第991話 お祓いのちゃんと出来る寺社リスト?
「もう少し右ですね」
呪詛の線を追いながら運転する鈴木氏に伝える。
結局、
今回も幸い都内だった。
まあ、転嫁先にされた被害者までここに居るんだから、呪詛を掛けた人間が遠方に住んでいる確率は低いだろうとは思っていたけどね。
遠方だった場合は・・・二人の髪の毛とかを入手出来て、恨みと金を持っている人間がその地方にいるのかと聞いて返しちゃって、誰か突然調子が悪くなった人間が居ないか後から調べるで済ますことになったかもだけど。
やっぱねぇ。
現実的に言って関東よりも離れたら探しにいくのは大変すぎるだろう。
人口密度が下がるから、辿り着きさえすれば相手の特定は楽だろうけどさ。
「お二人は退魔師って話だが、こう言う仕事は多いのかい?」
先程まで何やら膝の上に置いたノートパソコンをカチャカチャと弄っていた竹下氏が、作業が終わったのか手を止めて声を掛けてきた。
動いている車の中でPCのスクリーンなんぞ見てたら気持ち悪くなるよね〜。
何をやっていたのかは興味があったが依頼主側の人間に好奇心から色々聞くのも躊躇われたんだけど、あちらはそう言う遠慮は無いらしい。
「そうですね〜。
呪詛返しやうっかり慰霊碑を壊しちゃって悪霊に取り憑かれちゃった人を祓ったりと言う依頼は意外と多いですよ。
退魔協会曰く、退魔師より依頼の方が多いので幾らでも仕事はあるとか」
碧がにこやかに応じる。
まあ、それでも夏休みになったら遠慮なく毎日依頼が来るかと身構えていたがそれは無かったので、退魔協会が遠慮しているのか、私らが指定した首都圏の日帰りな仕事が意外と少ないのか、どちらかだと思うけど。
地方って弁護士や職人や色んな人手が足りないらしいが、退魔師も足りなそう。
うっかり地方在住になったりしたら四六時中仕事に駆り出されるかも?
何と言っても都心部は開発の動きが激しいから、それこそ戦後70年ぐらいの間に古い悪霊とかのかなりの分は暴かれて祓われてきたんだろうね。
まあ、人口が多い分、呪詛は多いみたいだけど。
その点、地方だと昔の慰霊碑とか悪霊の宿った骨董品とかがあちこちにそのまま残ってそうだから、誰かの遺産相続とかで旧家の蔵を開くとかどっかを新たに開発するとか家を建て直すなんて事が起きる度に色々出てきてるんじゃ無いかな?
人の悪意って何処でも何時でも尽きないよねぇ。
「へぇぇ。今回の大江の話を聞くまで呪詛も悪霊も迷信だと思っていたんだが、意外と多いんだ?」
竹下氏が聞いてくる。
依頼主は元々退魔師の存在を知っていた旧家出身で、竹下氏はそう言う知識を失った一般庶民出身なのかな?
「以前は近所の寺社とかで毎年お参りをしたり厄落としをしたりしていれば軽い悪霊や呪詛程度なら何とかなりましたからねぇ。
最近は厄落としをする人が減った上に、寺社もエセ宗教法人じゃないですけど形だけで効果がないところも増えましたし。
そのせいで呪詛を以前よりも気楽に使う人が増えたかも知れませんね」
碧は答える。
そう言えば、碧の実家でも戦後ぐらいから定期的に厄落としをする人が減ってきたから、碧パパなんかは退魔師で頑張って金を稼いだらしいと以前言っていたな。
そのうちネットでもっと呪詛とか悪霊に関する情報が広まって、ちゃんと祓える寺社の一覧表みたいのが出来たりするかも?
とは言え、実際に信頼できる情報を集めて広める人もいるだろうが、騙そうと詐欺サイトを作ったり単に愉快犯的に悪意のある嘘を広める人も居そうだから、情報が溢れるネットの中で信頼できるデータに皆が辿り着けるようになるかはかなり怪しいかも。
それこそ国が大々的に退魔師と退魔協会の存在を認めて、信頼出来る寺社の情報を公開するとでもいうならワンチャン有りかもだが、それって要は宗教法人のうちで実効性がある所と無い所を国が公式に認めて周知化するって事でしょ?
まずありえない気がする。
跡取りに恵まれなくて祓う能力が失われたところで、地元の伝手から生じる政治能力とか票集め能力が無いわけじゃあ無いのだ。
というか、俗っぽくて政治家と仲が良いような宗教団体の人間こそ、それこそ呪詛返しは出来ないけど国とは親しくて絶対にそういう『実効性がない宗教法人リスト』に含まれないよう、上手くやるだろう。
流石に国としてもダメなところを大丈夫だなんて公表して後で責任問題になったら困るから、結局はそう言うリストの公表が取りやめになるか、何か不備があったとか言って公表したものを慌てて取り下げるかだろうねぇ。
そんな事を考えている間に、呪詛を掛けた人間が居るらしき建物の側に辿り着いた。
「あ〜。
やっぱここかぁ。
大江、ここって根本のお袋の会社が入っているビルだ」
竹下氏が建物を見て、溜息を吐きながら依頼主に声を掛けた。
どうやら最初に目的想定位置を聞いて色々調べた結果、このビルの可能性が高いと目処を付けていたっぽい?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます