうし、高額だろうエクソシスト依頼を増やすのも支援になるんかも?
それで日本から撤退する羽目になるなんてアホらしいけど。
教会もキリストの神様も、死後はまだしも経済的な面では助けてくれないぞ〜?
まあ、取り敢えず。
ウザい訴訟が消えて良かった。
千聖ちゃんも、変な外からのノイズ無しにリハビリを頑張れると良いね。
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