第952話 折角の氏神さまなんだけどねぇ

「なんで曇りなのにこうも暑いの?!」

立ち止まってスポーツドリンクを飲み干した碧が、ぐあ〜!!と叫びながら不満を爆発させた。


こないだ戦場跡と城跡を探した時は最初に尼寺に行ったせいかちょっと寒々しい感覚が暫く残っていた上に、調査中だったからあちこちで立ち止まって残留思念に魔力を与えて尋問していたから、暑かったけどなんとか我慢できる感じだったんだよねぇ。


それが今日はひたすらスープの中でもかき分けて進んでいる様な生暑い空気の中を歩いているので、汗が滝の様に流れているし、何よりも暑い!!


これでも保冷バッグの中に凍らせたスポーツドリンクを3本ずつ詰めて亜空間収納に入れて来たので、凍ったスポーツドリンクのボトルをタオルで巻いて首元に付けながら歩いているから少しはマシだと思うけど。

マジでこんな暑い最中に歩き回っていたら熱中症になりそうだ。

単に歩くのですらダメとなると、本当に日本でもシエスタの習慣を導入すべきじゃない?

まあ、クーラーがある室内で働く分には昼寝は必要ないけど。


「夏って太陽からの距離が地球の軸の傾き分だけ近いから日差しが強くて暑いんだと思っていたけど、曇りでもこうも暑いと何か新種の呪いかよ?!って気がしてくるね」

多分ここら辺に来る前に何処かで日に温められた高温の空気が流入しているんだろうけど、日本なんぞ海に囲まれた島国なのだ。

流石に海水温度が30度を超えたりはしないよね??

だとしたらなんだって海を超えている間に温度が下がらないのか!?


迷惑すぎる!!


「マジでね〜。

ちなみに気候に影響を与える様な術って前世ではあったの?」

碧がタオルで汗を拭い、空になったペットボトルをこちらに寄越しながら聞いて来た。


亜空間収納から新しいボトルを取り出しながら前世で聞いた話を思い起こす。

前世で私が生きていた時代では母国が周辺で一番魔術が発達した国であり、しかも他国を侵略する程に周辺国へ興味を感じていなかったので、そんな広域魔術があったとしても使われた事は無かった。


古代文化にそんな術があったかは知らないが・・・気候を弄れたら凄い脅威だよね。

今だって温暖化でクソ暑くなってきたけど、これでまだ年間平均気温が中世の頃より1.5度も上がっていないレベルらしいのだ。


つまり、敵国の気温を1度だけでも上げられたら水害とか旱魃とかの発生確率をぐっと上げられるって事になりそう。

上手く使えれば、戦争の前準備としての間接的な攻撃としては壊滅的な脅威だ。


とは言え。

地球温暖化が一部地域だけの問題に収まっていないのと同じで、下手な気温変動を仕掛けたら自国にそれの反動が来て更に悲惨な災害は起きる可能性も高そう。


「術としては無かったと思う。

こう、雨雲を集める様な幻獣をどっかに召喚するとか追い出そうとするとかって話は御伽話には時折出て来ていたけど。

普通の人間には広域で気候に影響を与えられる様な幻獣を召喚するのも従わせるのも無理だからね〜。

現実性はないかな」


と言うか。

呼び出すのは無理でも、せっかく雲とか雨に影響を与えられそうな白龍さまが碧を気に入っているのだ。

「・・・白龍さまに高気圧を海の方へ押し出して貰うのって駄目かなぁ?」


今の熱波って高気圧が関東周辺に張り出しているせいで暑い風が流れ込んでいる上に雨が降らないからひたすら地面も人間もジリジリと熱に焼かれているんでしょ?

高気圧がどいたら雨が降って少しは気温が下がらないかね?


と言うか、今日は曇りなんだから高気圧がどいている状態??

それでも暑すぎるぞ!


『やってみても良いが・・・気圧や雲を動かすと後の反動がどう出るか分からんぞ?』

ちょっと期待を込めて見つめてきた碧に白龍さまがちょっと困った様に応じる。


そっかぁ。


「やっぱだめですかぁ。

じゃあ、さっさと終わらせて帰ろう!」

碧が言い、携帯を取り出して現在地を確認した。


戦場跡と城跡は適当に中央地点ぐらいで広く浅く清める予定なんだよね。

碧が。


さっさと終わらせて、尼寺に行って浄化した後に森で涼もう!



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カクヨムさんで別に書いている短めに終わる予定(希望!)な話の最新話を久しぶりにアップしました。

良かったら読んでみて下さい。

https://kakuyomu.jp/works/16818023211694735678






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