第941話 ちょっと危険な趣味だった?

「あれ?

こないだは調子が良さそうだったのに、また疲れてません?」

3日ぶりに見掛けた司書東川さんに声を掛ける。


不眠対策用のお守りのお陰で眠れてはいるらしく目の下に隈は無いが、折角ここ数日消えていた悪霊がまたいるので、体調は悪いだろう。

憑かれているだけに。


「そうなんだよねぇ。

あのお守りの陰か、ちゃんと眠れてすっごく助かってるし、神社巡りをしながら厄祓いをして貰ったら体調が良くなっていたのに、ここ2日ほどまた肩がずんっと重いし頭も痛いしで」

溜め息を吐きながら東川さんが言った。


やっぱ、悪霊に憑かれる何か不自然な原因があるっぽいね〜。

どうすっかな。

神社巡りで厄祓いをし続ければ悪霊を祓えるだろうけど、継続的にやっている行動もしくは日常的な生活に悪霊へ接触する原因があるなら、なんとかしないと根本的な解決にはならない。


相談に乗るとしたら、ある程度は話をしないとだなぁ。


周囲をざっと確認し、話が聞こえる範囲に誰もいないのを確認してから小さめな人避け結界を二人の周辺に展開して口を開く。

夏休みだから大学の図書館も空いているんだよねぇ。

クーラー目当てに昼寝しにくる学生もいる様だが、受付の方には用がないからか殆ど寄ってこない。

暫くは何か調べ事に関して相談したかったら別の司書に声を掛けてもらおう。


「え〜っと、私って実は霊感があるんですけど、東川さんったら悪霊に取り憑かれてますよ?

こないだお守りを渡した時も憑いていましたが、神社巡りしている間に祓えた様だったのにまた戻っています。

何か悪霊に取り憑かれる様な場所に行ってます?」

一応話が終わった後に私のことを気軽に人に言って回らないように意識誘導しておくつもりだけど、取り敢えず情報共有しないと相談にも乗れないからね。


流石に頼まれもしないのに態々勝手に記憶を読んで問題を解決しようとする程お節介を焼くつもりはない。


「え?・・・ええ?!

悪霊??」

呆気に取られた様な顔をして私の言葉を聞いていた東川さんだが、やがて再起動して口をパクパクしながら反応を返してきた。


霊感よりも悪霊の方がびっくりらしい。


「だから神社巡りで厄祓いしたら体調が良くなったんですよ。

でもまた悪霊が憑いているんで、体調が悪くなる度に神社で厄祓いするのもありですが・・・原因が分かりそうだったらそれを根本から解決する方が良いのでは?

私個人では解決までは難しいですが、話を聞いてどこを頼れば良いかを紹介するぐらいは出来ますよ」

知り合いだし、色々と調べ事でも親身になって助けてくれる人だから本当は一回ぐらいだったら無料サービスしても良いんだけどね。


でも、一度無料で助けたら次回も無料で助けてくれるよねと期待されたり、他の人が困っていたら善意で私の事を紹介してそっちも無料での助けを期待する可能性もありそうだからねぇ。


だから相談だけ乗って、解決そのものに関しては退魔協会に依頼する様に言おう。

下手に無料なヘルプ要員として大学で名前を広げたりしたら色々と面倒そうだ。


折角親切で助けたのに、次にも善意で助けてって言われたのを拒否したら関係が拗れたりしかねないし。

2週間以内に再度悪霊に憑かれ直すような行動をしているか環境にいるのだ。

果てしなく助けを求められる羽目になる可能性もゼロではない。


東川さんはちゃんと良識のある人だと思うけど、司書としての役割以外での彼の事はそこまではよく知らないからね。


「・・・俺の趣味って古い資料や手紙を調べて判明した戦国時代の古戦場とか城跡を回ってご先祖様だって言うマイナーな武家の歴史を辿る事なんだけど・・・それのせいなのかな?

最近解読出来た資料から小さな山城の跡だったと思われる場所を見つけようと山の中を歩いていたんだが・・・悪霊に憑かれているって事は、城跡に辿り着けたって事かも?

そこは最後の戦いで籠城した上に食糧切れになって打って出て全滅したらしいから」

ちょっと首を傾げながら東川さんが言った。


なんか嬉しげなんだけど?!

まあ、探していた城跡なんぞを見つけられたら大きいんかもね。

しっかし。

司書なのに、考古学者か歴史学者っぽい趣味なんだね〜。


それで悪霊に憑かれてたら世話ないけど。

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