悪霊は貴重な歴史の証人?

第940話 お土産用です

「うわ」

諏訪から帰り、夏休み中に2週間の実技集中講義(?)へ参加する必要のある体育の単位の為に大学に来た。

ついでに後期の講義に関連する書籍を何冊か借りて読んでおこうと図書館に来たら、受付に知り合いの男性が目の下に物凄い隈を飼いつつ座っていた。


肩の後ろに悪霊っぽいのが憑いているから、それのせいなんだろうなぁ。

図書館でのやり取りでしか知らない人だけど、死霊に怨まれるようなロクデナシでは無いと思うんだが。


「なんか凄い顔色が悪いですね〜。

ちゃんと眠れてます?」

時折レポートに使う資料に関して相談に乗って貰った司書さんなので、声を掛けてみる。


何か相談されたら助けるのも吝かじゃないけど、単にどさくさ紛れに祓うだけじゃあ問題の解決にならないかもだし、知り合いだからって悪霊を通りすがりに無料で祓っていたら退魔協会から睨まれかねない。


「いやぁ、最近夢見が悪くって・・・」

疲れたように溜め息を吐きながら司書さんが言った。


ふむ。

大した悪霊じゃ無さげだから、当たりな神社に行って厄祓いすればそれで十分なレベルに見えるかな。

取り敢えず先ずは体力を回復した方が良さそうだが。


「知り合いの神社で売っていた不眠症用のお守りなんですけど、面白そうなのでお土産にと思って適当に沢山買ってきたので一つどうぞ。

寝る時に枕元に置いておくとぐっすり眠れるらしいですよ?」

少なくとも睡眠不足が解消されたら体力と気力が回復して、自力で悪霊を跳ね除けられるかもだし。


「不眠症用のお守りなんてあるんだ?」

お守りにでも縋りたい気分なのか、あっさりそれを受け取って司書さんがじっくりお守りを手に取って見つめた。


「神社のお守りが効くようだったら、何か神様の守りが必要な状態だって聞いた事がありますから、効いたら厄祓いしつつ神社巡りしてみるのも良いかも?

何ヶ所か回ってみると東川さんの問題と相性の良い神様を祀っている神社に行き当たるかもだし」

まあ、神様の相性っていうよりは当たりなちゃんとした神社に行き当たるのが重要なんだけどね〜。


「厄祓いね・・・。

確かに、精神科医に行くよりも良いかも?」

溜め息を吐きながら顔を擦った司書東川さんが呟いた。


お?

精神科医に行く事も考えていらんだ?

だったらそっちでも悪霊憑きだって正しく診断されれば退魔協会へ紹介して貰える・・・筈?


考えてみたら、精神科医で悪霊憑きだと分かったら退魔協会へ紹介するのか、提携している退魔師を紹介するのか、神社で厄祓いをするよう勧められるのか、診断の後の流れについては知らないな。


まあ、ヤブな精神科医に当たったら治療費だけを延々と取られて何の解決にもならない可能性もあるから、神社巡りをお勧めしたいね。

ハズレが多くて3、4ヶ所回る羽目になっても、退魔協会に依頼するよりは安い筈だし。


考えてみたら、精神科医経由で退魔協会に紹介された場合って医療保険が効いたりするのかな?

体調不良を治す為も行為なんだから、医療費と似た扱いでも良い気がするが。


まあ、詐欺師紛いな退魔師モドキに捕まった場合にそれにも国の金を使うのかって言うのは問題になるから、保険は効かないかも?


悪霊に憑かれるのって自業自得なケースも多いしね。

恨みながら死ぬような状況に誰かを追い詰めたり、ヤバいホットスポットだと評判になっている幽霊屋敷みたいなところに態々遊びに行ったり、古い慰霊碑を壊したりして呪われたり悪霊に憑かれたりした因果応報的な苦しみだったら、働いている人間が天引きされている健康保険料からそこそこな大金が出ていくのってちょっと納得し辛い。


受け取るのが自分や自分の同業者だとしても。

難しい問題だね。


「先ずは神社巡りをして厄祓いで何かスッキリするか試して、スッキリした後でまた体調不良が起きるようだったら精神科医に行ってみては?」

継続的に悪霊に憑かれるような精神状態だとか環境なんだとしたら、精神科医で相談に乗って貰うなり、退魔協会に紹介して貰うなりした方が良いからね。


ハズレな神社で厄祓いした際にプラセボ効果で気分が良くなったって思い込んじゃった場合は問題だけど・・・まあ、それでも精神科医に診て貰えばなんとかなるでしょう。

多分。


体育の集中講義がある間は時折図書館に顔を出して確認しようかな?


秋に授業が再開するまで放置したら手遅れになりそうな程、危険そうな悪霊じゃあないっぽいけど・・・突如何かトリガーを踏んで一気に殺意が高まる可能性もゼロではないからなぁ。


体育の集中講義が終わるまでに解決していない様子だったら、お盆休みの後ぐらいにでも見にくるかな・・・。




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