第887話 自力で解決しよう

『窃盗とかチンケな恐喝をやっていた様なチンピラですね』

碧が田端氏に頼んで警察に私たちの郵便受けの指紋を調べさせ、警察のデータベースを確認したところ、一応ショボい前科がある人間だと言うことが判明した。


「前科持ちなら逮捕して起訴出来たりします?」

赤インクを郵便物にぶちまけた程度で本格的な処罰を与えられるかは非常に怪しい気もするが。


郵便物への迷惑行為程度で何とか出来るなら、世の中のストーカーをもっと簡単に対処できているだろう。


『何の関連性も無い郵便受けに指紋があったから犯人だろうと判断された程度で、防犯カメラでも犯人の背中が邪魔で手が触れた位置が映ってはいないですし、状況証拠だけでは逮捕は無理ですね。

どちらにせよ、郵便物への悪戯だったら初回は警告程度、何度も繰り返されても起訴はまず無いと思います』

溜め息を吐きながら田端氏が言った。


一応法律としては刑罰がある様だが、被害と司法コストを考えると態々捜査して起訴するメリットが国には無いって感じなのかな。


まあ、殺人犯とか強盗犯とかを捕まえて刑務所に押し込むリソースを、郵便物への悪戯をする人の逮捕に使うのは無駄だと判断されても文句は言えない・・・かな?


と言うか、実際に命に関わる様な結果に繋がることが多いと証明されているストーカー事件でも碌な対応をしないのだ。

嫌がらせ程度じゃあ、期待するだけ無駄か。

近所のおばさんが嫌がらせをしていたなら警官が玄関に現れて警告したらビビって止めるだろうけど、ショボくても前科持ちなチンピラだったら何処までだったら警察が本格的に関与しないって分かっていそうだ。


一応警察にはそれなりに協力しているけど、偉そうな事を言ってきた連中は跳ね除けているから上層部には生意気だと嫌われている可能性もあるし。


何と言っても政治家からは確実に嫌われているだろうから、嫌がらせとして起訴させるなと圧力を掛けることはあっても、協力しろとは言わないだろなぁ。

もしくは、協力して欲しかったら碧が治療の面で貢献しろと言ってくるか。


まあ、下手に脅す様な言動をしたら白龍さまの天罰デフェンスが発動するかも知れないんで、賢い政治家は素知らぬふりをするかな?


「分かったわ。

どうもありがとう」

溜め息を吐きつつ、碧が簡単にお礼を言って通話を切った。

どうせ実行犯を捕まえられたところで警察が依頼した黒幕へ辿り着ける可能性は低いしね〜。


「こうなると、ある意味防犯カメラがあるのが邪魔ね〜。

そいつが来た所を昏倒させて、部屋に連れ込んで色々記憶を読むって訳にいかないし、いつ来るか分からないから車をレンタルしておいて帰り道で眠らせて車に押し込んであれこれするって訳にもいかないし」

それこそ、ゴミ置き場を漁ってうちらのゴミを探すとか、家に空き巣に入ろうとして4階まで上がってくるとかしてくれたら人目のないところで記憶を読めるんだけどなぁ。


「クルミかハネナガに昏倒の結界をかけて、うちの郵便受けに悪戯したら帰り道で人目がないところで昏倒させて、私たちが着替えてそこまで出向けば?

もしも私らが辿り着く前に誰かに見つかっちゃったらそれはそれで手を出しちゃいけない相手にちょっかいを出した報いだと思ってくれるかも?」

碧が提案した。


確かにね。

誰か運転する人と二人組になって移動しているんじゃない限り、上手くいけば車で来ていて、人目のないところにそれを停めている可能性は高そうだ。

車に乗り込んだ瞬間に昏倒させれば人目を引かずに色々調べられそう。


「それが良いね。

昏倒結界をクルミとハネナガから展開できる様にしておこう」

魔石があったら楽なんだけど、数十分程度の効果でいいんだったら聖域の雑草でも術を込められる。


クルミとハネナガに持たせておいて、暫くは寝る時にジャージで寝てれば良いだろう。

幸い、最近は気温もそこそこ良い感じだからちょっと涼しい程度で済むはずだし。


伊達メガネとマスクで顔を隠せば万全だね!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る