第962話 先の長い研究?

「ちなみにこう、氷系の幻獣や氏神さまを北極と南極に招待してあそこだけガツっと寒くして貰うって言うのも無理そうでしょうか?」

ダメ元で、最後にもう一度炎華に尋ねる。


南極の棚氷も減り続けてるらしいけど北極の方が更にヤバいってどこかで読んだ気がする。


北極海の氷が減り過ぎてどこぞの戦狂国があそこで石油開発とか始めたら更に不味いし、シロクマが絶滅しちゃうのも悲しいし。


出来れば北極海がまた氷漬けになってくれた方が良いと思うんだよねぇ。

紅海とかを通らずに東アジアから欧州へ船で行ける航路が開くのは経済的には良い事だけど、多分安定して北極海を航海出来るほどあそこで氷が減ったら・・・マジで地球がヤバいでしょう。


日本の漁業的には赤道付近の海水を少し冷まして何やらちょっと蛇行し始めたとか言う噂の黒潮のルートが元に戻る方が重要かもだけど、地球全体的に見たら北極圏の復活の方が重要そうな気がする。

私はそれ程魚を食べないし。

それなりに頑張って掃除しても、魚って料理すると台所が2日ぐらい生臭くなるんだよねぇ。


それはさておき、赤道付近の海水の温度が下がって黒潮で北へ運ばれる暖かい水が冷めたら北極の氷が溶けるのも止まるかもだけど、まずは直接北極の氷を増やす方が良さげだ。


『氷系の幻獣とか精霊って頑固で自己中なのが多いから、招待してここを冷やして下さいなんて頼んだら、どさくさ紛れに星の3分に2ぐらい凍らせかねないから、やめた方がいいと思いますね〜』

炎華がちょっと嫌そうに言った。


『お主ら炎系の幻獣だって自己中心さでは然程変わりはないだろうが。

氷系の方が頑固なのは認めるが』

白龍さまが横から突っ込みをいれた。


まあ、確かに幻獣が民主主義的に皆で仲良く公平に〜なんて考え方をするとは信じる方が間違っているよね。


そう考えると、そこそこお人好しで人にまあまあ優しい白龍さまみたいな幻獣に北極圏を凍らせて下さい〜と頼むのは無理か。

残念ながら白龍様の権能って風や嵐系だって話だから、温度を下げるって言うのは得意な範囲じゃなさそうだし。

まあ、白龍さまが氷系の権能持ちな幻獣だったら諏訪なんぞに居なかっただろうから、どうしようも無いよね。


「何年か前に出た氷河期到来パニック映画っぽいのでは、北極の氷が溶け過ぎたせいで海水の塩の濃度が変わったか何かで赤道から北極圏へ流れる黒潮やメキシコ湾流とかが止まって、それで何故か一気に氷河期が来て北アメリカがメキシコ国境ぐらいまで凍りついたとか言う感じの話だったから、考えてみたら海水温度を劇的に変えるのも危険かもだしね」


あの映画は中々見応えがあったが、暖流が止まって北極圏が寒くなるのはまだしも何故に北アメリカやヨーロッパがああも激しい氷嵐に襲われるのかのロジックは良く分からなかった。


良い加減、暑い空気が南から流れ込んでくるのにもウンザリなんだけど、北をガッツリ冷凍して貰うとか、赤道付近を少し冷まして貰うとかいった感じな大々的な自然への干渉は安易に頼むのは危険だし、頼める相手も居なさそうかぁ。


とは言え。

このまま暑くなっていくようじゃあ地球の将来はかなりヤバい気がするけど。

先進国と新興国がちゃんと協力して温暖化ガスの排出をきちんと間に合ううちに減らすのに成功する確率はかなり低そうだ。


はっきり言って、それが予定通り起きると期待するよりは、幻獣の気紛れに縋る方が実現性がありそうに思える。


どっちもかなり可能性が低いことに変わりはないけど。

魔素が薄いと幻獣や精霊にも活躍して貰うのが難しいと言うのもネックだよねぇ。


自然の猛威は迂闊に手を出しちゃいけないぐらいに危険なんだろうけど、このままじゃあ老後に私らが年金を受け取れるかも怪しいから、ちょっと思い切った手が必要だとも思われる。


なんかこう、熱を出すんじゃなくって熱をガッと奪う爆弾とか設備みたいのを作って温度をガンガン冷やせれば良いのに。


温度を上げるのは石油や石炭を燃やして熱を放出すれば比較的簡単に出来そうだけど、温度を下げるのってそう簡単には出来ないんだろうなぁ。

何かこう、熱を奪う化学反応を簡単に出来れば良いのに。


「そう言えばさ、魔術でガッと寒気を生み出すような魔法陣とかって無いの?

術さえあるんだったら、動力源としての魔石はそれこそ白龍さまに故郷から持ち込んできて貰ってなんとか出来ないかな?」

碧が提案してきた。


星レベルで温度を下げられるような術って、一国くらい滅ぼせる程度な効果になりそうだからねぇ。そんじょそこらに転がっているような術じゃあ無理だろう。


簡単にそんな事が出来ちゃうんだったら。とっくのとうに誰かが試してどっかの国を滅ぼしていると思う。


でも。

確かに燃やすと言う方向でしか機能しにくい化学反応よりは、魔術の方が熱を奪うと言う現象を起こせるかも?


残念ながら、元素系魔術師じゃない私らじゃあその研究すら出来ないけど。

・・・翔君って水か風の術が得意な元素系退魔師だって話だったよね。

何か開発できないか、魔法陣の基本を叩き込んでみたらどうだろ?

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