第973話 ちょっと予想外

「こちらになります」

病院の人に案内された地下のひんやりとした部屋に安置されていた祐一氏の遺体は・・・穢れで

中々凄い事になっていた。


うげぇぇぇ??


祐一氏の霊は、ちょっと無気力だけどハングリーさのない苦労しなかった良家のお坊ちゃんっぽい普通な様子だった。

短期間で命を奪える様な強烈な呪詛って本人の命までも糧にして対象を壊す様なのが多いから、救急車で運ばれてそのまま死んでしまったと言う死が呪詛によるものだったら召喚した霊にもその傷跡が残るだろうと思っていた。

その兆候が無かったので、誰かに珍しい毒でも盛られたんだろうと思っていたのだが・・・。


どうやら彼は呪詛で死んだのかも?

しっかり調べなきゃダメだが、複数の呪詛を掛けられているっぽいのが余計状況を複雑にしている。


「複数の呪詛が掛かっているようですね。

調べますので少々お待ちください」

そう亜希菜さん達に伝え、遺体に掛かった呪詛を解読しようと努める。

だがその前に。


『ちなみに何か物理的に毒とかも飲まされたのか、確認できる?』

碧に念話で聞いておく。


なんか複数の呪詛が掛かっているからこれらが一気に発動したのだったらそれで死んでも不思議は無いが、他にも要素があったのか知っておきたい。


『・・・多分、変な異物は無いっぽい?

呪詛だけだと思う』

そっと遺体の腹部に触れた碧が一歩下がりながら教えてくれた。


マジで呪詛で死んだのかぁ。

亜希菜さんの髪の毛の呪詛の痕跡も微かに見えるが、あれは死因ではない。

他にも何か嫌がらせ・・・以上な呪詛を掛けられる様な恨みを祐一氏はどこで買ったんだろう?


自業自得で恨みを買いまくるタイプって人格が歪んでいるからそれなりに霊に会えば想像がつくんだけど、祐一氏はそんな感じでは無かったんだけどなぁ。

お坊ちゃんであるって言うのは人の妬みを買うだろうが、それでも大金をかけて呪詛を掛ける程妬む人ってそうそう居ないだろう。


と言うか、考えてみたら亜希菜さんは呪師に伝手があった訳だから、一族の他の人間も呪詛についてそれなりに知識があっても不思議はない。

だとしたらお家騒動の一環の可能性もあるのかも?


亜希菜さんが呪いだと騒いだのは、ある意味自分のせいじゃ無いのを確認したかったと言う思いが強かった様だが。

男に生まれたと言うだけで跡取りになれた弟が居なくなり、両親も自分を跡取りとして認めざるをえなくなると喜んでいたが、一応自分が殺したのでは無かったと確認したかったなんて微妙に屈折した心理だよねぇ。


まあ、それはともかく。

集中する為に目を閉じて、遺体に触れて呪詛を読み解く。


あれ?

何か呪詛に違和感がある。

前世でだって呪詛の発見が遅れて呪詛返しが間に合わず死んだ被害者(クソッタレが多かったので私的には被害者と言うよりは自業自得な愚者と思っていたけど)を調べたことがある。


死後だと既に役割を果たした呪詛が多少変質するが・・・それだけじゃ無い違和感がある感じ?


取り敢えず、絡まった呪詛を一つ一つ、分けていく。

分けて個別になった呪詛を調べると、亜希菜さんの嫌がらせの他に中々強烈なのが3つ掛けられていた。

これだけの呪詛を被害者の魂を贄にせずに掛けられるなんて、随分と腕の良い呪師がまだ残っちゃっていたんだなぁ・・・と思ったところで、違和感の原因が分かった。


これ、呪詛返しだ。

倍返しになった呪詛だから、通常の呪詛よりも強いのだ。

でも、祐一氏は呪詛に心当たりがないと言っていたし、呪詛返しを喰らう様な直接的な呪詛を掛けていたら魂にもその穢れがこびり着く筈だ。


『うわぁ。

この人、複数の呪詛返しの転嫁先にされていたっぽい』

思わず碧に念話で呟く。


完全に縁の無い赤の他人を呪詛返しの転嫁先に勝手に設定は出来ない。

本人の受諾と受け入れられる形の何かと、媒体となる本人の生体の一部が必要な筈。


赤の他人でも騙して本人に気付かせずに受諾させる事は出来たにしても、複数の呪詛の返し対象にするにはそれなりに祐一氏に近かった人間でなければ難しいだろう。


亜希菜さんも芹香さんも、記憶を読んだ限りでは呪詛返しの転嫁先に祐一氏を利用していない。

となると・・・職場の知り合いか、友人か、従兄弟とかの一族の人間か、親が疑わしいところかな?


まあ、流石に親が跡取り息子を呪詛返しの転嫁先にする事はないだろう。

それこそ、血の近い人間の方が呪詛を騙しやすいから転嫁先に向いていると呪師に言われたとしても、その場合は常識的に考えて跡取りではない娘を使うだろう。


常識的に考えるなら呪詛なんぞ掛けるなって話だが、掛けるとしたら自分がお金を掛けて跡取りとして育ててきた子供を転嫁先にするなんて意味がない。

子供を自分の所有物の様に駒扱いする親は存在するが、それにしても子は投資額が大きい貴重な駒なのだ。


子を使う前に他にも色々と使っても惜しくない身代わりはいるだろう。


・・・そう考えると、一族の他の人間なんかが怪しいかな?




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カクヨムさんで別に書いている短めに終わる予定(希望!)な話の最新話を久しぶりにアップしました。

良かったら読んでみて下さい。

https://kakuyomu.jp/works/16818023211694735678







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