第879話 襲撃?

「考えてみたら、水に浸けていいとなると壺とかの陶器や磁器系か、ワンチャン武器系って事でしょ?

陶器や磁器だったらまだしも、武器系のヤバいのを沢山集めているとしたら、穢れが相乗効果で大きくなった上に思う様に買い集めた品を売れないストレスと相まって、その迷惑ジジイが誰かを殺しに走ったりしないですかね?」

足湯から出て、渡されたハンドタオルで足を拭きながらふと気になった事を尋ねる。


足湯のそばに籠いっぱいにハンドタオルが積んであるので、ハンカチで頑張って拭かなくて済むのは助かる。

何やら温泉宿っぽい名前がプリントされているのでここを買い取った時についでに引き取ったのかな?


それはさておき。

穢れに触れすぎた人間って精神状態に異常が出る事も多い。

自己否定系に振れて自殺しちゃうタイプもいるが、話を聞くにその迷惑ジジイは逆恨みして周囲へ報復しようとするタイプな気がする。

自己中な人間って自分を否定する前に他者に責任転嫁するから、誰かが死ぬべきだと思い詰めた時に自分じゃなくって他人を殺そうとするんだよね〜。


そうなった場合に、家の包丁を持ち出して襲ってくるのも十分危険だが、戦国時代の刀とか鎌とかを持ち出されたら更にヤバい。


日本刀って人間を一人か二人切ったら刃がガタガタになって一気に武器としての効果は下がるとどっかのラノベで読んだ記憶はあるが、それでも尖った鉄の塊なのだ。

高齢者とは言え男の力でそれを振り回して刺そうとかしてきたら、危険だろう。

まあ、日本刀が色々と買い集めたと思われるヤバい骨董品の中に含まれているかは不明だが。


「・・・確かにそうね。

柴田さんはもう敷地には入れ無い様に警備の人に言っておくわ。

ついでに、彼が逆上する危険もあるから用心する様にも注意して、異常そうな様子だったら直ぐに警察を呼ぶ様に念を押しておくわね」

美帆さんがちょっと考えてから言った。


どうやら美帆さんにも迷惑ジジイ(柴田氏?)は穢れに捉われたら八つ当たりで他者を害する可能性のあるタイプだと判断されたらしい。


「う〜ん、危険かもってだけで逮捕する訳にはいかないけど、古物商免許を取り消されたら直ぐに逆上して暴発しそうなタイプなの?

怪我する危険があるなら私がそばに居た方が良いかしら?」

碧が悩み始めた。


いや、いつ暴発するか分からない人間を警戒して碧がいつまでもここに残る訳にはいかんでしょう。

安全性を優先するなら、その迷惑ジジイとジジイの店(もしくは倉庫?)を一気に清めて買い集めたと思われるヤバい骨董品を全部浄化するのが一番安全ではあるんだけどねぇ。


だが、危険防止の為とは言っても迷惑で自己中なジジイを一度無料で助けたら、次回も助けて貰えると思って懲りずに同じ事を繰り返しそうだ。

それどころか、早く碧を呼べとばかりに美帆さんに今まで以上に迷惑を掛ける可能性すらある。


「ちなみに、その迷惑なご近所さんの会社を継いだ息子って顔見知りなんですか?

赤ちゃんがいる家に穢れた品を持ち込ませろと付き纏われて困っていると相談っぽい感じで連絡して、その際に穢れに塗れた骨董品を買い集めたなら近いうちに誰かを襲って殺そうとする可能性があるから危険だし、事件が起きたりしたら親族全体への風評被害が凄まじい事になりかねないから父親を止めた方が良いのではと言ってみたらどうですかね?」

美帆さんに提案してみる。


最近のネット社会では、事件を起こした加害者の関係者は事件が報道された途端に正義漢気取りな連中に家族や職場の情報まで暴かれて、学校で虐めに遭ったり職場で孤立して最終的には辞める様に促されたりと言った被害が色々と伸し掛かってくると聞く。


これは、事前に止められるなら家族達にとっても絶対に防ぎたい事態だろう。


赤の他人の私たちでは退魔師として危険度が高そうだと思っても、依頼なしに出来る事は限られている。

付き纏われて迷惑を被っていて、もしもの場合のターゲットになる可能性が高くて危険に晒されている美帆さんも、せいぜい接近禁止命令を出す手続きを始める程度のことしか出来なそうだ。


その点、息子だったらそれなりに強引に対処も出来る・・・かも知れない。

ボケたって主張して成人後見人になって資金を断ち切るとか、精神異常を起こしているって主張してどっかの精神病院に放り込むとか。


・・・どっちも専門医を抱き込まないとダメだから、難しそうだが。

考えてみたら、ボケたと主張しても言動がまともそうなら高齢者施設に入れてもそれほどしっかり拘束して外に出て行かない様には出来ないだろう。


一番現実的なのは、息子が金を払って迷惑ジジイとジジイの買ったヤバい骨董品を神社なり退魔協会なりにスッキリ清めさせる事だろうなぁ。


「一応息子さんにはそれとなく迷惑しているんだけどって伝えてあるんだけどねぇ」

溜め息を吐きながら美帆さんが言った。


あ、そうなんだ。

「ちなみに息子さんが迷惑爺さんと爺さんが買い集めたらしき骨董品の浄化代を出す可能性は?」

自分の尻拭いのために息子が大金を払ったと知れば迷惑ジジイとて目が覚めるかも?


「「キャァァァァ!!」」

表の方から甲高い悲鳴が聞こえてきた。


げ。

もう手遅れだった??


・・・温泉に入る前の襲撃で良かった。

裸で温泉に入っている時に悲鳴なんぞ聞こえても、困るわ〜。


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カクヨムさんで別に書いている短めに終わる予定(希望!)な話の最新話をアップしました。前回の話の補足っぽい感じです。

良かったら読んでみて下さい。

https://kakuyomu.jp/works/16818023211694735678





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