夢の温暖化対策
第961話 ノアの洪水より更にヤバかった
「あれ、なんか今日はクーラーの設定温度が低い?」
外から帰ってきた私はリビングに入ってふと首を少し傾げた。
暑い外からクーラーが効いた部屋の中に入ると涼しく感じるのはいつもの事だが、なんか今日はいつもよりキンキンに冷えている感じ?
「ま〜ね〜。
考えてみたらウチは炎華が居るんだから、節電に励んで28度にクーラーを設定する必要がないじゃんって思い至って。
これから色々な温度を試してみる予定〜」
膝の上に乗った源之助を幸せそうに撫でながら碧が言った。
「そっかぁ。
28度じゃあちょっと涼しさが足りなくて膝の上に来てくれないよね。
今って25度ぐらい?」
それなりに愛情深い源之助だが、暑いのは苦手らしく夏になってからは碧ですら膝に寄り付かなくなっていた。
暑いのはお互い様なので碧も諦めていたが、考えてみたら節電しなくてもウチは部屋をグッと涼しく出来たもんねぇ。
冬は20度ぐらいを下回ると身動き取れないぐらいべったり近付いてくれるが、夏は25度でも肌寒い感じで人肌が恋しくなるみたい?
それとも肌寒いと言うよりは単に暑さが気にならないから碧に乗って気持ちよく昼寝できるってだけかな?
「そうだね。
ずっと座ったままだと凛が寒いかもだけど、そうなったらごめんね」
碧が源之助の耳の後ろをこちょこちょと撫でながら言った。
「別に、肌寒かったら長袖を着るなり靴下を履くなりするから、25度ならどうとでもなるし大丈夫よん」
冬になったら20度でも快適な暖かさって感じなんだから、服装を調整すれば25度なんて快適な春か秋の気温って程度でしょう。
しかも冷たい風がビュンビュンとエアコンから出て来るって言うならまだしも、炎華が良い感じに熱を吸収してくれたところに少しオマケ程度にエアコンで湿度を調整しているだけだから、家の中は快適だ。
「そう言えばさぁ、思ったんだけど炎華みたいな熱を扱う幻獣に何体か来てもらって大気中とか海の熱をちょびっと吸収してもらって地球の温度を平均2度ぐらい冷まして貰うのって可能だったりするの?
白龍さまや炎華だけに頼るつもりはないけど、世界が滅びそうになったらそう言うお願いするのって可能かな?」
碧がふと炎華に尋ねた。
『地球を氷の球にするのは全然可能だけど、微妙な調整って難しいですからねぇ。
氷漬けにしてから慌てて温めてと言うのを何度かやっても良いですか?』
ちょっと首を傾げながら炎華が応じる。
「いや、それはノアの洪水や氷河期を短期間に繰り返す羽目になりそうだから、出来れば避けた方がいいと思う」
山が多い日本の領土は物理的には残るかも知れないが、大多数の人口が平地に住んでいることを考えると不味そうだ。
なんと言ったって東京だけでも海抜0メートル地域に何十万人もの人が住んでいるのだ。
急激な温度変化で洪水がバンバンおきたら増え過ぎた世界の人口をがっつり間引く結果になってしまうだろう。
人口が20世紀初期ぐらいまで減るのは人類継続性の展望に関してはプラスかも知れないが、文明のかなりの部分も水に押し流されそうだから、それこそ核戦争でも起きそうって言うんじゃない限り避けた方が良さそうな選択肢だ。
「炎華が良い感じにこの部屋の温度を調整してくれるから、東京全体の熱を吸収して蒸し暑いのをなんとか出来たら良いのに・・・って考えたのの延長線上な考えだったんだけど、やっぱ無理か〜」
碧が残念そうに言った。
『がっと熱を吸収するとか放熱するのは簡単なんですけどね〜。
微調整って吸収する以上の魔力を使うので、この世界でやろうとすると厳しいです〜』
炎華が言った。
あ〜。
微調整ねぇ。
この家ではかなり良い感じにできているんだけど、やっぱ範囲が広くなると厳しいのかな。
「え?!
もしかして、部屋を涼しくして貰うのも負担なの?!」
碧が愕然とした顔をした。
炎華の為に快適な温度を諦めるべきか、悩み始めそう。
『この部屋ぐらいのサイズだったら大した事は無いですよ〜。
巣としてここら辺はマーキングしてそこそこ微調整しやすい様に手を加えてますし〜。
だけど星全体となるとやはりコントロールが難しくって、うっかり熱を取り過ぎちゃう部分が出て来るし、それを修正しようとしてうっかり水が蒸発するぐらい暑くしちゃうところも出そうだから〜。
ちょこちょこ失敗しつつも微調整しながら何十年か掛ければ良い感じにできるとは思うんですが・・・人間って水が蒸発する温度にすると死んじゃうって話ですし、それじゃあ不味いですよね?』
のんびりと炎華が尋ねた。
氷河期と恐竜が居たような暑い時期の繰り返しと言うよりも、更に極端だった!
水が蒸発するぐらい暑くなると、生命全般がほぼ死に絶えない??
種になった植物の一部と、深海生物とかが一部生き残ってまた地球の進化の過程が極々初期からやり直しになりそう。
幻獣に地球温暖化問題の解決を頼むのは諦めた方が良さげだ。
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