第947話 頼ってます

「退魔師っぽいけど除霊じゃない仕事をバイトでする事になったんだけど、なんかちょうど良い契約書の雛形がないかな?」

家に帰り、碧に尋ねた。


快適生活ラボの書類関係は碧に任せてるんだよねぇ。

と言うか、書類以外も碧パパ経由で色々と頼っちゃってて、私らのパートナーシップってちょっと私の方が甘えている気がする。


悪霊や呪詛や魔道具なんかに関しては私の方が色々知っているけど、ダイエットとか健康関係も碧に頼む事が多いし、気を付けないと碧に寄生してるって白龍さまに怒られちゃいそう。


早いところコン吉に魔力と丁度いい躯体を提供して、せめて家の掃除役を任せられるようにしよう。

まだクイック◯ワイパーを上手く使える躯体が見つからなくて試行錯誤中なんだよねぇ。


「退魔師っぽいけど除霊じゃないバイト??」

碧が目を丸くして聞き返す。


「大学図書館の東川さん。

悪霊に取り憑かれながら随時神社で厄祓いしつつ古戦場跡や城跡を探してる強者の話、したじゃん?

今日大学図書館に居なかったから聞いてみたら、実は探している最中に熱中症みたいな症状でぶっ倒れて入院してたの。

念の為にお見舞いに行ってみたら何やらそこそこ強力な悪霊に行き当たっちゃったみたいで・・・。

流石に退魔協会に今から依頼して調査待ちさせるのも可哀想だから祓ったら、何処ぞの尼寺に避難していた武家の女子供が敵方に襲われて嬲り殺された結果だった。

んで、流石にああ言うのにもう一度遭遇した場合、バス停に辿り着く前に倒れたら今の気候じゃあ死ぬかもって事で諦めて除霊を頼む事にしたんだって」

これってもっと過ごし易い春や秋だったらこのまま頑張ったんかな?


何でも彼は実は歴史が専攻で、研究の専門分野で食っていけなかったから司書の資格をとって教授の伝手を頼り、大学図書館で安い給料の代わりに残業がない仕事を見つけたんだと言っていた。


適時神社で厄祓いをしたり、退魔協会を雇うとか慰霊碑を作るとかって話をしていたから金持ちなのかと思ったら、それなりにお金はあるけど一生働かずに発掘しながら生きていける程の資産は無いのだと苦笑しながら言われた。


発掘の方の費用がネックだったっぽい言い方だったなぁ。

働かなくても食っていける程の資産家って、一体実家は何をやっている家なんだろ?

退魔協会の事を知らなかったみたいだが・・・。


まあ、戦後に成り上がった系だったら悪霊とか退魔師とかってあまり真面目に取り合う様子を見せられない見栄みたいのがあって、父親側が家族から隠していたのかも?

もしくは事業に興味を見せない学者肌な息子と仲が悪いとか。


ウチの大学だって一応一流と言えなくもないレベルだから、そこの大学図書館に伝手で司書になれる人材ってそれなりに賢いんだと思うけどね。


まあ、賢いなら余計に歴史なんて言う金にならない趣味の為に司書なんて言うショボい(多分)仕事に就くのではなく、社会に出て金を稼げって親としては思うのかもだが。


前世だったら遺跡の発掘はそれなりに古代文化の失われてしまった魔法陣や魔道具の発見や解明が金になる事もあったから、一攫千金を狙う探索者だけでなく貴族とかもそれなりに関わっていたんだけどねぇ。


日本じゃあ完全にドリーマーの趣味扱いな気がする。

精々、面白いものが見つかったら町興しの観光資源扱い?


「でも除霊じゃないんだよね?」

碧が指摘する、


「あ、今日の尼寺悪霊は辛そうだったし神社で祓うのも厳しそうな感じだったから祓った。

これが振り込みね」

ネットバンキングで快適生活ラボの口座にログインし、入金明細のところを表示して碧に見せる。


レシートは持参してなかったので、明日行く際に契約書と一緒に持っていかないと。


「毎度あり〜。

で?

除霊以外だったら何をするの?」

碧がPCを引っ張り出して会計アプリに入金を入力し始めながら聞く。


「退魔協会に城跡と古戦場跡と尼寺跡の除霊を頼むにも、場所を特定しなくちゃでしょ?

尼寺の方はかなり露骨にずしっと来たから場所は多分分かるらしいんだけど、それの確認と城跡と古戦場跡の確定をお願いされた。

勿論、見つからなくても責任は無しで、その場合は成功報酬なしな時給制になるけど」

適当に提案したらオッケーが出たんで合意した内容を碧に見せながら説明する。


「ふう〜ん。

面白そう?

私も一緒に行っても良い?」

好奇心をくすぐられたのか、碧が言ってきた。


「碧の分のバイト料無しで良いならね〜」

ちょっと郊外の森というか小山っぽいところな様なので、そう言うところを歩くのは碧の方が慣れてそうだし、来てくれるならそれはそれで有難い。

だけど流石に時給は倍請求するのは気が引けるからね。

成功報酬はどうせ快適生活ラボ行きだから二人で山分けなんだけど。


「構わないよ。

取り敢えず、契約書類は普段の除霊用の奴で内容をちょっと修正すれば良いんじゃない?」

かちゃかちゃとPCで書類を弄りながら碧が言った。


流石碧、実務に強いね〜。




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