第981話 煩い!

ピー!ピー!ピー!

お茶を飲みながらまったりしていたら、突然私と碧の携帯から甲高い警戒音が鳴り始めた。


大地震が起きると言うアナウンスがその後から続く。

のんびりとソファで寝ていた源之助は可哀想にびっくりして10センチぐらい飛び上がり、警報がどこから鳴っているのかを調べるかの様にぐるぐると周囲を見回した後にソファの後ろに隠れてしまった。


「うげ。

こう言うときって窓がなくて壁の多い玄関にでも行って、ついでに扉を開けておくと良いんだっけ?」

源之助を捕まえようとして失敗した碧がソファの後ろを覗き込みながら言った。


「だね。

ソファの後ろだったらもしものことがあって窓ガラスが割れても破片が直接降りかかる事はないだろうし、今無理に引き摺り出そうとするよりは私らの安全を確保しよう」


机の下に隠れるのも良いのかもだけど、万が一リビングの窓が割れた場合は破片が飛び散るリビングダイニングにいるよりも窓がない玄関の方が良いだろう。


と言うか、最近の玄関ってなんか鉄板が仕込まれているか何かで地震で建物が歪んでも扉が開かなくなるなんて事は無いって聞いたことがあるけど、どうなんだろ?

このマンションってそう言う『最近』に当て嵌まるのかな??


一軒家の実家の時は別に玄関が開かなくても窓から出れば良かったけど、マンションの4階だと玄関から出られないと色々と不便だからなぁ。


取り敢えず安全第一と言うことで、玄関を開けておくべき?


そんな事を考えながら慌てて玄関に向かったら、ゆらっと建物が揺れた。

とは言え。


「・・・大した事ない?」

一緒に玄関に来た碧が玄関を開けながら首を傾げた。


「今のが余震で本震がこれから来るとか?」

一応緊急地震速報ってそこそこ大きな地震が近くで起きる予兆があった時に鳴るんだよね?

あんまりしっかり設定してなかったから詳しい事は知らないけど。


『儂がおるのじゃ。

この住処が崩れる様な事はないから安心せい。

それに今回はそれ程大きな揺れが来る感触はないぞ?』

白龍さまが玄関で半腰になりながら首を傾げている私たちの横に現れて教えてくれた。


お?

嵐メインな白龍さまだけど、マンション1棟ぐらいだったら地震からも守ってくれるんだ?

それはありがたい。


「ありがとうございます」

お礼を言いながら玄関を閉め、リビングに戻る。


うっかりリビングに放置したままだった携帯を手に取って調べたが、どうやら隣の県で震度5の地震があったらしい。


「源之助〜。

もう大丈夫だよ、出ておいで〜」

碧がソファの後ろに手を差し伸べながら優しく声を掛ける。


なんかこう、地震自体よりも警報にビビらせちゃったね。


「大きな地震があるって知らせてくれるのはありがたいけど、あの煩い音は迷惑だね」

白龍さまが建物が壊れない程度に守ってくれるなら、警報なんてなくても良いぐらいかも。


「だねぇ。

家具が倒れない様に留め具系の地震対策グッズを買ってきて対策したら、緊急速報を止めちゃおうか?」

そろそろとソファの後ろから出てきて、ビクビクしながら周囲を見回している源之助を優しく抱き上げて撫でながら碧が言った。


「少なくとも警報音は止めたいね。

鍋で何か煮ている時だったりしたら火を止めてコンロから離れるぐらいのことが出来て良いかもだけど、マジであの甲高い警報は要らないなぁ」


まあ、地震が起きて揺れ始めた時に、それが大地震になるか大した事がないまま収まるかの判断がつくのはありがたいんだけど。

せめて『地震がきます』っていう放送だけで、ピーピー煩い警報音を止められないかな。


ついでに、隣の県で震度5程度だったら別に知らせてくれなくて良いんだけど。

隣の県なら震度6、すぐ側だったら震度5ぐらいで良いんだけど、そう言う設定ってどうやるんだろ?


携帯を取り出して設定→通知と見るが、特に緊急地震速報に関する設定が見当たらない。

もしかして、この緊急地震メールってやつ?

でもこれって震度何以上だったら知らせるって選ぶような項目は無いぞ。

前の携帯の時にはなんかもう少しお知らせする地震に関して選べた気がしたんだけどなぁ。


ネットで調べたら色々と設定できるって書いてあるサイトがあるのだが、古いのか今の携帯と一致しない。


「猫って意外と大きな音に弱いんだねぇ」

落ち着きなく尻尾を振っていた源之助が碧の腕から逃げ出して床に降り、びくびくと周りを窺っているのをそっと撫でながら碧が溜め息を吐いた。


「だねぇ。

大きな音が猫にとってそこまで危険だとは思わないけど、人間より耳がいいから敏感なのかな?」

地震速報設定を消すのを諦め、タブレットで今の地震の事を調べるが、煩かった割に特に被害も無かったようだ。


「怖いことなんてないから大丈夫よ〜」

碧が宥めようと声を掛けたところで突然電話が鳴り、源之助がビクッと飛び上がってまたソファの後ろに隠れてしまった。


「ちっ!

こんな時は仕事の連絡なんてしてこなくて良いのに」

碧が退魔協会からの着信音を鳴らす電話を睨みつける。


ちょっと八つ当たり込みだけど、ほんとね〜。


誰か呪われ疑惑の依頼人が出てきたのかな?


先日の電話があった後に色々と呪詛返しの転嫁関連の研修に関する詳細を決めたのだが、意外にも丁度いい(?)呪詛関連の依頼が来てなかったらしく、その後は連絡が無かったんだよねぇ。


3日の待ち時間って長いと見るのか短いと見るのか分からないけど。

でも、どうせ3日も待ったんだからもう1時間ぐらい、源之助がしっかり落ち着くまで待って欲しかったなぁ。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る