第977話 研究会?

「そう言えば、私や凛だったら自分に呪詛を掛けられたり呪詛返しの転嫁先にされたら分かるのかな?」

切り取った源之助の爪を拾い集めてゴミ箱に捨てに行きながら碧が聞いてきた。


あらマメね〜。

私なんて自分の爪でも適当にしか拾わないし、源之助の爪は伸びてて偶然チクッときたから切る事になってもそのまま放置してるんだけど。


どうせ爪を研いだり源之助が自分で爪を噛んで引っ張ったりした際に爪の外側が外れたのがちょくちょく落ちてるんだから、切った爪もそれらと一緒に掃除機でそのうち集めれば良いじゃ〜んって思ってるんだよね。

ちょっと杜撰すぎた?

まあ、碧が甲斐甲斐しく源之助の世話をしているから私が爪切りをする事は滅多にないんで、実害はあまりないと思う。


私の自分の爪切りは自室でやってるし。


それはさておき。

「自分に掛けられたのは意識があれば気付いて跳ね返せるし、寝ている間に掛けられてもよっぽど体調か精神状態が悪いんじゃない限り起きたら直ぐに違和感を感じて分かるんじゃないかな?

お互いの異常も気付く可能性が高いと思うし」

前世では『王族への復讐を邪魔する目障りな王宮魔術師』と言う事で狙われた事はちょくちょくあった。

呪詛だったら異臭っぽい違和感があるのでこっちを標的にして向かってきた瞬間に気付いて迎撃していたものだ。

呪詛返しの転嫁の場合は蜘蛛の糸を引っ掛けちゃったような不快感を感じるので、何かに気を取られていたら直ぐには気づかない可能性もあるがそれなりに違和感を感じるので数時間内には気付く・・・と思う。


気付いていなかった時間がどのくらいかは正確には分からないが、前世では毎朝起きて直ぐにしっかり入念にチェックしていた上で、寝る前のチェックに引っ掛かった事はなかったから18時間以上気付かなかった事は無いと考えて良いだろう。


『なに、お主らを害そうとする奴がいたら即座に懲らしめてやるから、心配は要らんぞい』

白龍さまが現れて源之助の顔の前で尻尾を振りながら言った。

源之助が寝転がったまま手を振って尻尾を叩こうとしているが、起き上がってはいない。


日中だから寝転がっているのか、28度でも暑いのか、最近は源之助も前ほど走り回らなくなったなぁ。

もうそろそろ完全に大人になったらからなのか、軽い夏バテなのか、どっちなんだろ?

一応日中は28度以下になる様に炎華とエアコンの複合技で対処しているけど、夜も気温があまり下がらない事が体に良く無いとか、あるんだろうか?


明確な体調不良なら碧が対処できるだろうけど、『暑くてだるい』程度だったら判断が難しそう。


秋になって走り回る様になったら、暑いのが苦手だったって事で来年の夏のエアコン温度設定を要検討ってとこかな?

まあ、最近は碧が源之助を膝へ誘惑する為に室温を下げてるしね。

そう考えると夏バテよりも子猫時代の終わりって可能性が高いかな?


「ありがとうございます、白龍さま」

碧が白龍さまに礼を言う。


「ちなみに、呪詛返しの転嫁って神社での厄祓いで落とせるの?」

碧が続いて私に聞いてきた。


「・・・さあ?

前世では神社って無かったから、知らないなぁ。

呪詛返しの転嫁だって本人にとってはヤバい災厄だから、厄祓いで落とせると期待したいところだけど・・・誰か、転嫁先にされた人を見つけたら試してみたら良いかも」

まあ、強い悪霊とか呪詛だって必ずしも全て神社の厄祓いで落とせる訳じゃあ無いんだから、転嫁と言う厄だって落とせる場合があるにしても全てに効くとは限らないんじゃないかな?


「なんかでも、呪詛返しの転嫁先になるのを正当な契約で本人が納得して合意しているんだったら、祓えちゃいけない気もしないでも無い?

それじゃあ契約違反をし放題じゃん」

碧がちょっと顔を顰めながら言った。


「いやぁ、呪詛返しの転嫁先に合意するぐらいだったら最初から自分で代わりに呪詛を掛ければ良いだけでしょ。

転嫁なんて言う中途半端な方法をとっている時点で本人は呪詛なんて知らないか信じて無いかだと思うな」

代わりに呪詛を掛けるのだって、転嫁先になるのと効果は同じなのだ。

だったら態々転嫁と言うステップを挟むよりは呪詛を掛ける主体になるよう金を払えば良いだろう。


そうしていない時点で、本人は転嫁先になる事に自覚して合意していないか、内容に関して騙されて合意した可能性が高い。

だったら祓っても良いんじゃ無いかなぁ。


「まあ、そうだね。

しっかし。

ネットの詐欺っぽいので合意した事になるなんて、怖すぎる。

どう考えても理不尽な気がするんだけど」

碧が溜め息を吐きながら源之助のお腹に顔を埋めて深く息を吸い込んだ

爪を切り終わったからってお昼寝を邪魔すると嫌がられるぞ〜。


まあ、源之助も慣れているのかあまり気にして居ないっぽいけど。


「文字を読めない農民が紙に×を書くだけでも合意の署名扱いになるんだから、文字を読める人間が小さな読みにくい文字でこっそり書かれた合意文のOKにクリックしちゃっても成立するのだってありなんじゃない?

今まで以上にネットが怖いのはマジでそうだけど」

呪詛返しの転嫁先になるのに合意する文言が決まっているなら、それがネットのポップアップとかリンク先にある場合は警告が出る様なアップデートを各セキュリティソフトの会社に推奨すべきな気もするが、文言が色々と変えられるなら絶望的かもねぇ。


「だね。

そのうち呪詛返し転嫁への対処法に関する研究会でもしましょうって退魔協会から提案が来るかも?」

笑いながら冗談っぽく碧が言った。


変なフラグを立てないでよ〜?

退魔協会の研究会に参加なんて、面倒なだけじゃん。











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