第980話 見つけた後は?
『では、呪詛が疑われる依頼があった場合に調査員と同行していただき、呪詛返しの転嫁があるケースだったら転移先を突き止め、見分け方の講習をして頂く依頼を出しても宜しいでしょうか?』
電話の向こうから退魔協会の
どうやら本気で退魔師のテコ入れをするつもりなのかな?
もしくは呪詛返しの転嫁先になっていないか確認してほしいと言う依頼が入ってきていて困っているのか。
そっちの方が現実的かな。
退魔師のテコ入れだったらもっと基礎的な知識の研修とかを見習いとか新米退魔師に提供するべきだろう。
もっとも見習いに関しては退魔協会の研修だけで退魔師になれるようにしちゃうと、旧家が稽古料としてもらう収益が無くなって困るから断固として反対するかな?
協会の幹部の大多数が旧家出身だと考えると、そう言うテコ入れは起きなそうだ。
まあ、それはさておき。
呪詛返しの転嫁を見極めるのを私しか出来ない状態じゃあ退魔協会の依頼として扱えないもんねぇ。
私の気分次第で依頼を受けるか否かが決まるなんて困るし、なんといっても私がなんらかの理由で嘘をついて『転嫁先になってない』と言ったのに実は転嫁先になっていたりしたら信用問題になる。
ちゃんとなんらかの手段で退魔協会側も確認できるなら私の依頼達成を何度か確認しておいて『依頼の後にまたやられたんでしょう』とでも言うか、もしくは『そちらが実際に呪詛を掛けたのを返されたのでしょう』と開き直るのも可能かも知れないが、依頼達成の確認手段が無くて私1人の良心に頼るだけなんていうのは協会にとっても危険すぎる。
まあ、私は少なくとも依頼を受けた場合は嘘なんぞ吐いてカルマ値を下げるつもりは無いけどね。
ただし、碧関連で色々と嫌な思いをしたから政治家の依頼は断る可能性は高いな。
政治家だったら呪詛返しの転嫁先になるよりは自分が呪詛を掛けて転嫁させてそうだけどね。
と言うか、そのうち転嫁させたのが解除されて無いか確認する依頼が来たり?
いや、流石にそれをやったら呪詛を依頼したことがバレるから、無いか。
でも、転嫁が解除されていたら自分に呪詛返しが来るとなると、呪詛の取り止めを依頼する人間も出てきそう。
呪詛を返す以外の方法で転嫁や呪詛を解除できるのかは知らないが。
前世でも呪詛返し以外の方法で呪いを解除した事はないからねぇ。
王族は呪われる側だったから呪詛を返すか、精々転嫁先にされてヤバい事になるって程度だったので、掛ける側に関しては流石にそこまで詳しく無い。
態々防がれたら倍返しになる呪詛なんぞ使わなくても、大抵の相手は王族の権力やそれにあやかろうと集まるクソッタレ予備軍を誘導して物理的な暴力で相手を叩きのめせたからねぇ。
叩きのめせない様な相手は呪詛への備えもしっかりしていたから呪詛なんぞ危険すぎて使えなかったし。
その点、後ろ暗い事をやっていそうな上に色々緩い現世の退魔協会なら捕まえた呪師とこっそり取引をしていて、退魔協会の下で働くよう契約で縛りつけた呪師がいるかと思っていたが・・・こんなに困っているとなったらいないみたいだね。
ちょっと意外。
ガッチリ弱みを握って好きな様に使えそうなのを、絶対こっそり匿って政治家の為とかに使っているだろうと思っていたんだけどなぁ。
まあ、そんなことをしている人間が碧と会ったりしたら白龍さまにバレて天罰でも下されそうだから、碧が退魔協会に入った段階で止めたのかも?
「ちなみに、呪詛返しの転嫁を見せた後は転嫁を避ける形で呪詛を返しちゃえば良いんでしょうか?
転嫁だけを解除する方法は知りませんし、呪詛返しが退魔協会に来た元々の依頼ですよね?」
それとも呪詛返しは誰か別の人に態々回すのかね?
まあ、別にそれでも構わないが。
『・・・そちらに関しては、こちらの方で詳細を話し合って報酬や各ステップのタイミングなどについて決めてからまたご連絡しますと言う事で良いですか?』
遠藤氏はちょっと躊躇ってから保留を決めた。
まあ、私は別に良いけど。
あんまり長い間呪詛に掛かった依頼人を放置して、転嫁先を見本として退魔師に見せて回るために確保しておくのは可哀想だと思うよ?
待たされる方は遅れれば遅れるほど、感謝よりも恨みの念が増えていくだろうし。
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