第865話 無いじゃん。

「妻の贈った装飾品に興味があるからこちらも見たいとの事ですが、特に売る気は無いそうですよ?」


宮田さんの弟氏も豪邸に住んでいた。

最近は高級マンションのペントハウスとかで5億とか6億とかする様な凄いマンションもある様だが(最近じゃなくて昔からあったのかもだけど)、やはり戸建ての豪邸の方がスケールが大きい気がする。

庭とか蔵とか離れとか、やっぱ独立した屋敷の方がマンションには無い広がりがあるからねぇ。


ここは何億するんだろ?

場所は宮田さんの家より郊外だが、十分良い住宅地だし、なんと言っても庶民な私から見たら違和感を感じるぐらい立派だ。


宮田さんはあの家を貰った代わりに会社の株は弟氏の半分以下だったらしいが、あの家とこの家でそこまで価値が違うんかね?

それとも弟氏が会社で頑張って金を稼いでこの豪邸をゲットしたのか。

まあ、ローンが残っている可能性もあるかな?

仕事関係の接待とかで屋敷を使うんだったら会社の経費扱いに出来る部分もあるだろうし、会社から資金を引き出しているのかもだね。


まあ、それはともかく。

宮田さんと訪れたら、まず弟氏に迎えられた。

微妙に迷惑そうだったけど。


肝心の贈り主である奥さんはどこにいるんだろ?

本人のオーラとかもちょっと確認すべきかもと思っていたんだけどねぇ。


ちなみに、弟氏はビジネスで会社のトップを張るだけあってちょっと穢れが漂ってはいるが、極端にでは無かったし呪いもない。


家も・・・玄関から感じられる範囲では特に穢れている訳では無いっぽい。

やっぱ宮田さんへの贈り物は意図的なものなのかな?


「どちらにせよ、芽衣さんご自慢のインテリアの品々を見せて貰いたいの。

どこで買ったのかとかも興味があるそうだし」

宮田さんが弟さんに応じる。


どこで買ったか聞くなら奥さんが同席する必要があるんじゃ無い??


「妻は外せない恒例のお茶会に出ているので少し遅れますが、先に家の中を見ていて下さい」

ちょっと諦めた様にため息を吐きながら弟氏が言った。


どうやら姉の方が立場が強いっぽい?

だから義妹から嫌がらせか命を狙ったのかなヤバい装飾品を贈られてるのかね?

兄と妹ならごく稀に兄が妹に激甘で弱いケースもあるらしいが、姉と弟の場合って基本的に姉の方が強い事が多いと聞く。この関係ってどうやら壮年って言ってもいい年になってもそうなんだね。


家族間の力関係ってそれこそボケてくるぐらい劇的に能力が劣化しないと変わらないのかな?

まあ、社会人になっても他の家族に対して弱い立場に甘んじるのが嫌だったら、徐々に疎遠になって会わなくなるんだろうけど。


その点、翔君なんて白龍さまの愛し子である碧から疎遠になる選択肢は無いだろうから、ずっと弱いままかもね〜。

神社の後継ぎになる弟君と言う事でそれなりに碧も翔君を尊重しようとしているっぽいけど、やっぱ姉としての上からな目線が時折見えていて笑える。


まあ、まだお互い学生だしね。

翔君が結婚して父親になる頃にはきっと碧からも一人前として見て貰えるさ。

多分。


それはさておき。

宮田さんが弟さんと話しながら家の中を案内してくれたが・・・やはり普通に家の中に置いてある物には宮田さんが受け取っていた骨董品系の多くにあったようなヤバさは無かった。

と言うか、骨董品そのものが殆ど見当たらなかったし。


「奥様は骨董品が好きなのでは無かったのですか?

宮田さんが贈られていた物はほぼ全てが骨董品でしたが」

だからこそ穢れが意図的だと言い切れなかったのだ。


新品を穢れまみれにするにはそれなりに特殊な手段を取る必要があるから、『うっかり偶然』多数の穢れた危険な品々を買い集めたなんて事は意図しなければ絶対に出来ない。


が、骨董品だったら付喪神モドキな品々を旧家の蔵から買い取った古物商が、ちゃんと危険性を確認せずにヤバい家から買い集めたと言う可能性はゼロでは無い。

良心的な古物商だったらちゃんとそこら辺は退魔協会にでも査定してもらってヤバいのは浄化してから売り出すか、危険性をしっかり開示した上で正しい取り扱い方法を教えてから売る筈なのだが。


それこそ、意図的にヤバいのを買い集めている古物商にでも行かない限り、多数の健康被害が出そうなぐらいヤバい品を入手するのは却って難しい筈なんだけどねぇ。

ただまあ・・・偶然を言い張られたら怪しいと思っていても害意を証明するのは難しい。


芽衣つまは新しい物好きなんだがそれを馬鹿にされた経験があるらしくてね。だから人への贈り物は基本的に骨董品にする事が多いようだな。

贈り物に良いと贔屓にしている古物商から買った骨董品が幾つかは蔵の方にあるから、見てみるかね?」

弟氏が説明してくれた。


ふうん?

もしかして、宮田さんや弟氏が付き合うのは旧家の人が多く、弟氏の奥さんは成金とか普通の一般サラリーマン家庭の出身だったりするのかな?

新しいのだって十分良いのはあるし、弟氏の家の中はそれなりにセンスがいい感じだったけど。

インテリアデザインの雑誌にでも出てきそうなお洒落度だから、インテリアデザイナーでも使ったのかもだけど。


と言うか、日本の古い品なんて戦争の時に実用されていた物は破壊されたのが多いだろうし、日常が繋がっていない海外の骨董品を使っても見栄以外にあまり意味がないだろうに。

そう考えると新しい物のどこが悪いんだって感じだが。


やっぱ成金扱いで馬鹿にされたのかね?

とは言え、それでヤバげな骨董品を集めて人に贈るのはどうかと思うぞ。

宮田さんがそう言う事を言うタイプでも無いと思うし。


まあ、取り敢えず贈り物用の品々を見せてもらおう。

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