第965話 夕立は神の恵み?

「あれ?

ちょっと外の温度が下がった」


雷がゴロゴロとなっていたと思ったら竜巻警報が防災アプリからポップアップし、突然突風が吹きだしてガタガタと音がしていたが、暫くしたら穏やかになった。

夕立の時もちょっと風が強めに吹くが、流石に竜巻警報の時の突風は凄いね。

突風で植木鉢が軒並み倒れた様なのでそれらを戻そうとベランダに出たら、意外と外が暑くなかった。


朝起きた時点で30度、10時ぐらいには33度でさっき突風が吹く前は35度ぐらいあった様なのに、いつの間にかベランダの温度計が30度まで下がっていた。

素晴らしい。


「竜巻って夕立と同じで積乱雲の上の方の冷えた風が吹き下ろしてくるのかも?」

碧がベランダに手を出して空気をかき混ぜる様に動かして温度を確認しながら言った。


「実際に屋根や看板を吹き飛ばす様な竜巻は困るけど、夕立のちょっと激しいバージョンな突風は気温が下がるなら大歓迎だね」

倒れていた植木鉢を立てて部屋に戻りながら言う。


「・・・ちなみに、小型なさっきのぐらいな竜巻を毎日呼び起こすのって難しいですか?」

碧が期待を込めた目で白龍さまを見つめながら尋ねた。


家の中は涼しくても外が茹だるほど暑いと色々と不便だからねぇ。

スーパーって客を呼び込もうと今日はチーズが二割引き、明日はパスタ、明後日は冷凍食品がって感じで日を変えて値引きしやがるせいで、暑くても出歩かなきゃいけないんだよねぇ。


配達料が無料になるぐらい買えば普通の食材だったらネットスーパーで買っても同じぐらいか安くなる場合もあるのだが、流石に二割引きだったら店に行く方が安いから暑い最中に出掛ける羽目になる。


『一回程度だったら無理やり力技でやるのも可能だが、継続的に連続して行うならそれなりに上空の気流を動かしたりする必要があるんでのう。

そのうち人が吸い込まれて飛ばされてしまう様な大きな竜巻になってしまう危険性が高いぞ?』

白龍さまが応じた。


オズの魔法使いと違って人が竜巻で吸い込まれて飛んだら死んじゃうから、暑くても竜巻を頼むのは駄目かぁ。


それにいくら嵐関係に強い氏神さまでも、毎日ミニ竜巻を生み出すのは大変だよね。

しかもガツンと大きいのを一度出すんじゃなくって、実害が無いミニな規模にコントロールして毎日となると大変だろう。


猛暑を涼しくする効果はありそうだけど、それで電圧線とかがぷっつり切れたり発電所が被災したりしたらめっちゃ困るし、諦めるか。


何年か前の8月(だったと思う)に強力な台風が関東地方に来て、千葉の方で倒木に電線をブチブチ切られたせいで、1週間か2週間ぐらい真夏に停電になって大変そうだったもんなぁ。


あれの再来を避けたかったら安易に竜巻を願っちゃあ駄目か。

今日は良い感じに温度が下がったんだけどね。

残念。


「なんか中国では既に人工雨とか降らせているらしいから、日本でももっと夕立が降る様に雨を降らせれば良いのに。

東京都の人口が皆して夜通しクーラーをつけるより、空にドライアイスでもばら撒いて夕立を人工的に引き起こして温度を下げた方が経済的にならないかな?」

まあ、ドライアイスを作るのにかかる費用がどのくらいなのか知らないけど。

考えてみたらあれって二酸化炭素を冷やした物だった筈だから、東京全般で雨を降らせるほどドライアイスをヘリでばら撒くのって温暖化対策に反する行為になっちゃうのかな?


「人工雨ってそんなに都合よくは降らせられないんじゃない?

中国でも水害や干魃でかなり大問題が起きてるって新聞で見た気がするから、人工雨を都合よく利用できるんだったらとっくに何とかしてるでしょ」

碧が指摘した。


確かに。

まあ、中国ってモンゴルのゴビ砂漠の一部っぽい地域もあった筈だから、干魃で困っている地域はあまり空気中に水分が無いんかもねぇ。

上空の温度を冷やしたり雨の元になる種をばら撒いても水分が上空になければ雨にはならないよね。


でも、東京の夏は湿度が高いし、上空の空気の温度さえ下げれば雨になるんじゃ無い?

何やら有害だと言うヨウ化銀をばら撒かれるのは嫌だが、ドライアイスじゃ駄目なのかなぁ。


スーパーでアイスや冷凍食品を買えば無料でドライアイスを付けてくれる店も多いから、それ程は高く無いのかと思っていたが・・・気軽に空にばら撒けるほどではないんだろうね。


白龍さまが代わりに夕立を降らせてくれたら良いんだけど、やっぱ神様に安易に雨乞いするのも危険か。

下手に降り過ぎて水害になっても困るしね。


前世でも、考えてみたら干魃の時は直接雨を降らすのではなく水系の攻撃魔術で溜池や湖の水を増やしていたな。

程よく雨を降らせるのって難しいのかも?

魔術で水を生み出せるんだから何とでもなりそうなもんだと思ったが、マジで上空でバケツどころか湯船やプールぐらいの水をぶち撒けると、下にいる人や家屋への被害は馬鹿にならないだろうからね。


だからこそ攻撃魔術として使うんだし。

水って硬さが足りないから、凍らせるか質量で戦うんだって昔学院での同級生が言っていたなぁ、そう言えば。


庭の菜園に水を撒く程度ならまだしも、街一つ分の範囲程度でも穏やかに雨を降らす様な術は無いって言われたわ。


そう考えると、人間よりもさらに魔力が大きくって制御が難しいであろう白龍さまに雨を願うのはリスキーだね。


だけど。

明日も夕立が来て欲しい・・・!


明日はチーズの特売なんだよねぇ。

意外とチーズって長持ちするからそこそこ買い溜め出来るんだけど、チーズの特売そのものがそこまでしょっちゅうじゃ無いし決まった日にやっている訳じゃないから、明日を逃したらチーズが切れちゃう可能性が高いんだよねぇ。


ああ、マジで真夏って嫌だわ〜。






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