第1016話 女性の権利を!

『今までは女性用の香水や服系の店が並ぶ一角の通路の隅にある女性用トイレの壁にある棚にお供えを捧げると問題が起きなかったとの話なので、現場を見て頂く為には男性より女性の方が良いと思われまして・・・』

碧のやんわりとしたお断りの言葉にめげず、遠藤氏が電話の向こうからちょっとすまなそうに説明してきた。

もっとも、声がすまなそうに聞こえるだけで、顔はどうなのかは知らないけどね。


「どうせ作業をするのは夜とか朝の開店前ですよね?

だったら男性が女子トイレに入っても問題ないのでは?」

碧がぺしっと遠藤氏の説明を叩き落とす。


女性トイレにお供えしたら収まるって事は悪戯なり祟りなりをしている霊が女性の可能性は高い。

まあ、すけべな覗き魔系の男性霊の可能性もゼロでは無いけど。


どちらにせよ、霊と退魔師の性別が一緒の方が良いか悪いかは相手によるからねぇ、

トイレに問題なく入れるかと言う点だけなんだったら、五月蝿そうな依頼主関係者が居る案件は強面っぽい男性を送りつける事をお勧めしたいな。


『残念ながら、開店前と閉店後の両方で男性の退魔師が行ったところ、何も反応が無かったので・・・。

極軽微な穢れの残滓の様なものは見受けられた様ですが、苦情にあった異音やポルターガイスト的な動き、及び悪霊は見つけられなかったそうです。

お陰で一番被害に関して声を大にして苦情を言っている角にある店のマネージャーがさっさと司祭を呼べと煩いらしく、百貨店の方から日中に現場に行ける女性退魔師を是非お願いすると頼みこまれたのです』

遠藤氏が説明してくれた。


角の店って事は、通路の周辺で何軒か店がある場所なのかな?

まあ、3軒なり2軒なりが被害に遭っているとして、一軒が出費を拒否したら残りの店も自分ところだけで金を出すのは嫌がるんだろうなぁ。


なんか、その角の店のマネージャーって一つ譲歩したら他にもズイズイ要求してきそうなクレーマーもどきな臭いが仄かにするし。


それはさておき。

「退魔協会って司祭はメンバーに居ないんですか?」


日本で退魔師として働く人間は、形だけでも基本的に全員退魔協会に登録しているかと思っていた。

まあ、名称はちょっと微妙だけど。


『一応教会組織とも連携は可能なのですが、基本的にエクソシストはカトリック教会の司祭ですから、男性なんです。

最近は大分とそこら辺の縛りも緩くなってはきていますが、女性エクソシストは日本には居ません』

遠藤氏が答えた。


!!!そっか!!

イスラム教とかヒンズー教とかって女性の権利を踏み躙りすぎだと思っていたけど、考えてみたらキリスト教だってカトリック教会は指導的な立場に女性を認めていないんだから、あれも十分男尊女卑だよね。


欧州って政治家とか企業の取締役とかにクオータ制を導入して強力に女性の社会進出を推進している癖に、人々の生活に寄り添いつつ導いている筈の教会では相変わらず女性をちょっとでも指導者的な地位には認めて無いんじゃん!


マジで人間社会ってもっと女性の権利を認めろよ!!

それこそ銃を振り回して人を殺すだけなら男女の能力差は極端にはないんだろうから、もう戦うのが男性の仕事って訳じゃなくても良いんだから。


まあ、女性の方が出産で死ぬ可能性はあるかもだが・・・赤子の生存率って女性の方が高いらしいし、女性の方が子供が自分の子である事が確実なんだから、ある意味ローマ帝国の前に栄えたとか言う女系社会に戻したらどうかね?


宗教とか民族のちょっとした違いに基づくアホな殺し合いが減ると思うんだが。


今だったらDNAテストで父親の血も確認できるけどさ、テストしなくても確実な女性の方が財産を受け継いでいくのにも確実じゃん。


まあ、それはさておき。

碧がこちらを見たので、肩を竦めた。


「しょうがないですね、貸しですよ?」

碧が溜め息を吐きながら依頼に合意した。

考えてみたら退魔師も男性の方が多いって話だったもんね。


まあ、都内のターミナル駅にある百貨店だったら行くのにそれ程時間が掛らないだろう。

なんだったら、百貨店の何か割引チケットでも貰えないかな?


もっとも、百貨店の中の物なんて高過ぎて割引されても購入を躊躇するレベルな可能性が高いが。


最近は百貨店にも無◯良品とかユニ◯ロが入っている所もあるって聞いた気もするが・・・微妙にそう言う店に態々百貨店で入りたくは無いかな?

新宿の東◯ハンズ程度だったらまだありかもだけど。


百貨店内に美味しくて手頃なレストランがあるならそこのランチ割引券あたりで良いけど、ランチじゃ割引券は無さそう。


美味しいケーキとお茶のセットでも良いかも?


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