第889話 因果応報って素晴らしい
「やっぱ依頼主は知らないみたい。
コイツも好奇心でSNSのIDを調べてみたようだけど捨て垢なのか、全然他に痕跡は見つからなかったって記憶しか無いわ〜。
この際、白龍さまに天罰を下して貰ったら依頼を出したのが誰なのかを確定できないかな?」
記憶にはコイツが深く考えずにSNS経由で暗号資産を受け取る様な違法っぽいバイトをいくつかやっている過去も見えるが、本人的には違法行為をしていると言う意識すら無いようだ。
自分の身近な世界に時折ニュースとかで聞く『闇バイト』があって、自分がやっているのも所謂違法な行為であるって考えてすらいない。
決定的に想像力に欠けてるね〜。
なんかこう、ラノベなんかによくある権力者が庶民への情報を制限している中世っぽいナーロッパな世界に比べて、現代日本では一般庶民でも子供の頃から教育やテレビやネットで触れる情報があれだけ多いのに、ニュースの内容を自分の世界に当て嵌めて考える想像力が無い人間がそれなりにいるのってなんでなんだろ?
知識や情報がないから想像も出来ないって言うなら分かるけど、あるのに考えないのは不思議だ。
コイツなんて、一般人が異世界転移してナイセイ無双するタイプのラノベも好きらしいのに。
まあ、好きなのは他者よりも優れた知識を披露して金を稼ぎ偉くなり、美人にモテまくってハーレムを作っている自分を夢想する事みたいだけど。
要は、思考力って環境を整えても本人が使う気がなきゃ芽生えないって事なんだろうねぇ。
一応手袋をしたりマスクをしたりで自分に繋がらないように用心はしているんだから、無意識ではやっている事が正しく無い事だとは分かっているのだろうが、本人的には『バレたら面倒そうだから』とだけ自分に言い訳して、ちょっとグレーな報復っぽい事を手助けしているとしか思っていない。
確かに郵便受けへインクを注入する程度だったらそれ程大した事じゃあないけど・・・二つ前のバイトなんて多分特殊詐欺の現金を受け取る役をやったんじゃ無いかなぁ。
これなんてガチで黒でしょうに。
「お願いできますか?」
碧が宙に現れた白龍さまに黒幕特定を頼む。
『構わんぞ。
何か希望はあるかの?』
ひょいっと尻尾を動かしながら白龍さまが聞いた。
「ついでに天罰の内容を、これからの事で良いので悪事に加担したら因果応報っぽい何かが働くように出来ませんかね?
そこそこみみっちい悪事を沢山やっている様なので、それがバレて罰されればざまぁみろって感じだし、懲りて悪事をしない様になったらそれはそれで良しと言う事で」
前回の赤インクはこいつじゃ無いから、今回1回分の嫌がらせの天罰はささやかになるだろう。
だったら今後の悪事で痛い目に遭って貰えば良い。
依頼を出した人間もきっと悪事を繰り返しているんだろうから、それも発覚したりして痛い目に遭えば更にザマァ!ってところだし。
依頼人が分かったらこっちもそれなりに手を打たせて貰うつもりだけど。
『うむ。
それは良いかも知れんな』
頷きながら白龍さまからピシッと細い雷の様な光が発して男に刺さり、更にそれが駅の向こうのほうへ飛んでいった。
『・・・ふむ。
どうやら依頼を出した大元の人間はこないだ会った、蔵に一杯穢れた骨董品を集めていた女の様じゃの』
白龍さまが言った。
「宮田さんの義妹かぁ。
離婚とか警察の捜査とかで忙しいだろうと思ったのに、こう言う嫌がらせをする暇はあるのね」
碧が呆れた様に言った。
「ちらっと会っただけで紹介すらされなかったのに、良くぞ私らの名前や住所を調べられたね」
宮田さんの弟氏には自己紹介したけど、彼がうっかり名前を漏らしたのかな?
もしくは宮田さんの家を誰かに家探しでもさせて情報を得たとか?
カリスマ祈祷師の事がバレているなら黒崎さんの神社に嫌がらせをされていないか、一応確認した方が良いかなぁ。
まあ、日本では鳥居を設置すると不法投棄されるゴミが減るって話だから、神社に直接嫌がらせをするのに加担する人は少ないかな?
外国人なんかは日本の神社やお寺を敬う感覚がないせいか、柱とか仏像とかに変なインクとか油を掛ける人が捕まったなんてニュースをたまに見るが。そんな外国人がSNS経由で闇バイトに手を出していない事を期待しよう。
「さて。
コイツはどうしようか?」
碧が溜め息を吐いて立ち上がりながら聞いてきた。
「取り敢えずそこら辺に酔っ払って座り込んで寝ちゃったっぽい感じに転がしておこうよ。
30分ぐらいしたら覚醒する様にしておけば良いっしょ」
ハネナガ曰く、私らを見ている人はいないらしいし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます